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                    メコン圏旅行記


メコン圏旅行記募集のお知らせ

タイ、ラオス、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、中国南部・西南部の旅行記の投稿をお待ちしております。

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メコン河・船の旅

 北タイ国境の町チェンコンからラオス古都ルアンパバーンまで川下る

                                            清水英明

 

 メコン河、それはチベット高原に源を発し6カ国を流れ、ベトナム南部で南シナ海に注ぐ東南アジア000101map.jpg (186080 バイト)第一の河川である。 天地が生み出す水を運び様々な生命・生活を支えてきた川というものに、私は心を動かされるが、国際的な大河川たるメコン河となれば、そのつらぬく地域の多彩さやそこで展開されてきた歴史から、感動はより一層増してくる。

  

  今回3泊4日という短い日程で、タイ・バンコクからラオスに陸路で入国し、メコン河を船で下ってまたラオスから陸路でタイ・バンコクに戻るという旅に加わった。

  1日目は、夕方タイ・バンコクからチェンライに飛び、チェンライ空港から約1時間でメコン河沿いの国境の町・チェンセンに到着。バンコクから或いはチェンライから直接ラオスへの出国ポイントであるチェンコンに向かうこともできるが、チェンセンからチェンコン間でのルートの景色が素晴らしいと聞いていたので、夜間に移動してしまうのは惜しいと思い、チェンセンに泊まる。チェンセン周辺もその古い歴史からゆっくり味わいたい所ではあるが、今回はラオスでの船旅が目的故、翌日早朝にはチェンセンの町をあとにした。

  3カ国が国境を接するゴールデントライアングルポイントへの方向とは逆向きに、メコン河沿いを車は走る。期待に違わず、このルートの景色は楽しめる。山岳民族の村々を通過しながら緑豊かな山間を行くのであるが、途中チェンライ県チェンコン郡リムコン区には、ラオス領やメコン河の眺めるのに良い展望ポイントがあり、ここで小休止した。チェンセンからは1時間ちょっとで、ラオスへのゲートウェイであるチェンコンの町に到着。

  

 mekongboat01.JPG (30551 バイト)チェンコンでもラオスビザを取得できるが、チェンコンの町でのんびりするのでなければ、事前にバンコクその他でラオスへの入国ビザを取得しておいた方が良い。対岸のラオス領フェイサイにはボートに約1分間ほど乗っているだけで到着してしまい、実にあっけない越境だ。ラオス内では、タイ・バーツでも困らないが、イミグレーション隣のランサーン銀行フェイサイ支店の両替所でラオス通貨・キープに換える。フェイサイの町は大きくないが、タイ政府観光庁(TAT)のマークやコンビニストアを見かけない以外は、河をはさんだ両国の街の大きな違いは、まだ見て取れない。

 

(写真:チェンコンの船の発着場。対岸がフェイサイ)

 

  フェイサイからラオスの古都ルアンパバーンに向かうには、ボートが主要な交通手段で、これまではスピードボートとスローボートの二種類の方法があったが、今回はまずタイの旅行社・メコンランドがサービスを開始したばかりのクルーズ船「ルアンサイ」に乗り込んだ(1998年12月当時)。乗り場はフェイサイの町の北側にあるスローボートの乗り場と同じところであった。

  中継地のパクベンに向け、緩やかにクルーズ船は河を下っていく。河を船で上り下りすると、当然対岸へ渡るだけとは違い、対岸の景色も味わえながら上流と下流地域との間の流れ・変化・違いを楽しむことができる。川幅も変化しまた流れも蛇行する。両側には高く険しい山々が連なり迫っている。河中にもあちらこちらで奇岩が突き出ている。この船旅は快適だ。ゆったりとした席スペースが確保され(30席)飲食しながら景観を眺めることができる。同乗の人と談笑するもよし、本を読むのもよし、心地よい風を受けてうつらうつらと居眠りをするのもまた楽しで、のんびりとテンポが異なる時間を過ごせる。海の船旅も雄大で良いが、河の船旅の方が、行き交う船だけでなく、川辺に人々の生活を見ることができ、身近で親しみを覚える。

 

mekongboat02.JPG (39412 バイト)  (写真:パクベンにクルーズ船が到着)

 

