2007.02.01
定年の友のために
TH君、定年おめでとう、というのも変だが何はともあれ長い間のお勤め、お疲れさまでした。不祥事に巻き込まれることもなく、大失態を演じて飛ばされもせず、順調に階段を登って来ただけでも偉いよ。そして忙しい時間を割いて度々ライブに来てくれてありがとう。
次のラウンドまでのしばしをゆったり過ごしてくれたまえ。
ライブでは君の知っているような曲を演奏する機会が少なかったなぁ。いつも戦闘的なインプロばかり聞かせて済まなかった。
そのお詫び兼定年祝いとして、次のアルバムは君が好みそうな曲を選んでソロで弾いてみようと思う。題して『Rocking Chair』というのはいかが?
曲目はざっとこんな具合だ。中学のころ流行ったパット・ブーンのやつもあるぜ。
〈りんごの木の下で〉〈April Love〉〈Only You〉〈It's A Sin To Tell A Lie〉〈Gleen Sleeves〉〈Misty〉〈Good Life〉……
どうだい? そりゃもちろんオレが弾くのだからある程度のひねりは加えるつもりだが、そのあたりは割り引いて、揺り椅子でブランデー片手に(焼酎でも構わんが)聴いてくれ。
録音は二月中旬だ。お楽しみに。

2007.03.27
Rocking Chair
レコーディングが一曲終わると、(A)「今の要らない、もう一回」(B)「今のキープして、もう一回」(C)「聴いてみようか」という三段階を考えます。(A) はダメ、(B) はまあまあ、もう少し良くなりそう、(C) は一応良いと思うが確認、あるいはオーケー、ですね。
「聴いてみよう」、つまりプレイバックしたうえでダメ、というのもしばしばあります。
つまり、演奏中は良いと思っても聴き返したら気に入らなかったりするのです。
そのあたりの判断基準は、むろんアルバムの方向性によって違いますが、「勢いがあるか」「流れが良いか」「誰々らしさが出ているか」などです。 
ところが、前回書いた、定年の友のための『Rocking Chair』の録音でのOK-NG判断はかつてなかったものでした。
それは、「鞄を持って出勤しそうになるかどうか」。
これじゃ出勤しなくてもネクタイくらいは締めそうだな、靴は履くだろう、玄関開けるぞ、などの意見が飛び交いました。
ゆったりすべき人が元気になってしまいそうなテンポ、タッチ、パッセージを排除するというコンセプトだからです。
急カーブがあれば攻める。直線があればアクセルを踏む。こういう習性の私にとって、盛り上げず、間を残し、余韻を生かす、で全編通すのは予想以上に忍耐を要することでした。
禅寺の座禅会のような……良い修行になりました。

2007.08.30
富樫雅彦を送る会
「オレが死んでも悲しむことないぜ。こういう毎日から解放されて良かったね、メデタイメデタイってドンチャン騒ぎして祝ってくれ。葬式なんかするなよ」
貧血が進行して車椅子に一分と座っていられなくなり、演奏活動を断念してからちょうど5年間。病床から頭をめぐらして見える空間だけの世界に生きていた富樫雅彦さんがよく云っていた言葉です。
「この部位の脊椎損傷はせいぜい20年生きれば上出来なんだってね。もう30年以上だから、普通の人の年齢なら百歳超えてるぜ。頭ボケるの当然だよな。音符の書き方も時々わからなくなる」
富樫説に従えばギネスブックものの長寿を全うした大往生ということになります。
故人の希望を余すところなく実現すべく、我々は“大々的なドンチャン騒ぎ”を計画中であります。
それには少し時間をいただきたい。
3、4ヶ月ほどで『富樫雅彦を送る会』(仮称)のご案内ができるはずですので、楽しみにお待ち下さい。

2007.12.06

LA発ジョーク集
LA在住のT・A氏から送られてきた最近のジョーク集の一部を紹介しましょう。
出所はマルチ・リード奏者Gary Herbigだということです。Garyは私の《Belair Strings》シリーズのなかでsaxやfluteを吹いてくれています。
そのレコーディングの最中もジョーク連発でした。

