中国の少数民族・トン族の鼓楼と風雨橋(1)  中国広西壮族自治区三江トン族自治県

   三江の町からから独 ・高定の村まで   

(写真をクリックすると、はっきりした画像が現れます)

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 八協の風雨橋

 


今回は、三江から独峝までの河沿いに開けた集落の風雨橋と、山中の谷間の村・高定のスリムな鼓楼を紹介する。

1日目

独峝までは、三江からバスが1日2便出ているが、高定の村へは、そこから更に歩くしかない。初日は、独峝の数キロ手前の巴団に向かう。7時30分発の独峝行きは、林渓などに向かう他ルートとは違い、公営バスしかない。

三江の町を出るとすぐ、川沿いに開けたトン族の集落が、次々と姿を現す。伝統的な木材をふんだんに使った立派な民家の群だ。三江の近くは、川幅が広く、風雨橋は架けられていないが、代わりに渡し舟が活躍中だ。小雨の中、緑の山々としっとり濡れた民家、水田、川に浮かぶ小舟と、まさに水墨画の世界だ。しばらく川沿いの道を進んだバスは、山道に入っていく。山の斜面には、段々畑ならぬ水田が広がっている。雨の多い水量豊かなこの地方でこそできる農業のようだ。この山越えは、オンボロバスにはかなりきつく、急な山道をノロノロと登り、峠の手眼でエンジン冷却のための水を補給して、やっとの思いで下っていく。この山を下ったところに八協の村があり、入り口に風雨橋が架かっている。 

 山道を下ってきてカーブを曲がったところで、いきなり視野に飛び込んでくる。この橋の架かっている川の幅は20メートル程で、バスの終点の独峝方面から流れてきている。川の両岸には水田が開かれ、更に両側は山裾が迫っている。道路は川沿いに作られていて、バスに乗っているだけで、次々と集落や風雨橋が眼前に広がってくる。素晴らしい景色だ。丁度田植えが終わったばかりで、山も緑、田んぼも緑、雨も上がって気持ちが良い。これで青空が見えてくれば申し分ないのだが。

10時少し前、巴団の村で降りる。この村にも風雨橋が架かっている。川の水は澄んでいて、ちょうど橋の下で村人が釣りをしている。そのすぐ脇では洗濯と、のどかな光景だ。トンボが乱舞していて、こども達がまるでハエをたたくように、乱暴にトンボを捕っている。ここの風雨橋は変わっていて、2段になっており、上段には人、下段は家畜用に分かれている。概観は3つの櫓を乗せた美しい風雨橋だ。

 トン族独特の風雨橋は、雨の多いこの地方で、橋を長持ちさせるために作られたとも言われるが、木造の橋の上に屋根をつけ、日本のお城の櫓のような建造物をその上に載せた姿は美しい。この櫓の形には色々と変化があり、数もあるため楽しめる。田舎風景を味わいながら、バスで通ってきた道を巴団から三江の方に逆戻りして通り過ぎた村々を歩いてみることにする。道を歩いてすれ違うのは、農作業に向かう村人たちと牛やアヒルなどの動物たちだ。

 1時間ばかりのどかな風景の中を歩くと、前方に華練の村が見えてくる。ここには、日本の塔を思わせる7重の鼓楼がそびえている。だがこの地方の鼓楼は、吹き抜けになっていて壁がない。もっぱら老人たちの憩いの場になっている。天気は連日、雨か曇りで白っぽい空で、写真を撮る時出来るだけ空を入れないアングルを探すがなかなかいい場所がない。しかたなくドロドロの斜面を登りながら撮る事にしたが、これもこれで視点が変わってなかなか面白かった。

 次は平地の村をめざし歩き始める。この村の風雨橋は村はずれにあり、わりと新しい。すっきりまとまった風雨橋だ。邪魔な電柱を入れないように写真を撮る。さらに歩いて八協の村へ向かう。ここは今日最初にバスの中から見た風雨橋のある村だ。

 午後1時、巴団から歩き始めて3時間が過ぎている。そろそろ三江行きバスがこの村を通過することと思い待っていたが、なかなかこない。雑貨屋で聞いてみると、今日はもうバスは来ないとのこと。しかたなく雑貨屋で米から作ったうどん風のものを食べる。どうしようかと思っていると、そこのオヤジが「俺のところに泊まれ」と言ってくる。店を閉めるまで筆談も交えて無駄話しにつきあっていたが、夕方5時過ぎ、トラクターに荷台をつけた車が、バタバタと音をたててやってきた。三江の町ではないが、山を越えて八江まで行くという。トン族の暮らしを垣間見ることに未練はあったが、この車に乗ることにし、なんとか三江の町にたどりついたのは夜8時過ぎだった。

2日目

 翌日、同じ7時30分のバスで、三江の町から独峝の村に向かい、10時過ぎに到着する。今日も曇り時々雨で、晴れそうにない。この村にも一応、風雨橋と鼓楼があるが、さして魅力的ではない。しかし現在建築中の11階の鼓楼があり、完成すれば見事かもしれない。村人の寄付金の額がズラリと名前入りで張り出されている。ほとんどの人は数十元の奉納だ。村人に道を聞きながら高定の村に向かう。途中道路工事をしている人たちに聞くと、眼の前の山を越えろという人と、川沿いに歩けという人がいた。楽そうに見えた川沿いの方を選ぼうかとも思ったが、もやで隠れた山頂まで水田や道が続いていそうだったので、山越えに決めた。しばらく歩いていると、突然大音響と共にバラバラと石の落ちる音が聞こえてくる。ダイナマイトを使ったようだ。それにしても無茶なことをする。サイレンを鳴らすか、大声を出すかしてほしい。帰りに工事現場近くを通ってみると、川の対岸に建つ学校の校舎の壁に、爆風で飛んだ小石のあたった跡がいっぱいついていた。山道をひたすら登り、人に会う度に高定への道を尋ね、独峝を出てから2時間半かかって、やっとそれらしい村にたどり着く。村の近くになってようやく車が通れるまだ作って日の浅い道に出る。

高定の村は、山の中腹から裾にかけて民家が建ち並んでいる。ほとんど平地が無く、平らな底が無いすり鉢状だ。川らしいものもなく、風雨橋もない。しかしスリムな13重の鼓楼も含め、6本の鼓楼が建っている。13重の鼓楼の下に行ってみる。中央に1本の巨木を据え、そこから枝を張り出すようにえを四方に出し、屋根を支えている。内部は空洞で壁は全く無い。ここも老人たちの暇つぶしの場となっている。周囲を屏風のように囲む緑の山々、木造民家の集落、そして鼓楼と、時の止まったような世界だ。それをあえてぶち壊すかのように、鼓楼の傍らにスピーカーを引っ張り出し、ロックをガンガンかけている数人の若者たちがいる。ここで生活する若者の気持ちもわからぬでもないが、そこまでしなくてもと思う。

帰り道は分かっていたので、1時間半で独峝にたどり着く。当然三江に戻るバスはもうなく、まだ建てられたばかりの飯屋の2階の宿に泊まる。夜、窓から外を見ていると蛍がふわりふわりと飛び交い幻想的な雰囲気をかもし出していた。他に泊り客はなく、静かな夜だった。

3日目

翌朝、7時のバスで、独峝から三江の町まで戻る。

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 巴団の風雨橋

 

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 華練の鼓楼

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 華練の風雨橋

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 平地の風雨橋

 

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  高定の鼓楼

 

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 高定の鼓楼