いつだかの雑感で古いフイルムをスキャンしたら退色していたとお伝えしました。まぁ、色は時間の経過と共に変化するものですから、ごく自然なことで。しかしその変化が極端であったことには驚きました。それなりの保存状態であっただけに実態を把握したいと考えました。 上右は額縁に入れた状態で30年以上部屋に飾っておいた写真です。ほとんど色が抜け、退色のサンプルとしては最高です。しかしこの画像は当時のオリジナルデータがありません。検証を進めるには拠り所となる画像が欲しいところです。オリジナルデータの定義は難しいのですが、とりあえず当時のスキャンデータをオリジナルとするのが妥当かと思います。 検証は可能な限り古く、かつ当時フィルムスキャンしたデータが残っていることが条件となります。その結果、2002年のMP撮影画像が適当という結論に達しました。既視感のある画像ですが、どうかご容赦を・・・w。 |
まずは同じ画像のプリントとネガの退色比較です。真ん中が明らかに変な色ですここれが19年保管したフイルム(ネガ)を今回改めてスキャンした画像です。全体が緑色にかぶっています。緑はセピア色の補色です。フイルムもセピア色に変色していると思われます。一番左は同じ19年間の保管ですが、同時プリント画像を今年スキャンした物です。退色は感じられません。普通に見えます。40年くらい前に技術が確立した「100年プリント」(当時のさくらカラーの商標)を懐疑的に見ていたオレですが、20年程度では問題ないことを実感できました。 (褪色補正) 真ん中の画像の退色補正したが一番右の写真です。スキャンソフトの一つの機能である退色補正をかけ、色合いと彩度を調整しました。色が見事に復元されています。暗部の青、明部の赤がなく、プリント(左画像)よりも自然に見える(色の片寄りが少ない)と思います。 |
(当時のスキャンデータ) 左画像は19年前ににフィルムスキャナでスキャンした画像です。色調整は全くしていません。サイズ変更のみです。恐らく「眠たい画像」と感じると思います。これはスキャナメーカの設計思想です。画像加工を前提としたスキャンデータを取得するのが良いという考え方です。間違ってはいないのですが、デジカメや画像のデジタル処理の黎明期には中々理解できなかったですね。余談ですが、この眠たい画像にオレはがっかりし、古いフィルムのスキャンを途中でやめてしまいました。 (加工データ) 真ん中の画像は左画像を処理したものです。この色合いがオレの好みです。人によっては赤が強いと感じるかもしれません。撮影時の印象はこれだと思います。この画像は黒つぶれや色の片寄りがないことが大きな特徴です。同時プリント画像と比べるとよく分かります。 なお、この色合いはエロサイトに多いというツッコミはなしでお願いしますw。 (当時の加工データ) 一番右は当時の画像処理です。HPに使った画像です。だいぶどぎつい処理をしています。同時プリント画像を意識しているのは間違いないと思います。今のオレはここまで派手な画像処理はしません。デジカメだけで鑑賞するようになったお陰だと思います。 |
今回、改めて当時のスキャンデータを使って当時の色を再現してみました。完璧に合わせることは出来ませんでしたが、かなり近づいたと思います。処理の概要は暗部のコントラストを強く掛け、赤を引っ込める。明部のコントラストを弱め、弱める処理をしました。未完成の「眠たい画像」はいろんな雰囲気の画像に仕上げることの出来る潜在力を持っているんです。 なお、実はこの暗部の青、明部の赤は80年代から20年続いた日本の色と言ってもいいと思います。富士フイルムが築いた色となりますが、これにより国内はコダックの攻撃をはねのけることが出来ましたと思っています。ただし、この辺は多分に個人的見解が入っていることをお断りしておきます。 |
この3枚の画像は左から20年前の同時プリント画像、今回スキャンしたフィルム画像、20年前のスキャン画像です。真ん中の画像は退色処理しました。色合いがそれぞれ微妙に異なっていますが、見た目の明るさや雰囲気はほぼ揃っているかと思います。単独で示された場合、ダメと言われる画像はないと思います。これらの画像がどのくらいまで処理に耐えられるかを比べてみました。 |
全体画像では3枚とも手に持っている桜が白飛びしています。人物に露出を合わせれば桜が露出オーバーとなるのは当然ですが、明るさ調整でこの桜が綺麗に再現できるか確認しました。それがこの3枚の画像です。3枚とも暗くし、コントラストを調整しています。一番右は当時のスキャンデータを再加工した画像ですが、花びらの陰影が再現されています。一番左は同時プリントのスキャンデータですが、花びらはほとんど同じ色でつぶれています。境界もぼやけており無理に拡大したって感じの画像です。やはり画質はフィルムからスキャンすべきですね。 と、言いたいところですが、少し事情が違っています。真ん中の画像です。今回フィルムからスキャンした画像ですが、加工の途中で画像がどんどん崩れていきました。まず、境界に変な色が入っています。スキャン時の色ズレ補正をしていないと思われます。次に色抜けです。理由は不明ですが、暗部の色が抜け、白っぽく表現されています。分かりやすいのは右に見える2つの花が重ねっているところです。重なりの隙間から腕が見えていますが、真ん中の画像だけは白く表現されています。フィルム上から本当に色が抜けたか、退色補正時に抜けたかのどちらかだと思われます。そして服の赤が黒になってしまいました。これはスキャナの性能なのかもしれません。実は今回使ったスキャナは紙・透過原稿兼用なんです。フィルムスキャンはあくまで付加機能です。あまり多くを求めてはいけないのかもしれません。 (余談) 今でもしっかりしたフィルムスキャナが欲しいのですが、プロがデジタルへ移行したこともあり、最近はまともなフィルムスキャナがありません。当時のスキャナは動くでのですが、スキャンソフトがWindows10で使えないんです・・・。xpでサポートが終了してしまいました。せっかく買ったスキャナを生かし切れなかったことに後悔しています。今となってはフィルム撮影の楽しみはスライドビューアかプリントしかないのかもしれません。 |
ところで色あせはポジフィルムでも発生するはずです。この写真は20年前のポジフィルム(当時のなべっぷさんが写っていますw)をスキャンしたものですが、明らかにネガフィルムよりもいい状態です。これはポジの方が色あせしないということを意味するのでしょうか。当時のスキャンデータもありませんので、どのような色合いだったかば今となっては調べようがありません。 ここまで報告しておいて今更かもしれませんが、補正なしネガフィルムのスキャン結果が妙な色合いとなるのはスキャナの癖のような気もしてきました。現像直後のネガフィルムをスキャンしてみようかと思っています。結果は改めて報告します。 |
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以上の説明通りフイルム、デジカメ、スキャナの色再現特性は全くバラバラであり、本当の色の再現は極めて難しいこととなります。最初から色が違うのにさらに色被せしてしまうのですから元の色に戻すことはまず不可能です。結局のところ、思い出は後から自分で色付けするものなのでしょうね・・・。思い出はモノクローム、色を付けてくれと、歌のフレーズで結びます。 |