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圧倒的な熱演がまた帰ってきた!
反ファシズムの偉大な指揮者・トスカニーニのCDが再発売中!
 クラシック音楽が好きな人なら、一度は名前を聞いたことがあるのではないでしょうか?20世紀最大の指揮者の一人・アルトゥーロ・トスカニーニ(1867年―1957年)。この偉大なマエストロ・トスカニー二が残した演奏録音のCDが、先月再発売されました。「トスカニーニ・ベスト・セレクション」シリーズ(全30セット)と「トスカニーニ・エッセンシャル・コレクション」シリーズ(全20セット)の計50セットです(一セット1000〜2000円ととても安価)。これらにはトスカニーニ指揮の正規録音として残された主要な楽曲が収録されています。没後52年たった21世紀の今日も、彼の残した演奏芸術が聴かれ続けることを喜ぶとともに、音楽好きの方には、この機会にぜひ一枚でもいいから手にとって聴いてほしいと思います。50年以上たった今日でも、生きいきとした圧倒的な熱演が私たちに迫ってきます。
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 トスカニーニは、20世紀前半の約50年余に渡り、オペラ指揮者、オーケストラ指揮者としてクラシック界の最高峰に上り詰め、「指揮者の中の王」と言われるほど名声をほしいままにした大指揮者でした。
 彼がもう一つ偉大だったのは、母国イタリアのファシスト・ムッソリーニ政権、ドイツのナチス・ヒトラー政権を嫌い、自由と平和のために「指揮棒で戦いつづけた」反ファシズムの芸術家でもあったことです。音楽がファシズムの支配の道具にされるのを拒否して、名誉ある地位を投げ捨てることもためらいませんでした。イタリアではオペラの殿堂・ミラノスカラ座の首席指揮者として活躍するも独裁者ムッソリーニと対立して辞任。バイロイト音楽祭やザルツブルク音楽祭などの大音楽祭でも活躍しましたが、これもナチスドイツの支配が及ぶと、ナチの下では演奏しないとボイコット。ファシズムへの抗議の意志を世界に向けて示し続けたのです。
 第二次大戦中はアメリカに亡命、年齢もすでに60歳を超えていましたが、米NBC放送が彼のために特別に組織したオーケストラ、NBC交響楽団の指揮者として精力的に演奏活動。イタリアをはじめ世界がファシズムの恐怖から解放されることを願い、その演奏を通じて、ファシズムと闘う人々を励まし、支援し続けたのです。
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 トスカニーニの指揮する演奏の魅力は、何といってもその音楽にみなぎっている生き生きとした推進力、熱い躍動感です。それは聴き手の気持ちを激しく揺さぶり、熱く高揚させずにはおきません。彼の主要レパートリーであるベートーヴェン、ブラームス、ヴェルディ、ワーグナーを始め、ちょっと聴いたことのあるクラシックの定番も、トスカニーニにかかると、その楽曲はまるで新しい命を吹き込まれたかのようによみがえり、聴き手の心にグイグイ迫ってきて圧倒するのです。私などは同じ楽曲でも、他の指揮者の指揮するものがマイルドすぎて、トスカニーニの振った同じ曲を聴き直してしまいます。
 推薦盤を絞るのは難しいですが、よく知られている楽曲では、ベートーヴェン交響曲第5番「運命」(39年録音盤)、ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」あたりから聴いてみてはどうでしょうか。
 ちなみに私が最も好きなのはベートーヴェン交響曲3番「英雄(エロイカ)」(39年録音盤)。19世紀の独裁者・ナポレオンに反抗したベートーヴェンと、20世記の独裁者ムッソリーニとヒトラーに抵抗したトスカニーニ。この二人の不屈の精神が一体となったかのように、激しく突き進む「エロイカ」です。この録音を超える感動をもたらしてくれる演奏には、幸か不幸か今だに出会えないほどなのです。(衣)


(2009年2月4日 組合ニュース5101号より
(2009年2月19日)

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