法律ABC           by弁護士菊元成典          2020.4.24 現在

 このページは,Twitter の「法律ABC」(ハッシュタグ #lglabc) でご紹介した内容を,ジャンル別に並べ,必要なものにつき特に<補遺>を加えたものです。また,物言いがついて修正したものもあります。
 発信順の本文等は,Twitterの#lglabc のページをご覧ください。
 こちらについても,ご意見等ありましたら, #lglabc をつけてTwitter で発信していただければ幸甚です(特に同業者からは,誤りを指摘していただければありがたいです)。
 :専門用語,:数字,:文章など

【時事】
(コロナ)の影響で,営業を自粛するかは,政府などの休業要請も意識しつつ,自らの営業がいわゆる「三密」になっていないか,また,直接コロナの発信源にならなくても風評被害も考えて判断されるべきです。その際,雇用の継続と,その他の経費等の補償を得られるかがポイントです

(コロナ)の影響で,事業者が営業を停止・縮小しなければならない場合,事業者は「雇用調整助成金」を申請して,雇用関係維持を考えるべきです。ただ,これは最大で90%の助成(返還は不要)ですし,支給までタイムラグがあるので,蓄えのない事業者には少し辛いかもしれません

そこで,労働者の方も,休業手当について(100%でなく)少し譲ってでも,雇用の継続を優先させる必要があるかもしれません。事業者とよく協議してください

(コロナ)による自粛で,労務費は雇用調整助成金でほぼ填補されても,家賃やその他の経費はカバーできません。諸外国には,売上げベースで60〜80%を補償するところもあるようですが,本邦でも,雇用調整助成金をあわせてできる限りの補償がないと,産業を維持できないと思います

(コロナ)中小企業・個人事業主が利用できる所得補償に「持続化給付金」(担当は中小企業庁)が予定されています。ただ,低額(法人の上限200万円,個人事業主の上限100万円),かつ要件も厳しいので焼け石に水の感があります(足しにはなると思います)
<補遺>
・R2.4月中に補正予算案に提出

(コロナ)については,さまざまな施策がありますが(例えばhttps://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf などご参照),資力要件や損失要件が複雑で,審査のために多くの労力が必要になり,結果,給付や融資までのタイムラグも生じます(しかも低額)

そこで,住民票のある世帯ごとに一律○○万円を給付する,また企業に(昨年の税務申告と,最小限のしかるべき証人をつけて)○○○万円を給付乃至無利息融資するなど,ベーシック・インカム「的」な施策により,真に必要なところに的確・迅速に給付(乃至融資)することが必要だと思います

(コロナ)政府は,低所得世帯に30万円の他,各世帯に一律10万円の給付を検討中です。後者は,ベーシックインカム(BI)的な考えですが,金額が低いし,前者では資力調査が必要で,BIの利点が消えています。まだ,各世帯に一律20万円(出来ればもっと高く)とするべきです

政府は,所得制限なしで,国民一人当たり10万円の給付をする補正予算案を作るとのことです。現時点ではよいご判断だと思います(ただ,金額的にはちょっと足りませんが)

(コロナ)大阪府も市町村と協力して,中小気業100万円,個人事業主50万円の休業補償をされるようですが,金額が今一なのと,なにより,その手続がどのようなものになるのか,気になります

(コロナ)の影響で,(休職でなく)解雇を求めれても,いわゆる「整理解雇」の4要件を満たしていないと反論することが出来るでしょう。ただ,会社自体が潰れては元も子もないので,会社に「雇用調整助成金」の申請をしてもらい,雇用を維持するように訴えるべきです
<補遺>
・「整理解雇」の4要件とは,1.人員整理の必要性 2.解雇回避努力義務の履行 3.被解雇者選定の合理性 4.解雇手続の妥当性

(コロナ)で減収した低所得者世帯(市町村民税非課税程度)向けには,市区町村の「社会福祉協議会」が貸付制度を扱っており,返済は必要ですが,無利子で,返済条件も緩やかです(生活福祉資金貸付制度など)。直接社会福祉協議会に伺うのが感染防止の見地からやや心配ですが

【総合】
私達・実務法律家は,法律(+解釈)→適用→効果 の順に考えます(演繹)。それぞれの段階に法律問題(判例)が生じえます。そして,法律(及び政令・規則)は,(法治主義から)社会問題に対処するために制定されていますので,社会問題は殆どの場合法律に関する問題を含みます
 ↓
で,「これって法律の問題かな?」と思っても,まず弁護士に相談してみて下さい。紹介者や顧問関係はなくても法律相談は可能です(5000円/30分程度の相談料は原則必要ですが,無料で相談を受ける弁護士も多いです。要確認)。携帯電話やメールですぐ相談したい弁護士とは,是非,顧問契約を
<補遺>
・演繹(具体化,上位の命題から具体的解決を引き出すこと)←→帰納(一般化)

多くの問題に法律問題を含むと言いましたが,例えば,職場の冷房を何度にするか,という問題は,環境省の基準(28度)や,各職場の決定例(25度にした市役所もある)があるくらいなので,これらを参考にして,職場での匿名の「多数決」で決める,というようになるのではと思います
<補遺>
・一定の基準(憲法)を見据えて,多数決で決する(法律制定)ということとパラレルで

弁護士は(法律の分野内でも)万能ではないので,貴方が,特別な問題に直面したとき,弁護士が,他の専門弁護士を紹介することがあります。その場合,貴方と最初の弁護士の間に「信頼関係」(できれば顧問関係)があれば,その弁護士は,自分の信頼する弁護士を貴方に紹介できます

会社の顧問弁護士は,会社に法的問題が生じたとき(その前段階でも),相談できる弁護士です。普段から会社や担当者のことを知っている弁護士なら,いざというときに安心で,特殊な問題が起こったとき,専門弁護士も紹介しやすいです(顧問料は月額5万円位から。経費になります)

個人の顧問弁護士は,私の場合携帯番号を交換し,緊急のときのも対応できるようにします(夜中はちょっと。充電してます)。普段から,相談していただけるし,信頼関係もできるので,特殊な問題を他の専門弁護士に紹介しやすいです(顧問料は年額3〜5万円位)

刑事事件で,逮捕されたり,逮捕されそうになったら<刑事当番弁護士>に連絡を(大阪だったら,06-6360-0080。各地方の方は各弁護士会へお問合せを。で,今すぐ携帯に登録を!)。加えて<携帯で繋がっている弁護士>を顧問弁護士としてもっておけば安心です(後者は民事・刑事共通)

弁護士は,忙しそう,高そう…どちらも大丈夫です。もし,どうしても忙しければ他の弁護士や弁護士会に助けを求めますし,費用は法テラスや後払い方式も検討します。死を考えるほど困ったら知人の弁護士に相談するか,弁護士会へ(某コンビニの店長とご長男の自死の報に接して)

一定の収入以下の場合,弁護士費用に「法テラス」を利用できますが,生活保護の場合でない限り<立替>が原則です。で,十分な弁護士費用が出ないことが問題となっています。法テラスには,公的な予算をもっと取ってきて,利用者にも弁護士にも使い安い制度になってもらいたいです

弁護士費用を保障する保険があり,その保険料はごく安いです。自動車保険に付随するものと,独立したものがあり,前者は自動車事故中心ですが,後者には,医療過誤などの場合も広く対応しているものがあります(後者(独立型)は日弁連と協定を締結しているところがいいと思います)

R1.11..5から住民票,マイナンバーカード,印鑑登録書などへの旧姓(法律上は,旧氏(きゅううじ))の併記が認められるようになりました。一歩前進かもしれませんが,(選択的)夫婦別姓制度に向けての検討は引き続きなされるべきだと思います

弁護士に相談される場合,事件は,@自ら担当できる事件,A他の弁護士を紹介またはで共同でできる事件,B受任・紹介ともできない事件,に分かれます。事件の内容・見込みと,その弁護士ができるかのよります(弁護士は全ての法律問題の分野には精通していません)

残念ながら受任した弁護士との間に問題が生じた場合は,直ちに懲戒請求に行くよりも,まず,各弁護士会にある「相談窓口」に相談された方が解決が早いと思います(ハードルが低く,実質的な解決も図られることが多いです)

【憲法】
憲法は,国家の基本法であり,憲法に従って立法がなされ,行政が行われることを「立憲主義」と言います。これから暫くの間,憲法について条文を中心に見ていきたいと思います(一部国会議員よりも憲法に詳しくなろう!シリーズです)

憲法はその「前文」で,基本三原則(国民主権,基本的人権の尊重,平和主義)を宣明しています(その裁判規範性には争い有りますが)。なにはともあれ前文を読んでみましょう。名文です。前文1-1 「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、(続)

われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。

前文1-2 「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。(一部略)」

前文2-1 「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。

前文2-2 「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

前文3 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

前文4日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。と,とても崇高な文章です。是非,六法などで全体を読んで欲しい。前文からもこの憲法は守らなければいけないと思う。明日から,憲法の各条項のうち,是非ご紹介したいものを少しずつ

1「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」(「象徴(symbol)」という言葉の意味は難しいのですが,前の天皇ご本人が在位中,「象徴としての役割」を果たすと仰っておられたのが印象に残っています)

9-1「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

-2「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」(先の「安保法制」(集団的自衛権の容認等)がこの条文(憲法9条)に適合するかは,よく考えてみて欲しい。私は…)

11「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」(国民が,基本的人権を有していることを定めたものです)

12「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」(他者の人権との調和も必要である,と述べられています)

13「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」(個人として尊重されることは絶対的真理です。後文は「幸福追求権」について述べられています)

14-1「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」(「平等原則」について述べられています。合理的な「区別」は憲法上も許されます)

21-1「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」(表現の自由のうち,代表民主主義を実現するための選挙活動に伴う表現の自由は,最も重視されるべきとされています)

25「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」(「生存権」の保障です。現在の最低賃金制,一部の非正規雇用による賃金は,健康で文化的な最低限度の生活を営むに足りるでしょうか…)

31「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」(罪と刑が,法律によって決まっていなければ行けないという「罪刑法定主義」を定めたもので,その法律は適正なものでなければならないことまで求められています)

41「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」(国会の権能(立法権)が憲法に基づくことが示されています)

65「行政権は、内閣に属する。」(行政権も憲法から授権されたものです)引き続き67-1「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する(以下略)」(「議院内閣制」を定めたものです)

76-1「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。-3「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」(裁判所,司法権も,憲法に基づくことが示されています)

81「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」(裁判所に法律等が憲法に違反するかを審査する権限があることを述べています。憲法を審査するのではないです)

96「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」(改正は国会だけで決められません)

97「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」(改めて基本的人権の尊重について述べたもの)

98-1「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」(改めて憲法の最高法規性=国家の基本法であること,を述べたもの)

99「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」(改めて憲法の擁護義務について述べたもの。ここには「国民」は入っておらず,国民は12条の限りでの保持義務,利用義務を負っていることに注意)

政治家(議員)・政党を少し疎んでしまう方もおられるかもしれません。しかし,彼らは国民を守る法律を作る立法者(憲法41〜43条)。政策・意見をしっかり考える政治家・政党に,私達は意思を委ねる必要があります。それが代表民主主義。私達は常時政治をすることはできないのですから

【手続】
(主として民事)
証拠」とは事実が痕跡として残ったものです。うち「書面」は証拠として強いです。特に原本(オリジナル)は大事に(借用書など)。問題になりそうなら,その全後のことをメモに取りましょう。これからは,タイムスタンプのある写真,音声,動画も強い証拠になっていくと思います

文書には書いた人の名(作成名義)があって印(出来れば実印+印鑑証明)があるのがベストですが,本人のハンコとあとで言える印が押してあるもの,また,最低限,署名(自署)があれば証拠になりえます。それらがあなたの目の前でなされたことについて,メモをとっておくのがいい
<補遺>
・印影が本人の印による→本人の意思による(事実上の推定)→文書全体の成立の真正(民訴法228条4項)
 と「二段の推定」が働くとされています
・記名+押印 は 署名(自署) と同一の効力を持つと,商法では言われています(商法32条)

「書面」が証拠として確かにその時に存在したことを示すためには,公証人役場で確定日付をもらう方法もありますが,より手軽には,各ページに64円の切手を貼って,郵便局で「記念押印」をしてもらえばOKです。切手が貼ってあるのでコピーでないこともわかります
<補遺>
・郵便法かなにかに根拠規定があるのですが,本日現在見つけられていません
・各ページに通常の郵便が送れる最低限の64円(R元.10〜)は貼るべきとされているようですが,1円でも拒否されることはないはずです
・郵便局が使う消印の色は,1991年から,錆桔梗(さびききょう)という色になっており,それ自体でコピーかどうかわかるようになっています

民事事件で証拠になるのは,伝統的に,人(本人,証人)の供述,書類,でしたが,最近では,録音・録画がスマホなどで容易になり,音,画像なども証拠になりえます。昔から,「書かれたものは強い」といわれてますが,様子がかわってくるかも(書類への署名・印については,別稿)

訴訟は示談の失敗例,判決は和解の失敗例」と言う同業者がいました。「失敗例」とまでは言いませんが,訴訟・判決になると,予測が立たない場合もあり,より時間も費用もかかります。相手の意見も聞いて,示談・和解による解決もめざすべきだと思います。担当弁護士とよく相談を

原告・被告事件とも,法的手続きをとることの効果と,それにかかる費用についても弁護士と事前によく話し合って下さい。勝訴の見込みはあっても10万円しかかないのに,20万円の費用をかけるのは,「費用対効果」に反します(もちろん,お金の問題でない場合もあるとは思いますが)

原告事件では,勝訴判決を得ても,相手の状況・資産から回収できる「執行可能性」を考える必要があります。それを考えずに事件にするのは問題です(被告事件では,相手の執行から守ってもらう立場なので違いますが)

【民事】

成年年齢を18才に下げる法律が国会で成立(同時に女性の結婚年齢は18才に上げる。施行はR4.4.1目標。まだ暫くありますね)。きっかけは,H19成立の国民投票法ですが,改正自体は社会実態に合うと思います。ただ,これまでの全ての20才基準の法律が18才になるとは限りません
<補遺>
・例えば、飲酒や喫煙ができる年齢は現在の20歳以上を維持するため、法律名の「未成年者」を「20歳未満の者」に変える。競馬や競輪などの公営ギャンブルも法改正で20歳未満はできないままにする。有効期間が10年のパスポート(旅券)は18歳から取得できるようにする
・18才選挙権は,H28施行の改正公選法ですでに実現

保証人になるのは、生涯で一度、例えば家族ですむ家のローンを組むときくらいにしましょう。それ以外に、例えば,誰かに借金の保証人にと頼まれたら、弁護士の所に連れて行って断ってもらい,その方に借金問題があったら解決してもらいましょう(会社経営者の場合は少し事情がかわる)


(賃貸借)地裁レベルですが(簡裁の控訴審),国の告示もあり賃貸借の仲介手数料は半月分を原則とする(借主の承諾があれば1ヶ月分も可)判決が出ました。とはいえ,なかなか個別に訴訟に持って行くのも難しいので,依頼の前に申し入れるか,賃貸業者側の自主的な是正が望まれます
<補遺>
・東京地判令和元年8月7日(簡裁からの控訴審)
・多くは,140万円以下で,簡裁からのスタートになります。30万以下なら,少額訴訟も可能です

(成年後見)H12から実施されている成年後見・保佐・補助の制度は,障害者,高齢者(認知症)の状況に応じて,その対象者の援助をする人を決定する制度で,裁判所に申立て審判をもらいます。必ずしも弁護士に依頼されなくてもよいですが,弁護士に依頼された方がスムーズです

(成年後見)ご家族が認知症にかかられたら成年後見(広義)を考えられるべきです。長谷川式簡易知能評価スケールで10点以下,療養手帳A判定,身体障害者手帳1級などで成年後見(狭義)となるとされていますが,その他にも認められる場合があり,弁護士に相談してください

(成年後見)の費用ですが,一番利用されている成年後見制度の場合,便宜費用は,対象者の資産が多い場合は25万円,資産が殆ど無い場合は15万円くらいだと思います。弁護士と相談してください(あと,若干の印紙代等と,万一,医師の鑑定が必要となった場合は,5〜10万円かかります)


(執行)給料の差押えは,税金等を除いた額の1/4までとされていますが(33万円を超えるときは別),婚姻費用や,養育費を請求する場合には,1/2まで可能とする条文がH15に追加されていますので,注意が必要です。そもそも,これらの債務(特に養育費)は延滞しないようにすべきです
<補遺>
・民事執行法152条4項,同条151条の2参照

少し補充しますと,1/4まで差押えできる場合は,33万円が生活に必要な金額とされているので,給与額が44万円を超えたら33万円を超える部分(税金等を除く),1/2までの場合は,給与額が66万円を超えたら33万円を超える分(税金等を除く)を差し押さえることができます(ただし債権の範囲内)


R2.4施行の改正民法は,(1)民事法定利率改定,(2)消滅時効期間改定,(3)保証人の保護,(4)定型約款の効力,が4本柱として法務局のパンフレットにも紹介されていますが,それだけではありません。今後,これらの点を含め,知っておかれるべき改正点を少しずつお話したいと思います


