発表会などイベントの企画と推進

 何事にも、
(a)企画・計画(Plan)、
(b)実行(Do)、
(c)確認(See;反省(Check)と対策(Action)に分ける場合もあります)、
の段階があります。

 発表会やコンサート実施も勿論同様で、その各々の内容を考えてみると、
(a)企画・計画
すなわち「スタートより当日までの仕事」としては、
イベントの内容企画、
出演者との交渉、プログラムの決定、ホール予約と必要機材の検討と手配、ポスター・チラシ・チケット・配布物などの企画・制作・配布、チケット販売、当日の仕事の分担とスタッフの手配、スタッフとの事前打合せ、企画の金銭的なチェック、
などがあります。
(b)実行
すなわち当日の運営としては
当日の細かな予定に基づく行動、すなわち全体マネージメントの他に、受付、進行、録音・録画、写真、記念品配布などの仕事を遂行しなければなりません。
普通言う「プログラム」は、演奏の順序を示すものに過ぎず、時間配分はありません。少なくともプログラムに時間配分などを決め、関連するすべてのスタッフに渡し説明しておくべきでしょう。
(c)反省
は次に実施するときのために反省をすることです。
問題があった点を明確にし改善方法などを考え記録しないと忘れます。
これらは一連の流れでつながっています。

《物事には5W、1Hがある》
 さらに、以上のことを行おうとした場合、各々の事項に次ぎのようなことを明確にすることが必須です。
Who=体制と担当、When=時間、Where=場所、What=役割、仕事内容、Why=Whatが何故必要なのか、How=機材や方法
これが明確でないと、なかなか大仕事はスムーズにできないものです。

 これらを口頭ではなく、紙上でスタッフ全員で確認しながら進めることは非常に重要です。なぜなら、紙が無くては曖昧になり、後に忘れてしまうからです。紙に書く習慣を持ち、それをベースに確認しながら仕事を進めるリーダーは「急がば回れを実施している人」で、その時は時間をかけても結果的には要領よく事に当たれる人です。また、そのようなリーダーは規模の大きな事にも容易に対処できるものです。数人仕事であるならば口頭でも何とかやって行けましょう。しかし、大人数になる場合そうは行きません。

《いろいろな状況》
 時々余りにも無理、無頓着なイベントの推進を行って、手順的にも予算的にも時間的にも混乱に陥っている方がいらっしゃいます。僭越ながら、そんな方のために一筆とってみました。
 発表会などの代表的な例をいくつか挙げてみましょう。
(1)ホールを余裕をもって予約し、当日までにプログラムや作業の分担、その時間的進行などが、文書でスタッフに徹底され、中心者は当日スタッフに任せ、全体的な気配りや問題があるときだけ対応する。
(2)基本的には(1)なのですが、スタッフには結局任せるきることができないで、我慢ができず口を出し過ぎ、スタッフにむくれられる。
(3)中心者の頭の中だけに進行や分担などがあったり、分担や進行など資料化していても、それがスタッフに徹底されていないので、結局中心者もスタッフも当日バタバタしている。
(4)適正なスタッフを持たず、当日頭の中の口頭指示と自らの動きで、全体点数は落ちても何とかやり遂げる。
(5)プログラムも進行も分担も行き当たりばったり。
(6)先生の演奏などがあると、当日のマネージメントはそっちのけで、先生自身の練習に神経が行ってしまうタイプ。
(7)複数の先生で実施の場合;主従がはっきりしないために、意見の食い違いで混乱を起こしている。
 どのような例が望ましいかは、言わずもがなでしょう。発表会に慣れていないあるいは不得意な方も見かけますので、私なりにちょっとコメントして見ます。
(1)練習は発表会前まで、当日は成果の発表なのではないのでしょうか。そのために、当日は中心者もスタッフも落ち着いており、発表者の心を落ち着かせることが最も重要なのではないでしょうか。その方が、生徒の演奏もうまく行くのではないでしょうか。
(2)生徒がよく弾けた弾けなかったも無視できないことですが、全体的には生徒自身、その親御さん、先生など皆が皆の演奏を聴き「よかったね!」と雰囲気よく帰宅の途につけることが重要なのではないでしょうか。
(3)先生やスタッフがどたばたしていたり、時間をせき立てられたりすると生徒や親御さんにもそれが伝わり、悪影響が出るように思います。

