メタメル色(同一に見える色でも光源が変わると違って見える色)
二つに切った色紙を並べてみる。もともと、同じ色紙であるから、どんな光源で眺めてみてもその二つの色は同じ色に見える。

ところが、ある光源のもとでは同じ色に見えながら、光源(スペクトル分布)が変わると色が違って見えることがよくある。

たとえば、上衣の色にあわせて、同じ色のズボンを別にそろえたとしよう。両方の色はそろえたときの照明光ではまったく同じ色に見えても、上衣とズボンのスペクトル分布が違っていると、他の光源で見ると色が違って見えることになる。

いいかえれば、色のスペクトル分布が違っていても同色に見える色があるということだ。図2-5のAとBの色は、見ればわかるように、大幅にスペクトル分布が異なっている。つまり、Aは短波長側から長波長側まで波長的に平均した反射率をもつ中性のグレーであるが、一方Bの反射率は、紫では低く、青紫系で高く、緑系で低く、赤色系ではまた高いという、あきらかに波長的な大きな吸収作用がある。ところが、両色を自然光(昼光)で見ると、両方が同様なグレーに見えるのである。何故かというと、昼光では凸起のある青と赤が、補色同士の光として打ち消し合うので中性グレーに見えるのである。

しかし、両色を今度は電灯光で見ると、B色はAより赤っぽく見え、同じグレーには見えない。その理由は、さきに示した赤紫色が電灯光では赤っぽく見えるのと同じで、電灯光には赤色光に比べて青色系の光はあまり含まれていないからである。そして、昼光よりも色温度の高い青紫色の強い光で見ると、B色の方は今度は青っぽく見えるということになる。このB色のような場合は、光源の色温度によって違った色に見えるわけだが、その原理を応用して、AとBのグレーカードを並べて、B色の色味により色温度を判定できるようにしたカードがデーライトテスターという名称でかつて市販されていたことがある。

それはともかく、分光反射率や透過率が違っていても光源の種類によっては同じ色に見え、光源が変わると色が違って見えることがあることも知っておきたい。 したがって、無彩色は”波長的な吸収作用が均一色である”とばかりはいえないわけであり、照明の条件によっては波長的な吸収作用がある色でも、無彩色に見える色もあるということである。
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