R2.4施行の改正民法は,民事の法定利率(従来5%)を3%に引き下げ,その後3年ごとに1%刻みで見直す変動制,としています。貸金などでは通常別に金利が定められるので,影響を受けるのは将来的に毎年発生する金員を一時に受け取るときです(20年分で約1.2倍になります)
<補遺>
・改正民法404条,同417条の2
・例えば、労働力喪失期間が20年の場合、12.4622(5%のライプニッツ係数) : 14.8775(3%のライプニッツ係数)で約1.2倍増える

R2.4施行の改正民法は,これまでバラバラだった短期の消滅時効(飲み屋の付け払いなど)を,「権利行使できる時から10年」と「権利行使できることを知ったときから5年」としたことです。前者は主張者が客観的に時効を主張できるとき,後者は時効主張できることを知ったとき,です
<補遺>
・改正民法166条

R2.4施行の改正民法は,保証人に関し,3つの点,@個人根保証は,金額の枠(極度額)を定めないときは無効,A事業のための債務についての個人(根)保証は,その締結の前1か月以内に作成された公正証書で保証人となろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ無効

B事業のための債務についての個人(根)保証は,主たる債務者である団体の理事(取締役),支配社員(株主),事業に現に従事する主たる債務者の配偶者等に限る として,保証人の保護を図っていますが,他方で,貸し渋りとなる恐れがあり,金融庁,中小企業庁などの監視が必要です
<補遺>
・@につき,改正民法465条の2・2項(以前から似た規定はあったが,今回は,貸金等根保証契約を,個人根保証契約に拡充)
・Aにつき,改正民法465条の6
・Bにつき,改正民法465条の9

R2.4施行の改正民法は,スマートフォンや,インターネット取引でよく使われる「定型約款」について,不当条項や,変更の場合の規制をしています。また、消費者は,同条項と,消費者契約法10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効とする規定)のどちらかを選んで主張できます

<補遺>
・改正民法548条の2以下

R2.4施行の改正民法は(前に述べた4本柱以外に),敷金の問題(賃貸借の原状回復義務)について「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」とし,既に最高裁判例で示されていた内容と同じ規定を設け,賃借人を保護しました
<補遺>
・改正民法621条,同622条の2

商事】
中小企業の「事業承継」には,相続と税務が関係し,さらにできれば5〜10年位の期間の計画を立てるべきです。顧問弁護士と顧問税理士にチームを組んでもらうか,それが無理なら,事業承継に明るい弁護士,税理士の紹介をしてもらうべきです(顧問ならいい人を紹介してくれるはず)

中小企業の代表者は,通常,金融機関から会社の個人保証を求められていますが,会社倒産等の場合,会社の債務を負わせることは事業承継の障害となるなどするので,H25「経営者保証に関するガイドライン」により,一定の要件の下,金融機関に経営者の個人保証を求めないように指導されています

比較的小さな会社では,役員,監査役,会計監査人の選任・登記がおざなりになることがあります。その場合,過料(100万円以下。実際は5〜10万円。行政罰で前科にならない)の制裁もありえます。役員を代表取締役の1人にだけにする方法もあります。定款をもって司法書士か弁護士に相談を
<補遺>
・「定款」によって,事情が変わりますので,定款をもって司法書士や弁護士に相談を
・H27.1.19の休眠会社の一斉見直しで,任務懈怠をしていることが明らかになり,過料のラッシュになっている,という面もあるようです

「副業」も解禁されつつりますが,従業員の競業避止(勤務する会社と同種の営業を営んだり競争し利益を得ることを禁止すること)の義務は,在職中はしかたないですが,退職後まで求めることは内容によっては違法。退職後の競業避止義務の合意を求められたら弁護士に相談を。取締役の場合もほぼ同様
<補遺>
・違法とする根拠は,職業選択の自由(憲法22条)の国家類似の団体への間接適用(商法1条2項,民法1条2・3項)
・「業業避止義務」のような,法律用語の定義は,法律の基本書(教科書)で見るのもいいのですが,むしろ定評のある辞書で調べられた方がいい(社会通念上の概念だから。)。上記の「競業避止」の定義は,大辞林(第三版)から

【離婚】
離婚を考えられた場合,協議離婚でも調停でも,必ずしも弁護士が必要という訳ではないのですが,離婚時に主張すべき権利(養育費,財産分与,慰謝料)について疑義があれば,親しい弁護士から紹介を受けるか,弁護士会で紹介を受けて,離婚問題に詳しい弁護士に依頼されるべきです

離婚は結婚の三倍大変,と言われますが,それ以上かもしれません。弁護士に依頼する場合は,弁護士とよく相談して様々な証拠を集め,主張を整理してください。なお,多くの家庭裁判所では,家事調停の際,特別な時(調停成立のときなど)を除き,ご夫婦が同席しないような扱いをしています

離婚の手続には,協議離婚,調停離婚,審判離婚,裁判離婚とあり,どう手続を進めるかは弁護士と相談して下さい。まず,なぜ離婚したいのか,その証拠とともに,十分に弁護士と話す必要があり,そういう話ができるかが弁護士選びの基本かもしれません(弁護士は守秘義務を負っています)

離婚が成立するまでは夫婦ですから,互いに扶養義務があり,別居後,収入の低い方から高い方へ,一定の基準に従って「婚姻費用」(生活費)が請求できます。金額決定が調停などで遅れる場合,遡ることはできますが,別居時でなく,請求時までですので,別居後速やかに請求されるべきです
<補遺>
・婚姻費用の金額を決める基準ですが,裁判所に,双方の収入から算出する表がありますが,扶助のため,というのが原則ですから,(固有の収入と合わせて)扶助のため十分かどうかも金額決定の目安になるのはないかと思います(上限について)

離婚においては,未成熟子の処遇が重要で,裁判所もとても気にかけています。親権をどちらにするか,養育費をいくらにするか,面接交通権をどのようにするか,などです。養育費については,一定の基準に従って決定されます(裁判所に表があります)。時期は20才までとするのが通例です
<補遺>
・R22.4.からは,成人年齢は18才となりますので,その影響はあるかもしれません。ただ,もともと,父母の最終学歴までと見る考えも有力です

離婚においては,養育費,財産分与,慰謝料が,金銭的に問題となる事項です。養育費は,双方の収入から決められます。財産分与は,婚姻中に,「夫婦の協力」により形成された財産を原則として1/2にし,慰謝料は離婚に責任のある方が負担します

離婚における財産分与の額については,収入の少ない一方当事者の将来の生活の維持が考慮されることがありますが,他方,特別な技能によって取得された財産は除かれることもあります。なにより,「夫婦共同で」取得・維持してきた財産であることが前提です

いろいろな事情から,離婚を先に決めて,財産分与,慰謝料の決定を後に回すことがあります(養育費の決定はあとに回すべきではないです)。しかし,財産分与は離婚成立後2年,慰謝料は3年で時効により消滅することに注意すべきです
<補遺>
・離婚に伴う財産分与の消滅時効は,離婚のときから2年(民法768条2項但書)
・離婚に伴う慰謝料の消滅時効は,離婚のときから3年(民法724条)

離婚の場合の姓(氏)は,@婚姻時姓を変えた方が離婚後もその姓を続用すること,A婚姻時姓を変えたが離婚時復氏した場合子供の姓を合わせること,B@の場合子供の姓を婚姻時の姓にわせること,など可能です。手続は裁判所・市役所に渡りやや複雑ですので弁護士・家庭裁判所に相談を
<補遺>
・@の場合,当然復氏だから婚姻時に姓を改めた人は,(3ヶ月以内に)役所に届出(新戸籍)。離婚時に姓を改めていない人は不要(通常,夫。不公平ですね!)(これを)過ぎても家裁への申し立てが可能)
・Aの場合,裁判所に「子の氏の変更」審判を求め,その後役所に届出
。Bの場合,@に加え,裁判所に「子の氏の変更」審判を求め,その後役所に届出

【終活】
終活の場合,@Endまでの生活をどうするか,とAEndingWillの遺し方,の2つ位の目標があります。@は資産と収入などが問題となり,Aは遺言の要否など(遺言は必要でない場合もあります)。いずれについても弁護士が担当できることなので,まず弁護士に相談してみてください

終活のうち,Endまでの生活をどうするか,にあたり,まず,現時点で,借金が多く,生活が苦しい場合には,特に,すぐに弁護士に相談してください。これから収入が減ってくるのに,マイナスからのスタートではやっていけないことは明らかです
<補遺>
・受給できる年金の額との兼ね合いももちろんあります
・(それでも足りない場合)自己破産,生活保護,法テラスの利用などで,生活が改善できることがあります。「晩節を汚す」などと思わないで下さい。生活保護も,司法制度を利用することも国民の権利です