「ママ、ぼく大人になったらミュージシャンになるんだ」
「そうねぇ、でも両方同時にはなれないわよ」

フォークギター・プレイヤーと大きなピザの違いは?
──ピザは一家4人が食える。

ジェット機とトランペットの違いは?
──約3デシベル。

なぜトロンボーンを吹くのか?
──
指を動かすのと楽譜を読むのを同時にできないから。

コードをふたつしか知らないギター弾きを何と言うか?
──音楽評論家。

ガールフレンドのいないギター弾きを何と言うか?
──ホームレス。

サキソフォンとチェーンソーの違いは?
──チェーンソーはチューニングすることができる。

二人のベーシストをユニゾンで弾かせるには?
──半音違いの譜面を渡す。

ギタリストを静かに弾かせるには?
──目の前に譜面を一枚置く。

溺れているベーシストに投げてやるものは?
──奴のアンプ。

ステージが水平であることがわかるのは?
──ドラマーの口の両端からヨダレが垂れているとき。

なぜドラマーは車のダッシュボードの上にドラムスティックを置いているのか?
──障害者用駐車枠に駐められるから。

2007.12.28
渡し守
今年は向こう岸へ行く人が多くて、渡し守さんも忙しかったでしょう。
私が共演したり、親しくさせていただいた方たちもずいぶん移住されました。もうこちらより向こうのほうが賑やかそうで多少うらやましい気もいたします。
3月 ギタリスト成毛茂さん、4月 ピアニスト小川俊彦さん、5月 詩人・評論家清水俊彦先生、6月 ピアニスト羽田健太郎さん、能の観世栄夫さん、7月 評論家青木啓さん、8月 富樫雅彦さん、海外では1月 Michael Breckerさん、4月 Dacota Statonさん(1964年にバックをつとめたことあり)、12月 Oscar Peterson氏(1957年来日のとき、指を大きく広げるトレーニング法を教えてくれました)……
最近知ったのですが、私がBerklee School Of Musicでライン・ライティングを教わったHerb Pomeroy先生が8月11日に渡河されていました。数々の禁則をくぐりぬけてアレンジをするのは難しかったなぁ。私はクラスでわりと成績が良かったと自負しておりますが。卒業制作で私に与えられた課題はThelonious Monkの“Work”という難解な曲をフレンチ・ホーンやバス・クラリネットが入った風変わりな編成を指定され、アレンジせよ、というものでした。ノートは今でも大切に保存してあります。
直接お会いしたことはありませんが、1月 Alice Coltraneさん、8月 Max Roach氏、9月 Joe Zawinul氏……2007年は節目の年だったのでしょうか。

2008.01.30

発電所だって!
たとえわずがでも、CO2排出量を減らすのは人間の義務だ、とオーバーに構えたわけではありませんが、家の小さな屋根に太陽光発電のパネルを数枚乗せました。最大でも100ワット電球20個足らずのものです。気は心、貧者の一燈というところ。
で、東京電力と「電力受給契約」を結びました。申込書が面白い。

「太陽光発電設備の系統連系にともなう電力受給に関する契約要項」を承認のうえ、次の発電設備と東京電力株式会社の電力供給設備とを系統連系すること、および発電設備の発電量に余力がある場合にその超過電力を東京電力株式会社に供給することを申し込みます。

というような文言があって、【発電設備】欄に《発電所名》《受給地点》《太陽電池定格出力》を記入するのです。
何より《発電所名》、これにウケましたね。○○太陽電池発電所のところに自分の名前を書くわけ。《佐藤允彦太陽電池発電所》ですぜ!
つまりワシぁ発電所長ってえことよ。おどれ〜たかべらぼ〜め!

2008.06.30

アメリカから届いたジョーク
久しぶりにジョークをひとつ。
L.A.在住T氏経由、出所はGary Herbigのようですが、原作者は不明です。
四人の博士が自国の医療について誇らしげに語っている。

  • 日本人の博士「我が国の医療の先進性を示す例をあげよう。Aから腎臓一個を摘出し、Bに移植したとする。Bは六週間で仕事をさがしに行けるようになるだろう」
  • ドイツ人の博士「そんなことは驚くにあたらない。我々なら片肺を摘出し、移植して四週間で求職活動に行かせることができる」
  • イギリス人の博士「いずれもたいしたことはありませんな。イギリスの水準をいうなら心臓の半分を摘出し、移植して二人とも二週間で職探しだ」
  • テキサスの博士「わっはっは、あなたがたは遥かに遅れておりますよ。この国では脳が空洞に生まれついた男をテキサスから摘出し、ホワイトハウスに移植したところ現在人口の半分が職探しをしている」

来年はどんなジョークがアメリカから届くことやら。その前に日本もテキサスの博士が言うようなことになっていたりして……移植先は永田町ですかい?

