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シリーズ:医療・社会保障「崩壊」をどうするか
シリーズその2 
餓死者が年間50〜90人、その背景は?
「日本で餓死が起きている」

      (クローズアップ現代 2007年10月11日放映)
 日本で餓死者が年間50〜90人いるという。5日に1人の割合で餓死者が発生していることになる。その数は95年から激増しているそうだ。みなさんはこの驚くべき事実をご存知だろうか?この中には生活保護が必要な人が保護を受けられない、生保打ち切りや福祉保護から排除された人が多く含まれている。
 
北九州市の男性の餓死をもたらした「自立マニュアル」の存在

ニュースでも大きく取り上げられた今年6月の北九州市で52歳の男性が餓死した件。発見は一ヶ月たっており、彼の日記には「人間食ってなくてももう10日間生きています 米食いたい」「はらへった オニギリ食いたい 25日米くってない」と悲痛な叫びがつづられていた。彼は病気で働けなくなり、月8万の生保を受けていたが、今年4月就労可能を理由に、生保を辞退させられた。その後野草を食べ、飢えをしのいでいたという。近所の人は「歯は抜けて、きつそうな歩き方をしていた」という。この男性の生保辞退〜餓死に対し、市は「男性への対応には全く問題はなかった」「彼は自立できた模範ケース」と開き直っている。しかし匿名の市職員は言う。「市の作ったマニュアルは、保護を減らすためにどうするかという発想から出ている。マニュアル通りやると絶対犠牲者が出ると思っていた。犠牲者は絶えないだろう」と。実際そうなってしまったのである。

北九州の「自立マニュアル」が全国のモデルになっている

 「自立させるマニュアル」というが、対象者となると好むと好まざるとにかかわらず、医師の診断で働けると判断されれば、就労指導を繰り返され、何のフォローもない「自立」を強いられ、保護の打ち切りもしくは辞退しか選択できないようになっている。彼の場合も医師の診断で病気はあるが、軽い労働はできる≠ニなった。市は働くよう指導し、彼はハローワークに通うが仕事に就くことはなかった。彼は精神的不安になっていて心のサポートが必要なうつ状態であった。それなのに市は働く指導を繰り返すので、彼は「自立して頑張ってみます」と言ってしまう。その3ヶ月後の餓死だった。
 市は収入があるのに生保を受けている不正受給が蔓延しているという理由で厚生省の指導を受けた。厚生省は80年以降、生保受給抑制のため、申請しても受けにくくする“水際作戦”を行ってきた。これにより市の生活保護率はピーク時の5分の1に減少した。驚くことに、この抑制効果を高く評価した国は、生活困窮者を生活保護から排除し、餓死に至らしめたマニュアルを北九州から全国に拡大しているというのだ。たしかに大阪府の自治体でも就労可能を理由に申請を辞退させるケースが問題化しているが、それには厚生労働省の方針があったのだ。
 
「自立」のぎまんを越えて、憲法25条生存権を守らねばならない

働いても働いても生保水準以下の年収しかない勤労者=ワーキングプアが400万世帯、1千万人を越えたという。しかし政府は無策で、生保受給者にさえ、受給額の削減を行おうとしている。政府・厚生労働省の唱える「自立」とは、「障害者自立支援法」でもそうだが、弱者の公的保障からの切捨てである。私たちは今こそ憲法25条の生存権を守ることを真剣に考える時代になっている。(た)
(組合ニュース第5061号 2007年12月21日発行より)
シリーズ:医療・社会保障「崩壊」をどうするか
 新自由主義構造改革の推進のもとで医療や介護、福祉制度の公的保障が縮小の一途をたどり、また「ワーキングプア」層の拡大によって、提供する側・受ける側両方からの医療・社会保障「崩壊」の危機が深まる一方です。それらの現実を取り上げたTVドキュメンタリーや本などを紹介し、その実態を伝え、警鐘を鳴らし、私たちがどうすべきか考えたいと思います。

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