終活のうち,老後資金を確保する方法のメインは年金で,65才から支給が原則ですが,原則の場合も,繰り上げる(早める)場合も,繰り下げる(遅らす)場合も手続が必要です。特に繰り上げる場合は通知はありませんからこちらから年金事務所に書類を取りに行く必要があります

終活のうち,年金以外に老後資金を確保する方法として,まず,入ってくる方として年金生活者支援給付金(問合せ先は年金機構),求職者支援制度(ハローワーク)など,出るのを減らす方法として子供の健康保険に入る,などいろいろな方法があります。詳しい弁護士に相談してください

遺言を作る,となると敷居が高いし,必ずしも遺言が必要でない場合もあります。まずは,定評のある「エンディング・ノート」(弁護士監修でしかも手軽なコクヨのものがお勧め)を大まかに埋め,財産の概要も見て,遺言が必要か,どの方式にするかを弁護士に相談されてはと思います

エンディング・ノートには,(指定の場所に)できるだけ正確に相続関係図を書きます。ただ,相続関係を証明する戸籍謄本等を揃えるのは,実はなかなか大変ですし,生前は結局完全なものは集められないので,あとの人(遺言執行者・代表相続人)委ねられたらよいと思います

エンディング・ノートには,不動産の概要を書き,登記識別情報・登記済証は,付属のクリアファイルに入れて金庫などに保管することになると思います。その際,不動産の名義がご自分(将来の被相続人)になっていなければ,早めに弁護士・司法書士に相談して自分名義にされるべきです
<補遺>
・税法上の手段をとろうにも,ご自分の名義になってないととれません
・なにより,あとの相続の場合の名義移転が大変です
・さらに祖父の名義になっていることもあり,その場合,一緒にすると登録免許税が減免されます(R3.3まで)

エンディング・ノートには,銀行口座や証券口座は特定(使用印なども)して一覧表にしておいてあげると,あとの人(遺言執行者・代表相続人)が助かります。「残高証明書」までは取ることはないでしょう(そして,関連する資料を,クリアファイルなどに入れておく)

エンディング・ノートには,生命保険の概略を書き,その証書などをクリアファイルに入れておけばいいでしょう。ただ,生命保険については,生前に受取人などを変更しておいた方が良い場合,しない方が良い場合があるので,弁護士・税理士に相談しましょう

エンディング・ノートには,資産の概略を書き,関連する証書などはクリアファイルに放り込んでおけばよいので,その作業をあまり重いものと考えずに,どんどん進めましょう。ペット,終末医療,お葬式,お墓,など,最終意思を遺しておきたいことをどんどん書いておきましょう

遺言を作った方がよい場合,方式・内容は是非弁護士・税理士と相談してください。当職としては,(財産目録がそのまま添付できるようになったので)自筆証書遺言を原則勧めますが(書換が容易),場合によっては公正証書遺言の方がいいこともあります

遺言の形式をどうするか,変更可能性を重視すれば「自筆証書遺言」,安定性を重視すれば「公正証書遺言」ですが,後者は公証人のチェックが入るのに対し,前者はそれがないので形式不備などになりかねません。遺言を作成するときには弁護士に相談していただくのがよいかと

自筆証書遺言の要件は,@全文を自筆で書くこと(以前は所有物件の目録も),A実際の日付を書くこと,B自署・印(実印である必要なし)。住所は必要ありません。ただ,要件がきちんと整っているかどうかは弁護士に相談してください(@については簡易な方法が認められています)
<補遺>
・民法968条1項(目録等の簡易は記載方法は,同条2項)

自筆証書遺言について,R2.7.10から,法務局で保管してもらえる制度が施行されます。これにより,安定性が高まり,また,「検認」が不要となる,という利点がありますが,変更可能性(推定相続人の行動によって相続分を変えるなど)がやや害されるのではと思います

遺言を作った方がよい場合,「遺言執行者」を誰にするかですが,過去に遺言執行者や(個人的に)代表相続人の経験のある弁護士を選ぶのがよいと思います。ただ,そうなると比較的高齢の弁護士になると思いますが,万一の場合は,若い弁護士が引き継げるようにしておくことができます

遺言,エンディング・ノートは重要ですが,万一の場合(死亡の場合),これらを,遺言執行者や代表相続人に,どう繋いでいくかが大事です。特に,封をした自筆証書遺言の場合,エンディング・ノートに遺言執行者の連絡先を書いておくなどが必要です

もし,将来,「認知症」になると,「遺言できる能力」にも疑問が生じてしまいます。で,エンディング・ノートを記載後,遺言が必要とされる場合は,認知症の診断を受ける以前に,弁護士に依頼して,(高齢の場合は特に)「公正証書遺言」にされるのがよいでしょう
<補遺>
・遺言ができるのは,15才以上で,遺言能力がある場合です(民法961,963条)
・遺言能力に疑義のある場合は,医師の診断書をつける,作成場面のビデオ画像を撮る,遺言内容を簡潔にする,などが必要ですが,弁護士,公証人が着く場合はこれらは図られると思います
・高齢かつ認知症が疑われる場合でも,自筆証書遺言もありえますが,上記の各点については特に慎重にされるべきでしょう

特に(高齢で)お一人で暮らしておられる方は,近所づきあいや,親族との連絡を密にするなどして,決して「孤独死」などされることのないようにして欲しいです。そして,できれば,遺言やエンディング・ノートで,最後の意思をあとの人(相続人,遺言執行者)に伝えて欲しいです

相続人の範囲」「法定相続分」「遺留分」は民法に規定がありますが,兄弟の子供の代襲,腹違いの兄弟の相続分など難しい場合もありますので,弁護士と相談して確認してください。これらの検討は,終活の時期から必要なことで,相続が開始したあとに確定・証明が必要になります
<補遺>
・相続人の範囲については,民888〜890条
・法定相続分については,民900〜905条
・遺留分については,民1042〜1049条

【相続】
相続が開始,つまり被相続人が亡くなったのが,病院などでなく,自宅だった場合,近親者・同居者からの119番と110番への連絡がまず必要になります。そのあとが葬儀の手配(そのためには葬儀代の確保も必要)で,さらにそのあとに遺言などの法的な問題が出てきます

預金解約などのため相続関係確定の必要がありますが,その際「被相続人の誕生から死亡までの全ての戸籍謄本等」を集めることが必要です。被相続人の転居,戸籍の改製などで結構大変で,税務申告とセットで税理士,または相続関係の処理とセットて弁護士に依頼されるとよいでしょう

関係確定のため,「被相続人の誕生から死亡までの全ての戸籍謄本等」を一度集めたら,法務局に「法定相続情報一覧図」の写し(写真)を作成してもらえば,税務申告,相続登記,預金の引出等に使えて便利です。ただ,取得方法は,少し複雑なので,手続に関与する弁護士,税理士に相談を
(写真:「法定相続情報一覧図」の写し)

財産には,プラス(預金など)の他にマイナス(借金)も含まれます。プラスより多い借金を引き継がないために,「相続放棄」や「限定承認」の手続きがあり,それぞれ期限や手続,その他の要件があります。相続財産の中に大きな借金がありそうなら直ちに弁護士に相談を

口頭や遺産分割協議で単に「遺産はいらない」としても,法的に「相続放棄」したことにはなりません。家庭裁判所に申立をすることが必要です。相続財産に債務がありそうなときは,まず弁護士に相談を

相続放棄の場合,相続関係を正確に把握し,どの範囲で相続放棄が必要かを確定して,家庭裁判所にその申述(しんじゅつ)をしなければなりません。しかも,相続の開始を知ったとき(通常被相続人死亡時)から3ヶ月以内で,かつ,その間に「承認」をしてはいけません
 ↓
で,相続放棄が必要かもしれないと思ったら,相続財産についての処分などをすることなく,直ちに弁護士に相談してください。相続人確定のための戸籍謄本等も一緒に集めてもらいましょう(期間を経過した,しそう,単純承認をしたかもしれない,という場合も,一度弁護士に相談して下さい)

遺言が見つかり,封がしてあったら開封してはいけません。開封しても遺言が無効になりませんが,過料の制裁があります。そのまま家庭裁判所に持って行って「検認」手続をする必要があります。封がしてあっても,公正証書遺言であることが明らかであれば,開封してよく,検認も不要です