約6時間ほどかかって夕方、パクベンに到着。2日目はここで船を下り、宿をとる。スピードボードの場合は、フェイサイからパクベン、パクベンからルアンパバーンまで各時間ほどで走りきり、朝フェイサイを出発すれば、当日中にルアンパバーンまでにたどりつくことは可能である。一方スローボートの場合(新しいクルーズ船もスピードはあまり変わらない)、それぞれ6時間ほど要し、暗くなってからの運航は照明も無く危険なメコン河の船旅では、中継地のパクベンという小さな村に泊まらざるを得ない。パクベンにはゲストハウスはあったが、今回は、メコンランド社が、クルーズ船の運航とあわせ建設した「ルアンサイ・ロッジ」に宿泊した。場所はパクベンの村から徒歩で10分ほど上流の地点の河沿いだ。宿泊施設そのものは、温水のシャワー、清潔な水洗トイレ、お洒落な蚊帳付の清潔なベットがあり、レストランも用意され至って快適だ。その上、隣に数軒の集落があるだけであたりは全く自然のまま手付かずとなっている(もちろん電気も通っておらず発電機対応だ)。特に深夜・早朝は底冷えがするが、深い山々と谷間を流れるメコン河と共に夜を過ごし朝を迎えるというのは、何か水の神ナーガにでも守られているような神々しい世界に触れたような気分になる。mekongboat03.JPG (37549 バイト)      

  (写真:パクベンに停泊中の大型船には、昆明向けの材木が積まれていた)

 

 

  翌3日目は、いよいよルアンパバーンだ。クルーズ船「ルアンサイ」もルアンパバーンに向かうのであるが、私はパクベーンの村まで下り、5人乗りのスピードボードに乗ることにした。スローボートも選べたのであるが、うら若きラオスの娘さんが乗り込むのに、つい釣られて私も乗ってしまったのだ。(パクベンのボート乗り場には、雲南省が仕向け地になっているラオスで伐採された材木を積んだ大型船が停泊していた。) しかしながらこのスピードボートは全くお奨めできないものであった。まず猛スピードで飛ばすため。水飛沫がひどくその上風が強くて着用義務の風よけつきヘルメットをしていても顔が痛く、非常に寒い。ただひたすらスピードを上げて走るだけで、周りの景色を楽しめたものではない。同乗者との会話もエンジン音がうるさくてできるはずもなく、ましてボートで食事や読書などもってのほかだ。それでいて隣のラオス娘が寄りかかってくるほどにボートがゆれるわけでもなく、ただひたすら飛ばすボートの中で体を丸め込みながら座っていただけだった。

  

  ただ途中3回ボートは止まり、1度目は川岸で小船をつけて立っているおじさんを見つけての小休止だ。このmekongboat04.JPG (54048 バイト)おじさんは河で捕まえた魚をその場で売っているのであった。(ちなみに写真の魚は同乗のタイ人観光客が120バーツで買った。)2度目は小用のために砂洲によった。本で読んでいたとおり、砂金がいっぱいあったのには驚いた。最後は多数の仏像が安置されているタム・ティン洞窟に寄った。

 

  

こうしてルアンパバーンに到着し、その日はそこで一泊し、翌日午後にルアンパバーンをラオス航空でヴィエンチャンに向かい、メコン河にかかるタイ=ラオス友好橋を渡って、タイ・ウドンタニからバンコクに戻った。ルアンパバーンやヴィエンチャンの魅力についてはここでは触れないが、ただ街そのものがユネスコより世界文化遺産に指定されたほど魅力あふれるルアンパバーンでは是非宿泊した上で、早朝の街を歩いていただきたい。シェントーン寺からの僧侶の托鉢風景や、多数の寺院など緑あふれる長い歴史を誇るこの街にはえも言えぬ趣がある。しっとりとした雰囲気のある街であるが、山岳民族の人も多数寄る朝市は、打って変わって活気があり、これもまた楽しい。オシャレなカフェでのフレンチ式朝食も悪くないが、朝市周辺での屋台の味は格別だ。特に温かい麺は肌寒い早朝には最高だ。

 

  帰りは多少あわただしかったが、メコン河やラオスに触れ、のんびりと穏やかな時間を過ごすことができ、気分が落ち着き、静かな元気が回復してくる。都会に戻っても、家でラオスの音楽テープを聞き、ビアラオを飲んでいると、妙に切ない気分になり、ラオスやメコン河の流れが恋しくなってくる。きっと近いうちにまたラオスを訪れていることであろう。また、いろんな地点でメコン河を眺めてきたが、他のルートでもメコン河の船旅を続け、いろんな表情のメコン河を見つづけていきたい。