能勢ダイオキシン裁判報告 2001．10．11

弁護団・中島宏治

１）裁判の概要

1. 提訴日　1999年（平成11年）12月24日

2. 当事者　原告　豊能郡美化センター（一般廃棄物焼却施設）の現・元従業員６名
　　　　　被告　　国（厚生省と労働省…現厚生労働省・環境省）
　　　　　　　　　大阪府
　　　　　　　　　豊能郡環境施設組合
　　　　　　　　　　1986（昭和61）年に大阪府豊能郡の豊能町と能勢町の２町が一般
　　　　　　　　　　廃棄物の処理施設である美化センターを設置運営することを目的に結
　　　　　　　　　　成した一部事務組合（地方自治法第284条以下）で、1988（昭63）
　　　　　　　　　　年4月から1997（平成9）年6月まで美化センターにおいてごみの焼
　　　　　　　　　　却処理を行っていた事業主体です。
　　　　　　　　　三井造船株式会社
　　　　　　　　　　本件美化センターに炉頂型の焼却炉２機を納入し、その後も被告三
　　　　　　　　　　造環境とともに、その運転管理に関する技術指導を行っていた焼却
　　　　　　　　　　炉製造メーカーです。
　　　　　　　　 　三造環境エンジニアリング株式会社
　　　　　　　　　　三井造船の子会社で、本件美化センターの運転管理業務を委託
　　　　　　　　　　されていました。
　　　　　　　　　丸川工業株式会社
　　　　　　　　　　被告施設組合から一般廃棄物処理業務を請負った被告三井造船
　　　　　　　　　　（1988（昭和63）年 3月～1990（平成2）年3月）・被告三造
　　　　　　　　　　環境（1990（平成2）年4月以降）の下請会社として、原告らを
　　　　　　　　　　雇用していました。

２) 裁判で原告が訴えようとしたこと

1.　高濃度のダイオキシンに暴露し、がんやクロルアクネを発症したり、今後、さ
まざまな疾病を発症する高いリスクを負わされてしまった焼却場労働者の健康被害の
救済。

2.　ゴミ焼却から発生する大量のダイオキシンの危険性について十分これを知りま
たは知りえながら、諸外国に比較して大きく規制に遅れをとったゴミ焼却大国かつダ
イオキシン排出大国日本の国および地方自治体の行政の責任を問うこと。

3.　大量のダイオキシンを発生し、拡散させた焼却炉を設置、運営した三井造船等
に対して、徹底した排出責任者としての責任を問うこと。

３) 裁判での争点

1.　被告らに焼却施設労働者への健康影響について予見可能性があったか。

　　　被告らの責任の前提として、被告らが焼却施設労働者に対し、ダイオキシン類
による健康影響があると認識しまたは予見可能であったことが必要です。

2.　被告国・大阪府が焼却施設労働者の健康影響防止のために適切な規制権限を行
使しなかったといえるか。

　　　被告国・大阪府の違法を認めるためには、被告国・大阪府に一定の規制権限に
基づく権限行使義務があったのにこれを行使しなかったということが必要です。

3.　原告らの発症（がん・クロルアクネ）と原告らの業務に因果関係があるか。

　　　発症が認められる原告については、発症と業務との因果関係が問題となります。

4.　原告らが高濃度のダイオキシン類を体内に蓄積したことそのものが「損害」と
いえるか。

　　　発症が認められない原告については、「損害」の内容が問題となります。

４）裁判の進行

1. 裁判期日

 2000年3月9日  2000年5月15日　 2000年7月31日　　竹岡さん本人尋問
 2000年10月2日　 2000年12月11日  2001年2月26日　 2001年5月14日
⑧ 2001年6月14日（弁論準備）  2001年7月11日（弁論準備） 2001年8月27日　 2001年9月27日（弁論準備）

2. 裁判の現状

能勢ダイオキシン裁判は、双方の主張のやりとりが一段落し、今後の進行を
能勢ダイオキシン裁判は、双方の主張のやりとりが一段落し、今後の進行を協議する
段階に入りました。

来年１～２月を目処に、証人候補予定者の「陳述書」なり「意見書」を提出
来年１～２月を目処に、証人候補予定者の「陳述書」なり「意見書」を提出してもら
い、それを見て早めに人証として採用するかどうか（つまり、証人尋問するかどうか）
を決定していく予定です。

3. 今後の方針

国の書面が来年２月頃までに出そろう予定です。その時期までに証人候補者
国の書面が来年２月頃までに出そろう予定です。その時期までに証人候補者を絞って、
証人尋問の予定を決めていきます。原告側では、ダイオキシンのリスクに関して摂南
大学・宮田秀明教授、ダイオキシンの発ガン性とクロルアクネの因果関係についてア
メリカのアーノルド・シェクター教授、焼却炉のダイオキシン対策について元横浜国
立大学教授・加藤龍夫氏の３名を予定しています。

4. 今後の裁判日程

 10／29（月）午後4時～弁論準備手続（508号室）
 11／26（月）午後1時15分～4時15分原告畑中さん本人尋問（202号室）
 12／21（金）午後1時15分～弁論準備手続（508号室）
 2002年1／23（水）午後1時15分～弁論準備手続（508号室）