自筆証書遺言は封がしてなくても,「検認」が必要です。但しR2.7.10から始まる自筆証書遺言の法務局での保管制度が使われている場合は,検認は不要となります

遺言の内容が明らかな場合を除き,全ての相続人間で「遺産分割協議」が行われます。遺産分割協議では,遺言の趣旨を重視しながらも,遺言とは別の内容での決定も可能です。「協議」とは言っても,遠隔地の場合は書面によることもあり,特に争いがある場合は弁護士に相談されるべきです

遺言なくして亡くなった場合は,「法定相続」分に従って遺産は分けられますが,遺産分割協議,遺産分割調停と争いが続くことも多いです。特に争いがある場合は弁護士に相談されるべきです

遺産分割協議が出来た場合,相続人全ての署名・押印が必要になります。署名は出来るだけ自署(面前確認)で,押印は,民法上は認印で良いのですが,銀行,税務署,不動産登記などで実印が要求されるので実印(当然,印鑑証明書添付)によるのが普通です

残念ながら,遺産分割協議がまとまらなかったときには,申立により,家庭裁判所での調停,審判となります。その場合は,大抵,代理人弁護士と協議しながら,基本的には代理人弁護士だけが家庭裁判所に出頭し,手続が進みますので,お仕事などへの影響はそう大きくないです

遺産分割の結果としての不動産の相続登記は,弁護士もすることができますので,相談してください。ただ,測量が必要になるような場合など,複雑なものもちろん,多くの場合,私は,司法書士にお任せしています。弁護士には,大抵,チームを組んでいる司法書士が居ますのでご相談を

各相続人には,遺言や生前贈与によっても奪われない「遺留分」があり,相続分の1/2(配偶者,子),1/3(親)で,相続の開始と,その侵害されていることを知ってから1年以内に,遺留分侵害額の請求をする必要があります。訴訟による必要がありませんが,内容証明で行うべきです

「相続人の範囲」「法定相続分」「遺留分」は民法に規定がありますが,兄弟の子供の代襲,腹違いの兄弟の相続分など難しい場合もありますので,弁護士と相談して確認してください。これらの検討は,終活の時期から必要なことで,相続が開始したあとに確定・証明が必要になります
<補遺>
・相続人の範囲については,民888〜890条
・法定相続分については,民900〜905条
・遺留分については,民1042〜1049条

以上見てきたとおり,相続の処理は,長期間に渡り,様々な問題が生じますので,弁護士に相談される場合は,(単発でなく)タイムチャージや,1ヶ月単位の顧問料で依頼されるのがよいと思います。単価は,相続財産の価格や,手続の内容によって変わりますので弁護士にご相談を

【事業承継】
事業(のうち中小企業)をされている方は,@後継者の選択,A株の集中させ方,B税金対策,などの問題が生じます。相続・企業法務に強い弁護士と,事業承継税務に強い税理士に,5〜10年のスパンで相談しましょう(お知り合いの弁護士か,弁護士会にご相談ください)

【事故】
交通事故発生直後にすべきことは,被害者の救護,119番通報,110番通報です。110番通報は,軽い物損事故でも必要です。でないとあとでややこしくなります。あとは相手方と連絡先を交換して,自分の加入している保険会社に連絡します(その電話番号は事前に登録しておきましょう)

交通事故の被害者となって,弁護士に依頼しようという場合,ご自分の自動車保険で弁護士費用がまかなえる場合があります(権利保護保険,弁護士特約などと言います)。遡って,保険契約時に,そのような特約の有無を確認されるべきです(保険料はそう高くないので付けた方がいい)

交通事故の被害者となって,通院(入院後の通院も)することになった場合,なによりご自身の身体のために,<週2回平均>は通院することにしましょう。そして担当の医師の説明をよく聞いて,治癒か症状固定(症状に変化がなくなること。後遺症が残る)まで通院を続けましょう

交通事故の被害者として入院・通院の場合,3ヶ月くらいで相手方(加害者)の保険会社から,「もう,そろそろ」と言ってくることがありますが,治癒か症状固定(症状に変化がなくなること。後遺症が残る)のどちらかが無い場合,治療を終了することはありません。医師と相談を

交通事故の加害者となって,相手に怪我をさせたり,万一死亡させたような場合は,直接病院・葬儀に伺うのが礼儀だと思います。ただ,常識的なお見舞い,お香典以外の賠償については保険会社に一任しましょう。そのための保険(任意保険)ですので,加入しておくことは絶対です

交通事故の被害者となった場合,相手方(加害者)の保険会社から損害額の提示があっても,すぐサインせず,弁護士に相談してください。保険会社には,悪意はなくても,依って立つ基準が違うので,裁判基準や弁護士基準よりもずっと低い金額しかまず提示してきません
<補遺>
・最近も,14級(併合)(過失相殺なし)の事故で,保険会社の当初提示が,治療費以外で約150万円だったのが,交渉の結果約300万円になりました

歩きスマホ,よく見かけますが,衝突事故で相手に怪我を追わせたら過失致傷罪になりえます(重過失致傷罪の可能性もあります)。民事上の損害賠償の過失割合も原則80%とくらいになると思われます(70%とした判決例はありますが,批判が多いです)。歩きスマホはやめましょう
<補遺>
・過失傷害罪は30万円以下の罰金又は科料(刑法209条)
・過失致死罪は50万円以下の罰金(刑法210条)
・重過失致傷罪は5年以下の懲役・禁固又は100万円以下の罰金(刑法211条)
・ある判決例(大阪地判平成30年3月22日交民51巻2号356頁)スマホ自転車の場合ですが,過失割合を7:3としましたが,批判が強いです

自転車で,歩行者に接触し怪我をさせた場合,業務上過失致傷罪になりえ,民事上の過失割合でも判決例は90:10が標準です。自転車が通行を許可されている歩道でも,自転車専用通路になるわけではないのでこの比率は大きく変わらず,そうでない場合,100:0としたものも多いです
<補遺>
・重過失致傷罪は5年以下の懲役・禁固又は100万円以下の罰金(刑法211条)
・自転車:歩行者の事故の過失割合については,安藤猪平治著「自転車事故の過失相殺・上巻・新版」(交通春秋社)

これまで歩きスマホと,自転車の事故について書きましたが,スマホ使用と自転車使用が重なったら,対歩行者との関係では過失割合は,間違いなく100:0になると思います(先の自転車スマホの7:3の事例は双方自転車でした)。自転車スマホは絶対にやってはいけません

歩きスマホや自転車で怪我をさせられた場合,相手が立ち去ろうとしたら,私人でも「逮捕」することができ,その場合,スマホを預かったり自転車を止めることは,正当行為として許されると思います。ただ,同時に回りの人に協力を求めるなどして,すぐに警察を呼びましょう
<補遺>
・まず,過失傷害は軽微な罪でありますが,住居・氏名不詳または逃げてしまう可能性がある場合には,私人による逮捕が許されます(刑事訴訟法212,213,217条)
・次に,どこまで実力行使が許されるかですが,逃がさないようにするための最小限の行為は,逮捕罪・暴行罪などについて,正当(業務)行為として許されると思います

ご自分の子供さんには,歩きスマホはしない,危険な自転車の乗り方をしないように指導してください。そうでないと,(12〜13才を境に適用条文は変わりますが)資力のない子供でなく,被害者救済の見地から,その親が法律により賠償責任を負うことがあります
<補遺>
・子供に責任能力がない場合(12〜13才まで。状況による)なら,親は監督義務者として責任を負う(民法714,712条)
・子供に責任能力がある場合(12〜13才より上。状況による)なら,親に直接の義務違反等の要件が満たされれば,民709条により責任を負う。

学校の課外活動などでの「熱中症」については,平成2年頃から学校等の責任を認める判決例が出始め,平成15年には文部科学省からも全国の学校に周知されるようになっています。現時点においては,事故が生じたら学校の責任が認められると考え,学校の先生方には注意をお願いしたいです
<補遺>
・熱中症に関する判例の時期と注意義務
  昭和53年 否定例(盛岡地裁判決)
  平成2年頃 否定例(京都地裁判決)
  平成2年 肯定例(静岡地裁判決)
  平成3年 肯定例(千葉地裁判決)
  平成6年 肯定例(福島地裁会津支部判決)
  平成12年(2000年)以降 夏期の部活動等における熱中症予防について,当該都道府県(全国)において,問題として取り上げられ,周知がされるようになっていた(前記名古屋地裁一宮支部判決)
  平成15年(2003年)以降,文部科学省においても,全国の学校に周知がされるようになっていた(資料は?)(前記名古屋地裁一宮支部判決)
  平成16年(2004年)7月 前記名古屋地裁一宮支部判決(認容4500万円。控訴審で和解)の事例

