色に対する感じ方(眼とフィルム)
人間の眼はスペクトル分布が等しくても、同じ明るさには感じない。色によって明るさに対する感じ方が違う。人間の眼が色に対してどのように感じるかは比視感度曲線として示される。このカーブが示すように、人間の眼は波長的には中間の約555nmあたりの光に最も強く(明るく)感じ、両端になるにしたがって感度が鈍くなる。そして、スペクトルが暗くなる、いいかえれば、夕暮れどきのような暗い状態になると、その感じ方は短波長側に移行する。そのため陽が沈むと、いままで明るく見えていた赤が暗く見え、それまで暗く見えていた紫色系の色が明るく感じられるという現象(ブルキニエの現象)が生じるとされる。

一方、フィルムや印画紙などの感光材料の色に対する感じ方は、感色性と呼ばれる。これは塗布されている感光乳剤の種類によって大きく異なるが、共通点は臭化銀、塩化銀、沃化銀といったハロゲン化銀そのものは、紫外線と約500nmまでの青紫色光しか感じないことで、その固有の範囲だけに感光するのがレギュラー性の乳剤である。一般の密着用や引き伸ばし用の印画紙はこのように約500nm以下の青紫色光(と紫外線)にだけ感光する。したがって焼く500nm以上の光(緑、黄、橙、赤)に対しては感光しない。そのため、それ以上の光(黄、橙、赤)がその感光材料を取り扱う時の安全な光(安全光)として用いられる。

オルソ性乳剤は、レギュラー性に加えて波長約600nmあたりまでの緑にまで感光するようにした乳剤で、赤には感光しない。したがって、安全光は赤(波長約600nm以上)である。

パンクロ性が一般の撮影用のフィルムの感色性であり、人間の眼の感じる範囲全体を大体カバーする。

赤外フィルムは700nm以上の赤外線に対して感光するが、ハロゲン化銀固有の感光域を持っている。したがって、赤外線だけに感光するには短波長光に感じる部分をカットする必要があり、そのため赤外撮影ではオレンジ色(O)や赤(R)といった短波長光を吸収するフィルターが必要である。
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