海外製小型スピーカー比較試聴 ひとくちに小型スピーカーといっても、価格、方式、仕上げ、さまざまな種類があります。今回は、B&WとJMラボから新製品が発売されたことを期に「ぺア 30万円」クラスの小型スピーカーで、「私が最も良い製品である」と感じる3種類のスピーカーを鳴らし比べて、11人のお客様に評価を仰ぎました。そのアンケート結果を交えて、音質をお伝えしたいと思います。 比較テストに使用するスピーカーを3種類にしたのには理由があります。まず、2種の比較より3種類にすることで、よりおのおのの製品の特徴がクローズアップされることが挙げられます。また、今までの経験から一度に4種を比較するのは印象が曖昧になってしまい、難しいと判断されることなどによります。 では、まず最初に各スピーカーのスペックをご紹介いたしましょう。
音質アンケート結果 当日は、11人のお客様にアンケートにご協力いただくことが出来ましたので、結果を掲示したいと思います。
スピーカーのセッティング方法は、60Cmのスピーカースタンドに下から、TSM / E905 / N805 と積み上げましたので、TSMは十分な高さが取れず、2列目以降のリスナーには音場的な広がりや解像度の点などで、やや不利であったことを考慮していただけると幸いです。
E905の評価が高いのは、音の広がり感、ハーモニーの柔らかさなどが評価されたのだと思います。
N805の評価が高いのは、音の分離感(解像度の高さ)が評価されたのだと思います。
N805の評価が高いのは、低域の押し出し感、弾力感や、高域の切れ味が評価されたのだと思います。
テスト結果に出てくるのは、各スピーカーの基本的な音の再現性(情報量)です。
テスト結果からは、各スピーカーの基本的な音楽表現力(色気)を判断できそうです。
A:音が明確、透明感がある、低音も良く出ている、オーケストラの広がりは少ない。 B:モニター的、カチッとした音。 C:正確な音を出す感じ、といっても冷たさはない。 D:よけいな音がしない、レンジが広い、音楽が楽しめる。どちらかといえばハッキリとした音で聴かせる。ジャンルを問わず聴くためには一番良いと思った。 E:SN比、レンジよし、やや固め、デザインではベスト。 F:音の広がり感がよい、弾力的な低域、特にボーカルは躍動的に聞こえる。 G:「良いスピーカー」という感じがする、管楽器はうるさいと思う。 H:特有の色付けがある感じで、やや金属っぽく硬さが感じられる、クラシックには向かないかも知れない。 I :室内楽の美しさが印象に残る、レンジが広く情報量が多いので、その「厳しさ」が音楽を「楽しむ」という点ではマイナスになることもあると思う。特に高音のきつさは好き嫌いが分かれる、ホリーコールは若々しい感じがした。 J:ジャンルを選ばずに、どれも良かった。しかしオーケストラの低域にはやはり「小型にしては」の枕詞が入る。 K:高域をきつく感じたが、個人的に聴いていて一番「ドキドキ」した。
A:柔らかい音質、音場豊か、低域が膨らむような気がする。 B:中高音が良く前に出ている、まろやかな音。 C:Sound Pal(現在発売号)で傅氏が「低音が細すぎる」と書いていたが、全くそんな印象はなかった。全く逆で太くたくましい。全体に暖かいというか、少し自分の色に染め上げる気がする。といっても細かいニュアンスも良く出す。広がり感がある。 D:アコースティック楽器やヴォーカルの表現力がすばらしい。感動した!電子楽器や低音楽器はちょっとつらいが、この表現力は「これしかない!」という感じ。 E:レンジ、広がりよし。805より自然。本日のBEST。ダブルウーファーを感じさせない。 F:明瞭感、透明感がある。高域がきれい、深みと重さのある低域。 G:805と比べ「良いスピーカー」という点では劣る。しかし、時々「ハッ」とすることがある。音楽を聴くにはこの方かなと思う。 H:再現性は3種の中で一番良さそう。ただ、バック・グラウンドの響きに違和感を覚える。 I :中域のエネルギー感が印象的。音楽をうまく聴かせるスピーカーだと思う。大人のホリー・コール。 J:管楽器の音色が少し不自然ぽい感じ。響きが過剰気味で少しうるさく感じる。 K:高域は少し物足りないが、すごく心地よかった。