体育祭で未だ見られる「人間ピラミッド」については,遅くとも2019年初めには危険性が認識可能だったので,今後,事故があったら,学校に対し,賠償請求できるし,もし,事前にわかれば仮処分して差止訴訟ができるほか,学校の担当者に対し業務上過失致死傷罪を問えると思う。即刻やめるべき
<補遺>
・2015 大阪市教委が5段までに規制(朝日新聞デジタル)
 2016 福岡市教委が全面禁止通知(朝日新聞デジタル)
 2017 集団行動に代えるように指導(朝日新聞デジタル)
 2019 .1.13 国連が審査へという報道(東京新聞Web)
・不法行為責任請求(民法709条)・・・私立の場合
・国家賠償請求(国家賠償法1条)・・・公立の場合
・重過失致死傷罪(刑法211条)5年以下の懲役・禁固又は100万円以下の罰金

【消費者】
書面でのもっともらしい請求,と思っても,弁護士からみたら3分で偽物か解ります(写真のなら30秒)。すぐに写メを取って弁護士に相談を。そのあとは大抵ほっておいて大丈夫ですが,なにかあれば重ねて相談を(そのためには,携帯で繋がっている弁護士がいたらいいですね)
(写真:もっともらしい封筒と中身)

これには驚きました。あのAmazonの箱の中に入っていて,メールアドレスなどの情報を釣る(フィッッシィング)手口です。手口全体を明らかにして注意しあうしかないですね(この手口にも2つ程おかしいところがあります。詐欺手口を進化させないためここには書きませんが)
(写真:Amazonの箱に入っていたフィッシング広告)

電話,メール,訪問での請求や,よくわからない取引への勧誘には,即答せず,必ず「他に相談する」として一旦話を切って,実際に弁護士に相談してください。資格のある弁護士からみたらすぐ詐欺かどうか判断できます(そのためには,携帯で繋がっている弁護士がいたらいいですね)

PCやスマホでクリックし「サイト使用料がかかります」などの画面になっても,無視が第一選択です。電話やメールをすることは厳禁です。法律では,内容を明記し確認させてからクリックさせないと契約は成立しないとされていますし,身に覚えのない契約ならなおさらです
<補遺>
・特定商取引法では、インターネット通販や有料のウェブサービスなどを提供する業者には、サービスを提供する側に料金などのサービス内容を表示する義務(広告表示義務)があるとされているからです。また料金を表示していたとしても、ボタンをクリックすると有料の申し込みになることがわかりやすく表示されている必要があります
・もしメールや電話等をして,請求がしつこい場合や,代金を支払ってしまった場合は,弁護士に早めに相談を

(法律で禁止されている)「ネズミ講」と,「マルチ商法」は実は紙一重です。業者は,「確かにマルチ商法だが,マルチ商法は法律で許されている」などと言いますが,法律はマルチ商法を制限しており,有効なマルチ商法もありうるとしているだけなのです。要注意,弁護士に相談を
<補遺>
・ネズミ講:無限連鎖防止法2・3条
・マルチ商法:特定商取引法33条(違法なマルチ商法を,マルチまがい商法 と言う)
・両者の構造は似ており,前者が主として金銭を対象にするのに対し,後者は商品を介することが多い。要は,対価的関係があるかどうかがポイント

偽物は一見「いいもの」のような顔をしてやってきます。例えば,民間療法として「ホメオパシー」「レメディ」などは諸国の裁判所でも偽物と認定されていますので,注意が必要です。これらを信じて,ワクチン接種をしないなどすると,無益のみならず,有害です

【債務整理】
(個人中心)
個人の場合,(住宅ローンを除く)借入の総額が150万円位になり(通常のカードローンの上限×3社),借入残高が減らない(むしろ増えていく),という状態になってきたら(そうでなくても,生活が苦しく感じてきたら),危険信号です。弁護士に相談し,早期の債務整理の対応を

家計が危機的な状態となった場合,どの債務整理の方式によるかは,@債務,A家計の状況,B資産,その他の状況から,弁護士が判断します。相談者は,できるだけ早く,@〜Bに関する資料等を弁護士に見せて下さい。早く,正確に開示していただくほど,的確な手段が執れます

家計が一時危機的な状態になっても,必ず「破産」ということはありません。裁判所の手続によらない「任意整理」,債務を圧縮する「個人再生」などがあります。特に個人再生の場合,住宅ローンは払って,自宅は維持し,他の債務は圧縮して支払う,ということができる場合があります
<補遺>
・「住宅資金特別条項」付き個人再生,と言います

いずれの手続の場合も,債務調査(弁護士から各債権者に照会)が必要で,その際,「過払い」(返し過ぎ)がないかチェックします。2010年5月以前に,一定の金利以上で借りておられた場合は,取引終了後でも5年以内なら過払いが生じている可能性があります
<補遺>
・以前は,民法の法定金利と貸金業法の金利との間に,いわゆるグレーゾーンがあり,過払いが生じる可能性があったのですが,2010年6月の貸金業法改正によりグレーゾーンがなくなりました

個人(個人業主を含む)の取り得る債務整理の手段は,前に述べたとおり,「任意整理」「個人再生」「自己破産」があります(「特定調停」も。私はやったことないのですが)。次回から,それぞれに分けて,皆さんにお知りいただきたいことを書いていくことにします

(任意整理)は,債権者の数があまり多くなく,従って債権総額も多くなく(それぞれの基準は弁護士によって違います),ほぼ問題の無い債権者(ヤミ金などがない)の場合に採用される裁判所を通さない手続です。任意整理でもいわゆるブラックリストには載ります

(任意整理)の弁護士費用は,債権者数×4万円(+税)(か11万円の多い方)に,3万円くらいの実費が標準だと思いますが,それでも大変だと思うので,分割などを含め弁護士と相談してください。裁判所を通さない手続なので,別途裁判所費用はかかりません

(任意整理)は,文字通り,裁判所を通さない任意の債務整理ですので,利息をカットした上で5年分割くらいが上限です。逆に言うと,それくらいで生活の立て直しのできない場合には,「個人再生」「自己破産」に進むことになります

(個人再生)は,費用も安く,債務カット率も大きい,と言われてきましたが,注意すべき点が5つくらいあります。このあと一つずつご紹介していきます

(個人再生)の注意点1 債務カット率が大きいとされていますが(多くの場合80%),破産の場合(物件を処分した場合)よりも多く配当することが必要で(「清算価値保障原則」と言います),財産によってはかなり高率の返済が必要になる場合があります。特に自宅がある場合要注意です

(個人再生)の注意点2 費用が安いと言いましたが,内容によっては,「再生委員」が着くことがあり,その費用は30万円にもなります。どれくらいの割合で着くかは不明ですが,難しい再生手続の場合にはかなりの割合で着くことを覚悟されるべきです

(個人再生)の注意点3 減額された残債務を3〜5年分割で支払うのですが,裁判所はその「履行可能性」を厳重にみます。一般家庭(夫婦と子供1人)で,概ね月20〜30万円(債務返済額による)の安定収入がないと,履行可能性がないとして,破産に移行すべきとされることがあります

(個人再生)の注意点4 特に住宅資金特約付きの場合ですが,自宅とその関連費用以外に,後順位の抵当権が設定されている場合には使えません。普段から,家族が住む自宅には住宅ローン以外担保はつけないという覚悟でいる必要があります

(個人再生)の注意点5 給与所得者でない個人再生の場合,債権計画について,債権額の2分の1以上,かつ債権者数の過半数の同意が必要です。この同意は,大抵の場合大丈夫ですが,特に内容に問題があると否決され,破産になる場合もあります。事前に弁護士とよく相談を
<補遺>
・給与所得者であっても,(条件が厳しいので)一般の(小規模)個人再生によることがあります
・問題ある場合は,資産を隠匿したりする場合ですが,そういうことのないように,申立前に弁護士とよく話し合って下さい。うっかり,ではすまされませんので

(個人再生)の弁護士費用は,通常型で33万円,住宅資金特別条項付きで44万円くらいが標準だと思いますが(裁判費用は,再生委員が就かない限りそう多くないですが,再生委員が就いたら30万円!),大変だと思うので,いろいろな方法があるので,担当弁護士に相談してください

(自己破産)は,現在お持ちの財産を原則として全て換価して届出債権者に分配して,あとの債務は免除されるという制度です。ただ,生活のため「自由財産」として認められる部分があり,破産手続開始(申立から結構すぐ)のあと得られる財産は「新得財産」もその一つです

(自己破産)するにも費用がかかります。財産が殆どなくすぐに手続が終わる「同時廃止」の場合には,弁護士費用33万円,裁判所費用等3万円弱,3ヶ月くらいで終了する見込みの「少額管財」(大阪では「一般管財」)で弁護士費用44万円,裁判所費用等22万円ですが…

