どう付き合う体の不調
原因不明の痛みやだるさ
予想以上に多い患者

  
  「最近、なぜか体が痛い、だるい、しびれる」。どこの病院でも悪いところがないと言われるが、痛みやだるさは一向に変わらない。こういう原因不明の体の不調に苦しむ人は、実は結構多いことが分かってきた。他人に理解してもらえない体の不調に、どう対応したらよいのだろう。  
                       ▽15%以上も
  「世の中には原因不明のケースがたくさんあると認めてあげることが非常に大事」と精神科医で「いそべクリニック」(愛知県蟹江町)院長、東京福祉大教授の磯部潮さんは指摘する。
  磯部さんが勤務していた名古屋近郊の総合病院精神科の外来患者950人を調べた結果、痛みやだるさを訴えていながら、原因不明の人は16%(155人)もいることが分かった。「こういう調査は初めてだった。総合病院では内科や整形外科で分からないと、精神科に回ってくることが多いが、実際に精神科に受診する患者さんはその一部。内科などではもっと多いのではないか」(磯部さん)
  こういった患者は、一般診療科では「自律神経失調症」や「更年期障害」「心身症」などの診断名が付けられることが多いという。  
 ▽身体表現性障害
  これらは、あくまでも「除外診断」または「消極的診断」で、磯部さんは「一番よくないのは病名を付けられることで分かったような気がしてしまうこと」と話す。患者側がさらに原因を求めると、各科のたらい回しや、「気のせい」「思いすごし」などと言われたりすることもあるようだ。
  磯部さんはこのような、「身体上、明らかな障害が認めらない」原因不明の身体症状を統一して「身体表現性障害」と呼ぶことを提案、「身体的要因と精神的要因からの総合的視点の導入が必要」と強調する。
  磯部さんが診察した前述の155人をみてみると、女性が60%近くで、年齢は22―79歳、年とともに増える傾向はあったが、いずれも本人は「精神的要因はない」という人ばかりだった。
  自分で精神科に来た人もいるが、やはり「精神科」を非常にいやがる人が多く、30%(46人)は1―2回で受診を“拒否”してしまった。   
 ▽大事な信頼関係
  9%(14人)は予後がよく、3カ月以内に回復。3人に1人に当たる34%(53人)は症状が安定し、共存していけた。一方、14%(22人)は身体症状を訴え続けて苦しみが続き、残る13%(20人)は、よくなったり、悪化したりの変動が続いた。
  実際に苦しんでいる人に対して、磯部さんは「どこからが心の要因かを区別するのは難しいが、身体的原因がどうしても不明な場合、精神科の受診を考えてみては」とアドバイスする。
  目標は「共存」だ。現在、磯部クリニックでは、服薬のほかに、疲労感を訴える人には栄養補給の点滴、痛みやしびれには電気治療を実施している。継続することで徐々に疲労感や痛みが弱まることが多いという。
  磯部さんは「原因が分からないので、こちらでは何ができて、今後どうなる可能性があるのかを十分に話し合いながら治療を進めている」と話している。