2006.01.11

戌年初春
お年賀に替えて雑俳をひとつ。

海老殻の 捨て残る朝 駄犬吠え

おせちの伊勢海老の殻がテーブルの上に残っている朝、どこかで犬が吠えている、というような情景で、まことに寒々とした正月にふさわしくも何ともない駄句でありますが、実はこれミュージシャンの名前なのですね。
さて誰でしょう?

(ヒント:捨海老吠駄)

ではもう一句。

若駒や 牧に慈音の 通り雨

若く勢いのある馬が放されている牧場に雨がさっと降った。久しぶりの雨音、結構ですな〜、みたいな光景でしょうか。
さて誰でしょう?

(ヒント:慈音若駒雨)

*回答は、スティーヴィー・ワンダーとジョン・コルトレーンでした。

2006.02.24
Masahiko plays Masahiko
Vol.4 録音終了しました。
今回は富樫さんのベッド脇にいつも置かれているR社製エレクトリック・ピアノを使いました。もう製造中止になっているので、多少修理してスタジオに持ち込んでの録音です。
富樫さんの数々の名曲がまぎれもなくこの楽器から生まれたわけで、彼の頭の中は常時このピアノのElectric piano 1+chorusというセッティングの音色で満ちていたといえます。
実際、かれは私が訪ねて行って新しく出来上がった曲をこれで弾いたものを録り、「原曲」と呼んで楽しんで聴いています。
富樫さんの曲は、スタインウェイでもベーゼンドルファーでもなく、フェンダー・ローズでもない、この音色で聴いてこそ彼の原風景が見える、ということができるでしょう。
4月リリース予定。乞う御期待。

2006.03.30
新企画
ドラマー村上寛さんのリーダーアルバム制作に参画することになりました。
おそらく誰も試みたことのない方式での曲作りに挑戦しています。
まず村上さんからリズム、タイミング合わせ、フォーマットなど骨格をもらい、私がそれにメロディーライン、ハーモニー、ベースラインをつける、というものです。彼からもらった譜面はドラマーから見て自然な動きなのでしょう。しかし私にとっては思いがけないタイミングやアクセント満載で、大いに触発されました。
概略をこしらえた上で、「ここをもう半拍前に出してもらうとハーモニーがつけやすい」とか「その音に行くのならここは3連かな」などとやりとりしつつ細部を詰めて行く作業はなかなか楽しいものです。
4月中旬録音。発売日・レーベルは未定ですが、名手村上寛、久々のアルバム、乞う御期待!!

2006.04.28

国語
小学校から英語を教えよう、というようなことが取りざたされていますが、そんなことより国語を、それも良質の日本語の文章や詩に親しむように教える時間を増やすべきではないだろうか、と思っていました。いくら英語がしゃべれても、内容が空疎では誰も耳を傾けてはくれません。まず母国語でしっかり考える能力を培うことが大切なはず。
書店でふと手にした本に、私の感じたことが数百倍明快に、しかもすばらしい文章で書かれていました。全く同感! 明日の日本に危惧を抱いているなら是非よんでほしい一冊です。

藤原正彦著『祖国とは国語』 新潮文庫 ¥400

2006.06.01
国語・つづき
時間がないときは、新聞でも本でも“ななめ読み”をします。
漢字と仮名の組み合わせをおおまかに拾って行くと、大体書いてあることが把握できるので、特に興味を引いたところだけ立ち止まってきちんと読むのですね。相当スピードアップしてもそれほど見当はずれな理解にはなりません。
たまに「ジャ」なんていうのが引っかかって、ジャズか? と目を戻したらジャニーズだった、程度の誤差です。
しかし、本来ひとつの単語なのに、仮名漢字混合で書かれているものは、そこだけ不自然に目立ちます。きれいに削られた板を手のひらで撫でていて棘が刺さる、といった感じで不愉快きわまります。はっ酵(醗酵)、ら致(拉致)、言い出したらきりがない。
先日は「港大さん」というのに引っかかりました。
みなと・ひろしさん? 変わった名前だな。こうだいさん? 中国人か?
実は「横浜港大さん橋」だったのです。一人で笑ってしまいましたぜ。
たとえ一秒の何分の一でも、円滑だったななめ読みを妨げられた不快感はしばらく尾を引きます。日本語の基礎体力を弱めている元兇のひとつは、仮名漢字混合表記ですね。