(債務整理)(自己破産)破産を考えるくらいなのでそんなお金ない,と思う方もおられるかもしれませんが,「法テラス」利用(生活保護を受ければ返済免除)や,分割払い(返済停止後に積立ててもらう)などが可能なので,担当弁護士と相談してください

【倒産】
(法人中心)
中小企業の場合,(資金表のうちの)月繰表で,先3ヶ月の運転資金に不足が生じたときには,法的整理(破産を)を考えた方がいいかもしれません。弁護士に早期に相談を

【労働】
(労働者側。cf.使用者側は「商事」を)
給与債権の時効が民法改正に従い(2年から)5年に。給与債権の全部又は一部(残業代など)の未払いがあり,証拠があれば,5年間遡れることになります。但し,改正民法施行時のR2.4.1以降に雇用契約が結ばれた場合です(有期労働契約での更新の場合も含むかは残された問題です)
<補遺>
・平成27年民法改正案166条1項
・厚生労働省検討会(についての報道)

労働契約法改正により,有期労働契約→無期化 のルールができたのはよいことなのですが,有期雇用が通算5年超で,無期化(要 申込み)となることから,その前に「雇止め」をされる恐れがあり,その場合には労働問題に詳しい弁護士(弁護士会で紹介してもらえます)に相談を
<補遺>
・労働契約法18条
・厚生労働省「有期契約労働者の円滑な無期転換のためのハンドブック」
・「有期労働契約の締結,更新及び雇止めに関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号)

「働き方改革」に関する法律が,大企業は既にH31.4から,中小企業でもR2.4から施行され,時間外労働時間の上限(原則月45時間,年360時間)などが規定されています。また中小企業の週60時間を超える時間外労働への50%以上割増し猶予も撤廃されます
<補遺>
・2019.4労働基準法改正

解雇された,パワハラを受けている,残業代が払われない,残業が多くて大変,などの場合は,すぐに知り合いの弁護士か,弁護士会に相談してください。労働問題は特殊な技能を要するので,その弁護士が出来ないとき,また弁護士会は,労働問題専門弁護士に繋げてくれます

【不動産】
(登記関係も含む)

【医療】
(主として患者側)
(医療)を受けるのも契約の1つです。患者に報酬支払義務が生じるのに対し,医師(医療法人)には,説明義務(インフォームド・コンセントを受ける義務),及び,適正に医療を施す義務が生じます。救急の場合も,説明が事後になっても基本的には同じです。で,不幸にも医療事故が起こったら

医療事故か,と思ったら,早い時点で弁護士に相談して善後策を協議した方がいいです。逆に言うと,<携帯で繋がっている>弁護士を持つことをお勧めします。必ずしも医療を専門とする弁護士でなくても,「応急処置」はやってもらえます。医療事件に限らず,緊急対応してくれる弁護士を持つことは要だと思う(痴漢冤罪事件しかり)

(患者側)で医療事件をする弁護士は,@共同受任を含め最低5件は医療事件を解決まで担当していること,Aその診療科に信頼できる協力医師の宛てのあること,は必須と思います。私はAがないとき,早めに,他の弁護士に代わってもらうようにしています

(患者側)としてはカルテ入手の必要があり,かつては証拠保全手続が必須でしたが,昨今は電子カルテが主流で技術的に改竄しにくいこと,改竄すれば少なくとも行政処分があること,任意手続での取得の場合と開示範囲に大きな違いがないことから,病院に任意提出を求めることも多いです
<補遺>
・病院へのカルテの任意開示請求の根拠は,情報公開条例(都道府県市町村などの病院),情報公開法(それ以外の病院)です
・カルテ改竄の場合は,証拠隠滅罪(刑法104条),や偽造罪(民間の病院では私文書偽造(刑法159罪),国公立の場合は公文書偽造(刑法155条))にも当たり得ますが,なかなかハードルは高いです。ただ,少なくとも,医師法7条2項に当たる行為として,行政処分の対象にはなるでしょう

ただ,そもそも電子カルテでない場合もあり,電子カルテの改竄0%でないこと,裁判所の定める開示の範囲と,電子カルテの任意開示の範囲が事案によっては完全に一致しないこと,などから,費用と手数は若干かかっても裁判所によるカルテの証拠保全手続をとることもあります
<補遺>
・費用は,証拠保全手続を含め(交渉までで)20〜30万円(+税・経費別)とする場合が多いです。入通院が長期にわたる場合,ICUなどに入院されていた場合は,カルテの量も多くなります

(患者側)カルテを入手したら,「協力医」とともに,事案の内容を検討することになります。診療科も多く,そもそも患者側に立って協力してくれる医師にで会えることはなかなか大変ですが,是々非々で意見をしてくれるよい協力医に出会えるか否かが訴訟の「予後」に大きく影響します

(患者側)医療事件を,(カルテを入手して)協力医とともに調査する場合(「調査受任」と言います),証拠保全(をした場合)の他に,若干の経費がかかります。弁護士からよく説明を受けてください。
<補遺>
・調査受任費用は,事案によって20〜30万円(+税・経費別)
・医師に謝礼をする必要があり,意見書などをもらう場合は,預託経費でまかなえる場合を除き,別途経費負担をしていただきます

(患者側)の協力医は,場合によって,匿名または顕名(名前を出すこと)の協力になります。顕名で意見書をもらえたらよいように思えますが,事案によっては,匿名の忌憚のない意見をもらい,その後の鑑定医(裁判所が任命される医師による)の鑑定に繋げる方がよい場合もあります

(患者側)弁護士は,協力医とも相談し,訴訟で責任を追及できそう(有責事例)であれば,訴訟する前提で相手方と交渉しますが,そうでないと考えられる場合(無責事例))には,訴訟提起を断念してもらうこともあり得ます。担当弁護士とよく相談してください

(患者側)訴訟を提起する場合の費用ですが,目指す経済的利益の約10%の着手金(税別)と経費とすることが多いですが(成功報酬は約15%),医療事件ではその金額が計算上大きくなることもありえるので,着手金の一部を成功報酬に回すことなどもあります。担当弁護士と相談を

医療過誤事件の時効は,R2.4以降の行為の時点から,損害及び行為者を知ったとき(権利行使できることを知ったとき)から5年,または医療事故から10年ですが,どちらか長い方で訴訟は受け付けられ,時効の中断などもあるので,諦めずに弁護士に相談を
<補遺>
・国公立病院の場合でも,医療サービスは民間病院と同じなので,国家賠償法でなくそもそも民法の規定が適用されています
・不法行為責任とみる場合,R2.4から,損害及び行為者を知ったときから5年になります(民法724の2。それ以前の行為の場合,3年)
 民法上の債務不履行責任とみる場合,R2.4から,権利を行使できることを知ったときから5年,権利を行使できるときから10年(民法166条)
 医療事件の場合,よほど間が開いていないかぎり,時効が主張されることはまあありませんが,証拠・証人の散逸もあるので,できるだけ早めに弁護士に相談を

特に患者側では,「専門性の壁」などがあり,時間がかかることが多いです。それに,弁護士は,他にも平行して事件を担当しなければいけませんので,思っておられるよりも時間がかかります。でも,進捗状況の質問などは遠慮無く担当弁護士にして下さい

【証券】
証券取引の損失につき,証券会社の見解と異なる場合,まずは証券取引業協会の手続で解決を図ることができ,解決できない場合,弁護士を依頼しての訴訟等になります。いずれの手続でも取引記録(顧客勘定元帳等。但し,法定保存期間は5年)は,きちんとした証券会社であれば提出されます

【知財】

【IT】

【税金】

【刑事】

捜査されても,逮捕・勾留されても,まだ,犯人(=罪を犯した人)ではありません。起訴されるまで「被疑者」(マスコミ用語で容疑者),起訴されて「被告人」,裁判所で有罪となって初めて「犯人」確定です(これは,有罪判決まで無罪と推定すべきという「無罪推定の原則」からです)

「無罪」と「無実(無辜)」は違います。前者は裁判所の(訴訟的な)視点(その反対が有罪),後者は神様の視点。両者は一致すべきですが,限界があり,無実なのに有罪とされるのが「冤罪」です。これに関し「十人の真犯人を逃すとも,一人の無辜を罰するなかれ」という言葉があります

弁護士はなぜ悪い人を弁護するの?と聞かれたら,@本当に悪いかどうかは慎重に裁判手続で決める必要があり,裁判で結論が出るまでは味方する人が必要だから,また,A明らかに悪い人でも,適正な刑罰になるようにする必要があるから,と答えることにしています

