無彩色と有彩色
物体の色は、無彩色有彩色に大別される。写真ではモノクロが無彩色、カラーが有彩色として区別が明確である。また、絵の具やポスターカラー、塗料などでもわりあいはっきりしている。このような無彩色と有彩色の相違は、原理的にいえば波長的な吸収作用があるかないかということである。

物体色の色の特性を見いだすには、物体に与えられた光を波長的にどのような形で反射または透過するかを測定して、光源色の場合と同様なグラフにしてみればよくわかる。写真用フィルターなどのその正確な特性は、すべて分光透過率曲線で表示されてる。また反射色の場合は、縦軸に反射率をとり、分光反射率曲線として表示される。 さて無彩色が波長的な吸収作用のない色とすると、そのグラフはいうまでもなく曲線にはならない。

図2-2は、いずれも無彩色のグラフである。図中Aは、写真用印画紙の裏面のような白い紙である。約90%の光を波長的に平均して反射させ、約10%の各波長光を平均的に吸収している。

次のBはやや暗い灰色の色紙であるが、これは反射光式の電気露出計と併用して使うグレーカード(標準反射版)と同様な明るさのグレードを示したもので、約82%を吸収、約18%を平均的に反射させている。

しかし、現実には以上のA、Bのように横軸に対して完全に平行で、波長別の吸収がまったくない無彩色というのはまれというより、ほとんどないに等しい。通常は、かなりの凹凸があるものなのである。

図のCは、色には関係なく入射光量だけを変えるND(ニュートラルデンシティ)フィルターの分光透過率曲線の一例だが、このフィルターの場合は短波長光側が若干強く吸収されるため、ちょっと黄色っぽいのである。まして、一般の物体色における中性グレーというのはむずかしい。黒白印画も製品によりまた処理により、モノクロといっても色調は微妙に違ってくることでもわかるように、中性グレーというのはきわめてまれなのである。

図中Dは、色補正に使うCCフィルターを20Y+20M+30Cの組み合わせで中性グレーをつくった無彩色だが、眼ではほとんど中性グレーに見えても、その透過率曲線はこのようにかなりの起状がある。カラーフィルムで発色するグレーも3色素の合成によるため、このように同様な起状があるものなのである。 したがって、無彩色といっても完全な無彩色はめったにないわけだが、それはともかく、無彩色以外の色はすべて有彩色である。その意味では眼に見える物体色の99%は有彩色ということになるが、それらの有彩色はすべて、波長別に何らかの異なった吸収作用がおこることによって生じる。

たとえば、赤い色紙は与えられた白い光のなかから赤く見える光の成分だけを反射させ、他の波長成分をその色紙が吸収しているということである。また、写真用の赤(R)フィルターはフィルターに入射した光のなかからスペクトルの約600nm以下の光を吸収し、約600nm以上の赤色光だけを透す結果赤く見える。

図2-3は種々の物体色がどのようなかたちで波長的な吸収作用をおこない、どのようなかたちで反射または透過をおこなうかをあらわした概略図である。

A、B、Cは反射色、D、E、Fは透過色であるが、両者は光を反射させるか透過させるかの相違があるだけで、光の吸収作用そのものは変わりはない。いずれも、スミに塗りつぶされた部分が各物体によって吸収された部分であり、カラーで示された各部分の色光が反射または透過されて眼にはいってくるスペクトル成分である。人間の眼は、ラジオのようにこれらの波長を選択することはできず、これらの各色光の混合結果としての色が感じられるわけである。

赤いトマトは長波長側をより強く反射し、緑色ピーマンは波長的に中間の緑色光をより強く反射させる。また透過色では、黒白写真に使用される黄色フィルターは約500nm以下の青紫色光をほぼ完全に吸収し、スペクトルの主要成分である緑色光と赤色光(約500nm以上)を90数%平均して透過させ、透過したスペクトル成分の混合成果として黄色く見える。

Eの青紫色のフィルターは3色分解用のフィルターで、短波長側の光の1/3の範囲を透し、他の部分(2/3)をカットしている。

以上にあげた例は、いずれも色相が明確で、かつフィルターの場合はとりわけあざやかな色であるから、その曲線の起状も大きくわかりやすいが、肌色とかビールの色といった色相、彩度ともに微妙な色は、スペクトル分布も大変微妙である。

われわれの周りは、無数の色によって占められている。一説によると、人間の眼が弁別できる色の総数は、なんと750万種もあるとされるが、ということはこのような波長的な呼吸作用のしかたが、750万種あるということになるわけである。
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