表面反射光と物体色との関係
無色透明なガラスやセロハンを、何枚も重ねていくとだんだん暗くなっていく。これは、さきに述べたような光の呼吸作用ではなく、表面反射による光損失が主な原因である。通常のガラスの場合は、1面についてだいたい4%くらいの表面反射による光損失が生じる。1枚は表裏2面であるから、ガラスがたとえ完全に無色透明なものでも、その界面反射によってその透過率は約92%くらいになるわけである。そのため、何枚ものレンズが組み合わされることになるレンズの場合は、なるべく界面を少なくするとともに、レンズ表面に薄膜を施して光を増透させるためのコーティングがおこなわれるわけだが、一般の物体色にとってはこの表面反射の問題がみかけの色にきわめて重要な関係がある。たとえば、同じ物体の色でも太陽の直射光で見ると非常にあざやかな色に見えるが、曇り日で見るとそれほどあざやかには見えない。これはカラー撮影でも同様であって、晴れた日のほうが曇り日より発色があざやかでかつシャープに写る。それは、晴れた日のほうが照明コントラストが大きいために色の対比が鮮明になるということと同時に、表面反射光による彩度低下が少ないからである。

これを図解すると、晴れた日の照明条件はちょうど図2-6のAのようになる。光は被写体に対して斜めから照射され、これを正面から写す場合は、表面反射光の影響がもっとも少ないからである。しかし、図Bのように光源の位置がカメラ位置に近くなると、表面反射光がじかにレンズに入る。カメラにストロボを装着したまま、正面から壁面やウインドーを写した場合によくある失敗であり、ショーウィンドーのような場合はストロボがじかに写ってしまう。

曇り日に写すと軟らかく写るのは、図2-6のCのように天空全体が面光源となって光はあらゆる方向から照射され、照明コントラストが低くなるからだが、被写体面ではあらゆる方向に表面反射が生じる。そのため、被写体全体に白色光がかぶったような状態になり、そのため純な赤が白色光で薄められてピンクに写るといったように、彩度が低下することになるからである。

このように、表面反射光は物体のみかけの色や明るさにとって、きわめて重要な関係があるわけだが、通常の物体の場合、この表面反射光は偏光フィルターで除去できることを知っておきたい。というのは、図2-7のように、一般的な物体に光が入射すると、入射角がだいたい35度以内の表面反射光は水平方向の偏光となり、偏光した光はまえに述べたように偏光フィルターでカットできるからである。カラー写真の場合は、偏光フィルターを使うと表面反射光が除去されるので、物体の色が鮮明に写る。
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