A:音が硬質に感じることがある。 B:中低音が良く出ている。さわやか。 C:まとまりはある。奥行きが出る D:非常に素直な音のスピーカーだ。僕にはおとなしくて好みに合わないが、BGMとして静かに楽しむには一番良いかも知れない。 E:他の2種に比べ特筆すべきものがない。セッティング位置が不利。 F:シンプルで明快な響き。ヴォーカルが多少ハスキーに聞こえた。 G:平均点が高く聞きやすいが、他に良さがわからなかった。 H:大人し目で、全体的に小振りな印象。好みで行くとこれかな?まとまりバランスは3種の中では一番良さそう。 I :少し、低く、暗い感じ。高域がきつくないので最も穏やかに感じる。(ベースがもっとバシバシ来ると思ったが)ホリー・コールは「良い意味」で下品。 J:音が軽い。 K:「美しい」音と感じたが、紙一枚を通したようで少し物足りない。
ノーチラス805 仕上げが美しい。曲面を多用したキャビネットは歩留まりが悪く非常に作りにくく、コストがかかるのを承知でここまでこだわっているのは、「純粋なスタジオモニター」を意識してではなく、「アメリカや日本のハイエンドユーザーに対する配慮」だと感じる。価格が安いのも魅力だ。 音質的には、「従来のB&Wの欠点である・硬さ・つまらなさ」をかなり解消してきていると共に、「周波数特性の良さ=音に不要な響きを乗せない」という長所はさらに伸ばしてきている。 良い意味で「まじめ」な音作りだが、やはり「純粋なスタジオモニター」という点では「PMCに一歩劣る」と感じる。しかし、逆に「純粋なスタジオモニターにはない音作り」はより音楽を楽しく聴かせてくれるはずなので、市場には好ましく受け入れられると思う。 バスレフのポート(開口部)を前面に設けているのは、少しでも低域を出したいという設計意図だが、「量と質」のどちらを重んじるかによって、その評価が分かれる時があると思う。B&Wがさすがだと思うのは、「バスレフポートの低音に遅れや膨らみを感じさせない」ところだが、「感じさせない」のと「ない」のとはやはり違う。もちろん、私が厳しく評価しても「低音部の嘘(バスレフの音)」は十分に許容範囲にある。 エレクトラ905 昨年の輸入ショウで個人的に最も気に入ったスピーカーで、なによりも音楽のニュアンスの表現に優れる。フランス人が作ったと感じさせる音作りは、フランス語と日本語が使用する「言語の周波数帯域」が近いこともあって、「楽音や言葉を聞き分けるとき=音楽のニュアンスを感じるとき」に「非常に自然で濃厚さ」を感じる。しかし、やはり「日本語」にはない「ある種の癖」を感じる。それが気になるか否かによって、このスピーカーの評価は分かれる場合があるだろう。 私が「すごい」と思ったのは、ダブルウーファーでありがちな「低音の濁りやダブリ」が一切「ない」ことだ。サイズを感じさせない「豊かな低音」と「リッチな音の広がり」はすばらしいとさえ思う。また、高域に用いられている「逆ドーム」のツィーターは「音の立ち上がりが速く、鋭い」ので「音楽の躍動感」を余すところなく再現する。アンケートに「ハッとした」・「感動した」というコメントが多く見受けられたのはそのせいだ。 仕上げもお洒落で、市販品では個人的には最もおすすめしたいスピーカーだ。 ザ・スモール・マーリン 今回テストした中では唯一の「密閉型」であり、「ソフト・ドームツィーター」を搭載しているなど、少なからず他の機種とは異なる特徴を持っている。 「密閉型」故の、「ダンピングが効いて無駄な音がしない低音」はこのスピーカーにしかない魅力だと思う。また、「ハード・ドームツィーターにありがちな高域の硬さ(強調感)」も一切見受けられないはずだ。コメントの多くに「素直だ(無個性)」という言葉が多かったのはそのためであろう。 一風変わった仕上げ、まじめな音作り、そういう評価が多かったが、今回うまくその長所を引き出せるセッティングを施せなかったのが残念である。しかし、他の2種と比べて「音の定位の精密さ」は特筆すべきものがあり、よく聴く音楽のジャンルが「アメリカもの」なら迷わずマーリンをおすすめする。アメリカから発信される、「POPS」や「JAZZ」、特に最新録音盤の魅力を引き出すためにはこのスピーカーの持つ、「正確さ」・「精密さ」がなくてはならないと思えるはずだ。
