音とは

 空気の粗密(振動)の伝わりである。天気予報で低気圧や高気圧がある。天気の気圧は1秒間に何百、何千回と変わってはたまったものではないが、音は低気圧や高気圧が1秒間に何百、何千回と繰り返し来るようなものである。

《音色とは》
 楽器により音色が異なる。同類の楽器でも違う。何で、異なるのだろうか。これは倍音によるのである。最も単純な音は、口笛である。サイン波形といっても数学に弱い方にはわからないかも知れないが、口笛はサイン波形に似ている。最も、単純な澄んだ音と言ってよいだろう。矩形波というのがある、これはアブラゼミの鳴き声に似ていたような記憶がある。口笛のような音以外は、かなりの倍音が混じった音と考えればよい。
例えば100Hzの基本の音がある。200Hzの音を偶数倍音、300Hzの音を奇数倍音という。楽器の場合は、一般的に基本の音以外に、これらの音も同時に出ている。ただし、音の大きさは基音とは異なる。この倍音の種類や量が、いろいろな楽器の音色や善し悪しを生んでいる。よい楽器というのは、倍音が良く出るのである。楽器製作者は経験と勘で材質の選択や加工により良い楽器をつくろうとしている。大変な匠仕事である。でも必ずしも、高い楽器=良い楽器ではない。

《何故オクターブは倍の周波数となっているのか》
 1オクターブ上の音とは周波数が倍の音である。そのもう1オクターブ上の音とは周波数が4倍の音である。例えば、200・400・800・1600・3200のように倍々になる。200・400・600のように200ずつ加える数列ではない。だから、基音の多少の違いでも、基音が高いと、より高い音や声を出そうとすると急激に苦しくなってくるのである。
 なぜ、こんな風になっているのかと聞かれても、それは私にはわからない。人間の感性からの感じ方としかいいようがない。数学で対数というものがある。これを対数に直すと1・2・3・4のような比になるのである。音の大きさもそうなのだが、測定器で測って正確に倍の音を人間に聞かせても倍には感じない。また、半分の音を聞かせても半分には感じない。人間の耳には、大きな音は小さく聞こうとし、小さな音は大きく聞こうとする特性がある。人間の音色の聞き分けもたいしたものである。オーケストラなどで、小さな音の楽器がなっていても区別できる。機械はなかなかそうは行かないだろう。

《どのような音の混合が和音になるのか》
 音楽では和音が使われる。和音というのは複数の音が混合したときに響きがよいものを言っている。響きが良いというのは複数の音が混合した結果、短い時間の中で規則正しい繰り返しが起こるものをいう。
 例えば、ドミソ和音だが、ドを計算しやすい値とするために仮に250Hzとしておこう。
基本の音を1とすると、ミは1.25倍、ソは1.5倍である。周波数の対応はド:ミ:ソ=1:1.25:1.5=250:312.5:375=4:5:6となる。
これはドの4周期とミの5周期とソの6周期がぴったりと一致していることを示している。時間的に見れば、それぞれの音が1周期に要する時間は、ド:ミ:ソ=1:1/1.25:1/1.5=6:5:4<のように周波数とは逆の関係になる。
ドの1周期に要する時間は1÷250=0.004秒だから4周期では0.016<秒であり、1秒÷0.016秒=62.5回が、合成された波が1秒間に規則正しく繰り返される数となる。このような規則正しい繰り返し数が多いほど人間の耳には心地よく聞こえ、和音というのである。
 ついでに「唸り(うなり)」も記述しておこう。例えば250Hzの音と255Hz<の音を混合すると、250:255=50:51のような関係になる。250Hzの音が50周期ということは、0.004×50=200ミリ秒、即ち1秒間に5回の繰り返しとなるのだが、人間の感覚では周波数の近い音は1種類しか聞こえないので、こちらの方は音の大きさの変化としてのワーンワーンという唸りと感じてしまう。ワーンが1秒間に5回聞こえるのである。混合音はそもそも唸り音なのだが、この1秒間の規則的な繰り返し数があまり少ないと人間の感覚から唸りとなって聞こえ、多くなるに従い和音となって聞こえる。快い混合音というものは、振動数が1対2(オクターブ)とか、2対3(和音)とか「数の小さい正数倍」で混じっているものなのである。

 ピアノの場合、弦には主弦と副弦がある。主弦と覆弦の周波数は微妙に変えてある。ぴったり合わせてしまうと、音が単純になり深みがなくなってしまうからである。調律師さんはここまで調整をやっているのである。ついでに、ピアノの通常の調律は平均律である。平均律というのは、純正律とは微妙にずれがある。例えば、ドとミは純正律では周波数が1:1.25の比で、和音を聴くことにより完全にわかるのであるが、これが平均律だと1:1.26<のようになる。意図的にずらし調整するのである。ピアノの関係者でも以外に知らない人が多いかも知れない。

《何故オクターブは12半音で構成されているのか》
 これもまた勝手な解釈だ。和音というものを考えてみると、和音の組み合わせが多い音階がよい。そうなると先ほどの和音の構成のように、小さな整数比での対応が多い音階がよい。オクターブを5等分、6等分、・・・・10等分などなど考えることは出来るかも知れないのだが、12等分は極めて都合がよい。12は多くの小さな整数の数の対応が可能になる。12は2・3・4・6で割れるのである。3は3/12=1/4で1.25、4は4/12=1/3、6は6/12=1/2=1.5、8は8/12=2/3、9は9/12=3/4のようになる。関係ないがイギリスの通貨が12進法であった(今は?)、時計もそうである。ワリカンのときも都合がよいかも知れない。

 人間はそもそも理屈から音楽をはじめたものではなかろう。数学や科学を知らなくても心地よさが自然に音階を生み、それは当然自然の理にかなうということが後に証明されることになったのであろう。