色温度(ケルビン)とミレッド
各種の光源がどのような色味をもっているかは、グラフを見ればだいたいわかるとはいえ、実用的ではない。もちろん、赤っぽいとか青っぽいとかといった言葉ではあいまいすぎる。そこに何らかの光の色味を数値的に取り扱える尺度が欲しい。

色温度(ケルビン温度、記号K)は、その数値的な尺度の一つであるが、これは光源に含まれる青紫光と赤色光の相対的な強さを表したもので、おおざっぱにいえば、色温度数値の高いほど青っぽく、低い光ほど黄赤っぽい光であることを表す。

この色温度は普通の摂氏目盛りをマイナスの方向に273度Cずらした温度目盛り(273度C=0度K)であるが、このように光の色味をあらわすのに、なぜ温度目盛りが用いられているかというと、高温に熱せられて光を出す光源は、その発光体の温度とそこからでてくる光の色(スペクトル分布)とは一定の関係があるからである。これは、溶鉱炉のなかの鉄の温度を色味で見分けるという理屈と同じであるが、しかし、発光体の種類によって発光する色が違ってくるので、物理学上でいう完全黒体の放射がその基準に用いられている。

現実にある光源の中では、タングステンランプがこれに最も近い光である。したがって、ランプの場合は発光体であるフィラメントの温度でその光の色をあらわしたのが、色温度ということである。しかし蛍光灯のような冷光源や、散乱とか反射といったさまざまに変化した自然光などは光源の温度では示せないから、それらの光の色が黒体放射のどれかその色度が一致したときに、その黒体の温度をとってあらわされることになる。

したがって、厳密にはその光源の分光比エネルギー分布を調べて、測色計算をおこなうという方法がとられるが、写真の場合にはそれほど厳密なものではない。色温度を見いだすための色温度計(カラーメーター)は入射する光の青紫色光、赤色光との相対的な強さを調べて色温度が見いだされるようになっている。したがって、実際上は温度とは無関係であり、照明光に含まれる青紫色光と赤色光のバランスの状態を、数値的に示したものが色温度ということである。

カラーフィルムはノーマルに発色するときの撮影光源の色温度がそれぞれ指示されている。一般用の昼光用(デーライトタイプ)は約5500度K、電灯光用(タングステンタイプ)のBタイプは3200度K、Aタイプは3400度Kの光で撮影したときにノーマルな発色が得られる。そしてその指定温度よりも、撮影光源の色温度が高いほど仕上がりは青っぽくなり、低いほど黄赤っぽく発色するので、ノーマルなカラーバランスを得るには指示色温度を持つ光源を選ぶこと、そして、合致しないときは色温度変換用のLBフィルターをかけて調節する必要があるわけである。

また、色温度の代わりにミレッド(MIRED)という数値が使われることがある。これは色温度の逆数を百万倍した数値であるが、10ミレッド=1デカミレッドdMとして用いられる場合もある。たとえば、5500度Kのミレッドは182ミレッドで18デカミレッドになる。

色温度とは別に、なぜこのようなミレッドといった別の尺度が使われるのかというと、色温度が変わると光色が変わるがこれが一定ではない。同じ色温度差でも、色温度の低い状態では色の変化が大きく、高い状態では小さいからである。つまり、たとえば同じ100度Kの違いでも6000度Kあたりでは変化はほとんどないが、3000度Kあたりは100度Kの違いで光色が大きく変わるということである。その点ミレッドでは、たとえば10ミレッド変われば色温度の高低に関わらず一定量だけ色が変わるので、光色の差をあらわしたり、また色温度変換能力を示したりするのに便利であり、そのため、色温度を変化させるためのLBフィルターの色温度変換能力はミレッドまたはデカミレッドで表示されているのが常である。
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