2009.01.02

今年もよろしく鼻輪をつかんでお引き回しのほど、お願い申し上げます。
本年のモ〜ゥットーといたしまして、

巡航モ〜ド:暗闇の黒牛、戦闘モ〜ド:bull

にて運行する予定でございます。早い話、メリハリをつけたいと思うのであります。
ぼう〜っと寝ているように見えて、瞬時にギアシフト、という心構えですな。
メリとハリの割合がどのくらいになるかは予測しかねますが、まあ7:3と8:2のどこか、といったところでしょう。
6:4近辺、黄金比あたりが理想……う〜ん、ちょっと疲れそう。
終わってみたら10:0だったりして。
それもまた良きかな。
あまり深く考えず、まずは臥の姿勢で飲、あたりからスタートするのがふさわしいようで……。

2009.10.07

アンコール曲
最近トリオのライブのアンコールでよく演奏する曲があります。
なんという曲でしょうか。次の文を読んで推測して下さい。

2009年7月、佐藤はトリオに管楽器6人と打楽器1人を加えたグループ《SAIFA》でオランダ・ロッテルダムのNorth Sea Jazz Festivalに出演した。
滞在は4日間と短かったが、全員がHertog Janというヴァイツェン・ビール(濾過していない「白ビール」)にハマって昼も夜も打ち上げも飲みまくった。
結果、帰国後グループ血中尿酸値が上昇し、上限の7.0mg/dlを越えたもの若干名、痛風発症者1名を出すに至った。幸い発症者は二ヶ月間の断酒とプリン体多量含有食品の非摂取により正常に復したが、トリオでは自戒を込めて当分の間アンコールで「xxxxxxxxx」を演奏することにした。

*正解:Some Day My プリン体 Will Come

2010.01.02

謹賀新年

2010.03.05

天国にて

LA在住のT・A氏からまた面白い話が送られてきたので、訳してみました。一部意訳・加筆してあります。

ハーレー・ダヴィッドソンの創業者、アーサー・ダヴィッドソンの寿命が尽きて天国へ行った。
天国の門に着いたアーサーに聖ペテロが言う。
「汝は善人であった。また汝の作ったオートバイは世界を変えた。よって褒美として天国の誰とでも歓談できる機会を与えよう。誰を望むや?」
アーサーは小考ののち答える。
「では神とお話ししたい」
聖ペテロ、アーサーを王座の間に導き、神に引き合わせる。

神「あゝ、汝が“ハーレー・ダヴィッドソン”を作ったのか?」
ア「はい、私でございます」
神「ふむ、あれはかなり不安定で騒音と汚染物質をまき散らし、道がなくては走れぬそうな。大問題じゃのう」
アーサーは少し困惑したが、ややあって、
「失礼ながら、あなたは“女”なるものを創られましたね?」
神「左様。それが?」
ア「ではプロとプロとの話として申し上げます。あなたの作品には設計上の欠陥がございます。

  1. 前輪の大きさにバラつきが多すぎ、ほとんどが特別な保持装置をつけてサイズを合わせなくてはならない(訳者註:ここに揺れるバストのイラストあり)。
    ――サイズ判定にA〜Hなどと等級までできているのをご存知ですか。下界でこれほどの誤差があったら即刻リコールです。
  2. つねに高速でしゃべり続ける。
    ――私の作品も騒々しいのは確かですが、少なくともイグニション・キーさえ抜けば静かになります。
  3. つねにボディ後端がぶるんぶるん震える(訳者註:ここに揺れるヒップのイラストあり)。
    ――ボディの振動は二輪の快感でもあります。しかしそれを眺めたために後続車が事故を起こす危険があっては製造許可がもらえません。
  4. 燃料注入口が排気口に接近しすぎている。
    ――引火・爆発の危険があるのにどうしてこんな設計をなさったのか、私には理解不能です。
  5. 維持費が莫大にかかる(訳者註:ここに着飾って化粧中のイラストあり)。
    ――実はこれが最大の問題です。これからはエコの時代だって神もご存知のはず。おそれながら改良版をお作りになっては?」

神「う〜む。良い指摘かも知れん……しばし待て」
神は天界スパコンに向かい、数語を打ち込む。暫時ののちスパコンから一枚の紙がプリントアウトされて出てくる。
神、それを読み給うて、
「なるほど我が作品に欠陥はある、しかしこの数字を見ると、汝の作品よりはるかに多い“男”が、夜毎我が作品に乗っておるぞよ」