2006.08.25
オシム語録
サッカーにはあまり興味がなかったのですが、話題について行けないのもどうか、と時々テレビなどで観ているうちに面白くなってきました。
一人の天才的な選手がマークをかわしてゴールするより、何人もが連係して動くことで敵の布陣に穴が開いてチャンスが生まれる瞬間のほうがワクワクします。全員が刻々変化する状況を的確に見定めて即座に対応するには、運動能力に加えて判断力、大局観といったものが要求されるわけで、このあたりにサッカーの魅力があるのではないかと思います。
オシム監督の言葉がそれをよくあらわしていますね。
「日本社会には、自分で判断して行動する習慣がありますか? 私が何を云うか待っている選手はいらない。ピンチにタイムをとって監督の指示を仰げないのがサッカー。アイデアのない選手は向かない」
「選手には自由を与えるが、流れの中で守るべき原則や責任がある。どんなタイミングで何をするか、彼等は考えなければいけない」
ところで、ためしにサッカーをインプロヴィゼイションに置き換えて考えてみると、全くそのまま通用するではあ〜りませんか。
ランドゥーガでの集団即興はまさにこれです。
ということは、日本代表にメンタルトレーニングの一環としてランドゥーガを経験してもらったらどうかなぁ。2010年まで続けたら相当の成果が期待できるでしょう。
な〜んちゃって。

2006.10.11

シルバーだ? ざけんじゃねぇ


世田谷区から「せたがやシルバ−情報」をお届けします。この冊子は、65歳以上の方(平成19年3月31日までに65歳を迎える方を含みます)がいらっしゃる世帯に1冊ずつ配布しています。介護保険制度や区の高齢者向け保険福祉サービスをまとめたものです。どうぞご活用下さい。

……なんてものが送られてきました。そうかぁ。わしゃシルバーなんじゃのお。
ならば、これまで絶対座らないように心掛けていた優先席、今後は座っても後ろめたく思う必要はない。とはいえ座る気は毛頭ありませんがね。
5年前の「還暦・赤もの拒否宣言」は、自分の心持ち次第で年齢などはどうにでもなるわい、という意気込みのあらわれだったのですが、今年は世の中全体から“シルバー攻撃”を受けている気分です。
そんなもん、無視、むし、ムシーーーーッ。

2006.10.31

珍しいピアノ
10月28日、相模原市の常福寺で弾いたことのないピアノに出会いました。

SCHIEDMAYER PIANOFORTEFABRIK STUTTGART

お寺の備品ではなく、この日のライブのためにレンタルされたものです。
前回、高田みどりさんとのデュオのときはヤマハでしたが、今回はソロということでピアノショップのかたが配慮して下さったとのこと。100年ほどの年代ものをオーバーホールしたもので、響きはなかなか渋く、古いベーゼンドルファーのような感じ。鍵盤の反応はスピード重視のフリー・インプロに対応するにはさすがにやや鈍めでしたが、本堂の重厚な木質の音場にはぴったりの音色でした。ここでバッハの専門家が弾かれたらすばらしいだろうな、と思いました。
本鏡山常福寺は臨済宗建長寺派、700年の歴史をもつお寺で、当代の御住職の発案で現代アートのパフォーマンスを開いています。演奏に先立って数分間の座禅をする、というのがユニークなところで、本堂の扉を全て外し、外界と一体と成った雰囲気の中で、座禅によって呼吸と心が落ちついたところから演奏に入るわけです。
フリー・インプロにとっては最高の環境ではないでしょうか。
楽禅一如……法悦のひとときでした。

2006.12.30

猪三態
=青=
ばらの道を突き破り
越え山越え一直線
ょうがいぶつも何のその
ばしも休まず駈けつづけ

=壮=
ばらの道は迂回して
んびり行こうけもの道
ごとを軽〜く流したら
えすた昼酒鼻ちょうちん

=老=
のしし老いて牙も欠け
ぶた野豚とあざけられ
わ芋ひとつ掘るのさえ
んそこ息切れするわいな

2007年 今年もよろしく御願い上げ奉り候