開催日時:平成30年6月23日(土)14:00〜16:00
講演・演者:「腋窩廓清後の生活について」井上記念病院 乳腺外科医長 椎名伸充先生
       「運動療法の重要性」井上記念病院 リハビリテーション科 吉見泰子先生

腋窩郭清後の生活について
腋窩郭清後に起こること

しびれ
  • 手術により神経が障害されるため、二の腕の内側からひじにかけての痛みや違和感が起こる。
  • 最初の1か月症状が強いが次第に改善、1年以内に良くなることが多い
体液貯留
  • 腋窩に体液がたまる。痛みや腕の上げづらさや感染の原因となる。
  • 外来で体液を抜きます。1か月ほどでなくなります。
腕の上げ
づらさ
  • 痛みにより肩のまわりの筋肉の協調運動が悪くなり、腕が上げづらくなることがある。
  • 退院後も半年はリハビリを継続していきましょう。リハビリ科を受診することもできます。主治医に相談してください。
リンパ浮腫
  • リンパ流の停滞により感染やリンパ浮腫が引き起こされる可能性あり(10-20%)。
リンパ浮腫の予防
@ リンパの流れを意識しましょう。
 〇 適度な運動
 〇 適正な体重、食事管理
 〇 休息時の上肢拳上、深呼吸
 × 肥満
 × きつい下着
 × きつい衣服の裾
 × きつい指輪、腕時計
 × きつい運動、無理な力
 × 血圧計
A 適切なスキンケアで感染予防をしましょう。
 〇 保湿をしましょう
 〇 清潔にしましょう
 〇 アウトドアは長袖、日焼けどめ
 〇 家事、園芸は手袋を
 × 深づめ、甘皮処理
 × 虫刺され 
 × 日焼け やけど サウナ
 × 採血、点滴
術後長期間経てからの発症もありますので予防も継続して行ってください。
運動が乳がんの発症予防・再発予防になるのはご存知ですか。
@ 運動は閉経後の乳癌の発症リスクを12%低下させます。
A 乳がんと診断された後からでも身体活動を高めることができた場合、乳がんの死亡は29%も低くなることが分かりました。
乳がん以外の原因(心疾患や脳卒中)も含めると死亡リスクは43%も低くなります。

ではどれくらい運動した方がいいのでしょうか。
週に7METSの運動を余暇に行うことが勧められています。
週に1METS身体活動を上げると6%乳がんの死亡率が下がると言われています
生活活動 運動
3METs 子供の世話
部屋の掃除、片付け
ドライブ
ウォーキング
ストレッチ
ヨガ
5METs 子供や動物と活発に遊ぶ
庭の手入れ
自転車に乗る
速いウォーキング
ダンス ゴルフ
バトミントン
7METs 階段、坂を上る
ジョギング  水泳
エアロビクス
スキー テニス
METs・・・metabolic equivalents 身体活動の指標

運動は抗がん剤治療中のケモブレインにも効果があります。
ケモブレインとは抗がん剤治療中と以降にわたる認知機能障害(集中力低下、実行機能障害、言語・運動機能障害、情報処理機能障害)のことです。ウォーキングとストレッチバンドを用いた運動がケモブレインに効果があったと報告されています。
まとめ
運動は腋窩郭清後の拘縮、リンパ浮腫予防になります。
運動は抗がん剤治療中、治療後のケモブレインの予防になります。
運動は乳がん再発のリスクを低下させます。
*退院して最初の診察で問題なければウォーキング程度から始めてみましょう!
2018.11.16 ももはな会事務局