痴漢に間違えられたら,連絡先(名刺など)を残しその場を立ち去る。それができないときは,すぐに弁護士に電話して指示を待つ(当番弁護士か,携帯繋がりの弁護士)。立ち去ったあとには,弁護士に連絡して協議する(というのが現在の通説かと。線路を逃げるたりするのはいけません)
<補遺>
・そうでないと,私人による現行犯逮捕(刑事訴訟法213条)→勾留,と身柄拘束が続き,耐えられなくなってやってないことを認めてしまうこともあるからです

痴漢は許せないです。でも,「安全ピン」はさすがにやりすぎで,<ノック式の油性ペン>を勧めます。前者ならもし間違ったらおおごとだけど,後者なら謝ればすむので,思い切って使用しやすいし,証拠も残しやすいし,安いし(ハンコ屋さんが妙案を考えておられるようです
(写真:ノック式油性ペン)

痴漢を目撃したとき,程度が酷い場合は勇気をだして注意したい。が,微妙な場合は,トラブル,場合によっては,こちらが暴行罪・逮捕罪になるのでは,と思ってしまうが,少なくとも「目撃カード」(写真。そのものでなくても,その記載事項で)を警察に出して,警備強化してもらう
(写真:目撃カード)
<補遺>
・暴行罪,逮捕罪は,正当業務行為(「業務」というのは,私人による逮捕行為の一環としてだから)として違法性阻却とはなりうる。ただ,勘違いは,誤想防衛,やりすぎは,過剰防衛になって,それぞれ違法性は阻却されず,前者は責任阻却,後者は違法性が減少するとするのが通説。両方重なった場合は,誤想過剰防衛で,違法性・責任が減少するに留まると考える(諸説あり)
・大阪府警のHP(痴漢・盗撮などの被害について)
 https://www.police.pref.osaka.lg.jp/sogo/katsudo/8/2/6420.html

もし逮捕されたり,逮捕されそうなら,すぐ 刑事当番弁護士 (番号は,各地の弁護士会のHPで。で,すぐその番号を携帯に登録!)に連絡を。そして,弁護士が来るまでは「黙秘権を行使する」とする他は何も話さない(自分は悪いことをしていない,と思っても)。私ならそうします

刑事当番弁護士は1回目は無料,その後,被疑者段階・被告人段階でも国選制度が利用できる一定の場合はずっと無料です。まずは弁護士と相談してください。「弁護士頼んだら目の玉でるくらいお金かかる」は弁護士に委任させないようにする悪質なデマです

犯罪の成立要件(「構成要件」と言います。)に当たるかは,結局,社会通念によります。例えば,準/強制/性交罪は「抗拒不能」について,ある地裁判決は,@実の父親による長年の行為であること,A閉鎖された空間だったこと,にも関わらず,「抗拒不能」でないとしましたが,疑問です
<補遺>
・上記名古屋地裁岡崎支部判決H29.3.26は,「抗拒不能」にあたらないとして無罪としたが,控訴中

「実名報道」は私は原則反対。その理由は,判決まで「無罪推定」だから。例外は,逃亡している被疑者の身柄確保が急がれる場合(自傷他傷のおそれ)など限られるとすべき。有罪判決確定前に実名を知ろうとするのは,単なる興味本位で,仮に間違っていた場合の人権侵害は甚だしい

(重い話ですが)「死刑」は,裁判官が慎重に判断した結果であればやむを得ないと思うが,それは冤罪の可能性が限りなく0に近いことが前提。また,死刑に(犯罪)抑止力があるとも思わない。それは「教育」などに委ねられるべきことで,司法でなんでもできるとも考えてはならない

覚醒剤・コカインなどの薬物事犯については,本人を #ダルク に繋ぐことを考えて欲しい。本人に,ダルクの情報(パンフレット,ウェブページ),出来たら書籍を差入れし(家族用の書籍もある),裁判官の前でダルクに行くことを誓うことも(弁護人に)情状弁護に入れてもらってほしい

最近,ダルクの職員だった有名人が再逮捕されましたが,それだけで#ダルク が信用を落としたみるべきではないです。皆さん,薬の誘惑とギリギリ戦っている中で起こったこと。そもそも,薬物中毒は病気として治療すべきで,犯罪として罰するべきではない,とする考えも強いです

交通事故での刑事事件は,行政処分とはまた別です(さらに,民事事件になることもあります)。交通事故を起こしてしまったら,決して逃げたりせずに,まずは被害者救護に努めて欲しいです(被害者の救護義務違反は,すべての局面で,重く扱われています)


【少年】

【その他】

法的なトラブルを避けるには,まず,予期せぬ危険の生じうる場所に近づかないこと,次に、記録を残すこと。カメラ,ボイスレコーダ,動画撮影,ドライブレコーダなどは,その操作と,記録媒体の扱いに慣れておくことが必要です(前3つはスマホに着いています)
<補遺>
・写真・音声・動画をとっている,ということは,事後的な証拠になるだけでなく,即応的な対抗措置になりえます

文書に書く「名前」と押す「印」。一番厳格なのは,自署・実印(当然,印鑑証明付き)ですが,要は名義人の意思があとで確認(証明)できることが大事なので,急いで借用書を書いてもらうようなときは,面前で(目の前で),自署だけしてもらっても一定の証明力はあります
<補遺>
・名前について:自署>記名(自署以外。代筆,ゴム印)
・印について:実印(印鑑証明付き)>認印>無し
・法律上は,記名・印無しはだめですが,それ以上ならOKで,署名は,記名・押印で代えられるとしています(商法32条。商法の範囲ですが)
・認印でも,印影がある人の印によるものものと認められたら,「二段の推定」により,文書の真正(文書がその人の意思により作成されたこと)が推定される,という意味があります(民事訴訟法228条4項)

自分に合う弁護士の見つけ方の1つ。(会社だったら顧問弁護士を通じてになるのでしょうが。)個人の場合,弁護士を友達にしておく(できたら複数)。で,問題が起こったときその弁護士に相談したら,自分ができない事件なら,それのできる貴方に合った弁護士を紹介してくれます
<補遺>
・弁護士は,紹介者双方のことを考えるので,あなたに対しての責任もですが,紹介した弁護士にも迷惑にならないようにマッチングを考えます
・弁護士は,こと同業者に関しては,期の関係,弁護士会(会派)の関係,出身大学・ロースクールの関係など繋がりは多く,専門分野などのことも互いに知っています

弁護士費用について,これまで「標準」と言ってきたのは,主に弁護士会の旧規定ですが(それとほぼ同じ事務所規定も),それとは違う基準によっている事務所もあります。弁護士報酬も,契約が必要ですので,どのように決めているか,事前に弁護士から説明を受けてください

弁護士にかかる費用については,事件開始前に,説明を受けて,委任契約書を締結すべきです(委任契約書を作成しない弁護士は避けるべきです)。その際,事情によって,着手金を少なめに,そのかわり報酬を多めに,等の調整を申し入れれば,弁護士は相談に乗ると思います

弁護士の費用を決める「経済的利益」は,貸金訴訟などではわかりやすいですが,そうでない場合はいろいろな考え方があります(例えば,賃料請求なら差額の7年分など)。委任契約書を締結する前に,「経済的利益」の算出方法についても,弁護士から説明を受けてください


(いじめ)お子さんが「いじめ」に遭っていると察した場合,親としてどうすべきかですが,「こどもの権利」に詳しい弁護士に相談し,その対処方法(学校,相手の親への対応含む)に従うことをお勧めします。私もそうします。大阪弁護士会には専門の委員会があります

ベーシックインカム(BI)とは,(生活保護などの)資力条件を課さず,全体に一律に一定額の金銭を給付する社会制度です。資力審査がないため,給付のための費用は少なくてすみ(公務員さんには他の仕事を頑張ってもらう。),簡易かつ迅速な給付が可能です

日本全体でBIを行うとして,最低限の必要,財政的な可能,その他(性働く気持ちがなくなるモラルハザードを回避など),を考えると毎月1人当たり6〜8万円の給付は実現可能かつ実現すべきです(そのかわり,公的年金や,生活保護などもあわせて一本化する)

これまでBIを実験的に行った国や都市がありますが,本邦では,例えば,70才以上の高齢者に限って,毎月1人当たり5〜6万円を支給する,など考えるべきではないか?給付の手間も少ない(住民登録と戸籍の確認くらい)。老後資金2000万円が足りないと絶望しなくて済みそうです

今回のコロナ騒ぎで,BI的なマスクの支給がありました。仕様・枚数など不満はありましたが,全国一律に実施したために,迅速ではありました。今,もっと大規模にBI的な施策を行うべき時期に至っていると思います