A:毎回楽しみにしています。このような機会を与えていただけるのは本当に幸せです。今後も続けて下さい。 B:初めて参加させていただきありがとうございました。 C:なかなか小型スピーカーの試聴会がないのでとてもよかった。ウィーン・アコースティック、タンノイ・ターンベリー、インフィニティー・デルタ70のセミナーもやって下さい。 D:3つともいい音ですねェ。どれでも音楽が楽しめました。音楽解説が今回も良かった。E:CD−1.SPEC99は驚きの音質。内容が濃かった。 G:本日は有意義な時間を過ごさせて頂いてありがとうございました。点数評価は難しいです。同じ8点でも内容は全然違います。 H:自分としては、エレクトラが3種の中では評価が高いが強調されている部分があるように感じて、不自然な印象がある。 I :とてもおもしろかったです。また参加したいです。 J:室内楽は演奏の良さより、録音の悪さが気になった。 K:AIRBOW /LIMIT2がなかったのが少し残念でした。いろいろな音が聞けて参考になりました。
当日はCDプレーヤーに、4月発売のAIRBOW / CD−1.spec99を使用しました。spec99と従来のCD−1の違いは、DAC部の電源を独立回路として新設計したところにあります。デジタルをアナログに変換する部位であるDAC部には強力な安定化電源が必要ですが、spec99に使用されている電源は、ほぼ完全なDC(直流)とお考え下さい。いわば、超大型で強力なバッテリーを使ってDACを独立駆動しているとご想像下さい。これによって、CD−1は低域が大幅に増強されクラスを遙かに越えた「低域の再現能力」を持つCDプレーヤーとなりました。当然「高域の繊細さ、静けさ、立ち上がりの早さ」なども大幅に改善されており、もはや「一体型CDプレーヤーではこれ以上の高音質は望み得ない」レベルに到達したと自負しています。(発売は99年6月14日・販売価格は30万以下) しかし、自分がいくら良いと思っても「多くの人の評価が得られなければ」意味はありません。そこで、あえて「現在最高といわれているデジタル再生機・ESOTERIC /P−0とdcs/エルガー(合計価格¥340万)」とCD−1.spec99を比較し、評価を頂くことにしました。(その後も更に地道な改良を続けた結果、発売されるCD−1.spec99はこの時に使用したプロトタイプを上回る高音質を実現しています) A:P−0 /エルガーと比べると、音に厚みが少ないような気がするが安心して聴ける音質だ。自宅で聞くならCD−1か。アタック音はCD−1がかなり良い。B:CD−1.spec99は、低音から高音までの音の広がりがすばらしい。 C:P−0 /エルガーは「ON」な感じ、CD−1は少し引いた感じで(P−0/エルガーに比べて)柔軟性がある。D:バイオリンを聴いた感じではP−0 /エルガーと大差がない感じ、音の落ち着き自然さではP−0/エルガーを上回っているかも知れない。E:最高のCDプレーヤーだ。P−0 /エルガーは不要。DAC−1.spec99との音の違いが気になる。F:P−0 /エルガーに比べて、音の輪郭がハッキリしている。G:私の耳にはどちらもレベルが高いので、比較が難しいが,CD−1.spec99の方が音に、コクとまろやかさを感じる。 H:CD−1.spec99は演奏者のミルシュテインの音がしている。P−0 /エルガーは少しおかしい。ミルシュテインというよりは、スターンの演奏のように聞こえる。I :P−0 /エルガーよりも、音になめらかさ自然さがあり、長時間聴いていられる感じ。CPはAIRBOWが圧倒的に高い。25万なら目茶嬉しい。K:P−0 /エルガーと比べて、CD−1.spec99は繊細な気がした。私が、これらのお客様の評価を読ませていただいて感じたのは、「全員がP−0/エルガーとCD−1.spec99を同列で評価」して下さっていると感じたところにあります。 つまり世界最高だといわれる340万のCDと、AIRBOWの30万のCDプレーヤーは同じレベルで比較がなされたという事実です。 本当かどうかは、一度、あなた御自身のお耳でお確かめ頂けると嬉しく思います。 |
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