 一般的に申し上げれば、次のようになればなるほど緻密なマネージメントが必要になります。
(1)人数が多くなればなるほど、
(2)課題が難しければ難しいほど、
(3)時間の制約があればあるほど、

 準備不十分だが「うまく行った」と言うのは、「幸運が伴った」と考えなければならないものです。特に慣れないトライの場合は。高度な演奏家には、マネージメント会社とその会社のマネージャーがついております。それは、演奏家に演奏に集中させるためで、それがお客への最大のサービスだからからです。

 諸計画や実行には、極力「表や流れ図」を多用すべきでしょう。だらだら書きの文章は各々関連のある内容や時間の関係が分かりにくいからです。また、人への伝達は資料を説明し徹底することが原則です。口頭は、一部だけが伝わり、誤解も招く、頭にも残らず見直すこともできないことを心に留めるべきでしょう。

 こう考えますと大変なように思います。発表会の内容(規模、難しさ、時間的制約など)を考えて、必要最小限のものを作ればよいのです。ご主人やご兄弟やお知り合いの方に、どんな書き方をするのと聞いてみたらどうでしょう。得意になって教えてもらえるのではないでしょうか。会社その他でマネージメントをしている人々は年がら年中それを作ったり見ているのですから。

 資料は発表会の規模が大きくなればなるほど、その内容が複雑になればなるほど緻密に検討、作成し、文書で徹底し、準備しなければなりません。2、3人のスタッフでの企画、推進であるならば、ごちゃごちゃと多くの資料を作らなくても、一人さえしっかり仕事や手順その他が頭に入って適切な指示が出来れば何とかなりましょう。しかし、多くのスタッフを必要とする場合はそうは行きません。最も年がら年中、やっていることならば多少人数が多くなっても、中心者もスタッフも以心伝心で機械的に頭と身体が動きましょうが、年1回程度では絶対にそのようには行きません。気楽で時間余裕があるイベントならば、お互いに許せる仲なのですから、あまり体系的に準備する必要はなく、大きな流れを考え、いき当りばったりとは言わないまでも流れに委せるようなことでもよいでしょう。

 何事も準備万端により、考えた通りに行く可能性が高まるものです。準備があっても不測の事態の発生することがあります。そのような場合への対応のためにぎりぎりの企画、推進は避けるべきです。頭がいくつもいる体制も駄目です。一人であるから、トップと言うのです。

 これまで、そのようなものがなくても、考えなくてもできたと主張したい方。ちょっと以下の記述を見てみましょう。
(1)何事もなくスムーズにできたのでしょうか。
(2)それは、資料や準備などそれほどしなくても可能な、容易なことではなかったですか。
(3)仕事が手戻りしませんでしたか。その手戻りのために、準備段階、当日などで人に無理を言ったり、迷惑をかけたり、時間を浪費したりしませんでしたか。
(4)何とかやれたにせよ、関係者をハラハラ(関係者への精神的な負担)させませんでしたか。

 発表会の場合、その構成は、先生・生徒・親御さん・親類縁者です。スタッフは生徒さん(過去生徒であった人を含め)や親御さんなどが多いものです。先生とスタッフがそのような関係ですから、スタッフに有能な人がいても、準備段階も当日も、なかなか面と向かって「先生、こうやったらどうですか!」、「先生、こうしましょう、こうして下さい!」、「先生、反省会をしましょう!」などとは言い難いものです。先生が以上のようなことが不得意なら無理をせず「有能なスタッフを見つけ、やりたいことを伝え、任せる」必要がありましょう。ここではお金のことは書きませんでした、それも一つの最重要な企画上の要素です。それによって、企画の規模や内容がほとんど決定されてしまうからです。

 以上、かなり勝手に書かせていただきました。私自身これまでの人生で多くの仕事をしてきましたが、いくら企画を緻密にしても、何もなく完全だったものはありませんでした。企画にはほとんど手戻りが生じます。特に未知の分野に踏み込む場合は。しかし、考えておけば解決の道は早いものです。