グスターボ・ドゥダメル
トップページへ戻る




文化のページ           

音楽が人生を、社会を変える! クラシック界の新風・熱風 
 〜世界中から注目の、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ

 昨年12月、ベネズエラから音楽ファン待望のシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ(以下SBYOV)が初来日し、東京・広島でコンサートを行いました。音楽監督は同国出身の27歳の俊英グスターボ・ドゥダメル。世界中で引っ張りダコの若手指揮者です。このコンサートの模様が、先月20日にNHK教育TV「芸術劇場」で放映されたので、この機会に紹介します。
 このオーケストラの一番の魅力はこれまで見たこともない、型破りでとても楽しいコンサートです。私がこのオーケストラに最初に触れたのは、ユーチューブの映像。そこでは「マンボ」(バーンスタイン)や「マランボ」(ヒナステラ)の演奏が動画で見れます。これらはコンサートのアンコールのシーンなのですが、指揮者ドゥダメルはじめオケ団員がみんな、ベネズエラ国旗をあしらったジャンパーを着て演奏、途中で楽器をくるくると回しだしたり、立ち上がり、踊りながら(?)演奏しはじめ、まさに舞台上が「フイエスタ」(お祭り)状態。クラシック音楽の演奏会では見たこともない弾けぶりに、あっけにとられました。と同時に、なんて楽しそうに生き生きと演奏しているんだ、と思ったのです。
 もちろん、楽しいアンコール演奏だけが魅力なのではありません。クラシックの定番も、世界超一流のオケに引けを取らない素晴らしい演奏です。NHKで放映されたコンサートでは、チャイコフスキーの交響曲第5番をメインで演奏。第4楽章までくると全身鳥肌もので、息を飲むほど引き込まれる演奏でした。そして、何よりドゥダメルと楽団員が、演奏を心から楽しみながら、一体となって音楽を奏でているのが感動的でした。この感動は、SBYOVの成り立ちを知るとさらに深いものに…
 「奇跡のオーケストラ」と言われるSBYOV。南米ベネズエラに世界中が注視するオーケストラや指揮者が育ったのはなぜか。その秘密は、ベネズエラの国家プロジェクトとして発展した音楽教育システム「エル・システマ」にあります。エル・システマは無料で音楽の基礎知識や楽器の演奏技術を教え、オーケストラ合奏や合唱に参加する機会を与える音楽・オーケストラ教室。現在ベネズエラの青少年20万人以上が参加、これは世界に類をみない規模の音楽教室。ベネズエラの子どもたちは、小学校に入る前から無償で楽器に親しみ、交響曲を合奏する機会に恵まれているのです。このシステムは1975年に開始され、国際的に通用するベネズエラ人によるオーケストラをつくるとともに、子どもたちを貧困や犯罪から救う社会運動として発展したのです。
 オーケストラのメンバーは貧困層出身がほとんどだそうで、過去に犯罪に手を染めた若者もいるそうです。しかし、彼らはエルシステマのおかげで音楽と出会い、自らの生きる道を切り開き、音楽活動に生活のすべてと将来の夢を託すことに成功しました。SBYOVやドゥダメルの活躍は、30年がかりの音楽を通じた社会政策の成果なのです。音楽が人生を救う―彼らの活躍はそれを体現していると言えましょう。
 エル・システマは、「21世紀の新しい社会主義」の建設を目指すチャベス政権の格差・貧困をなくす社会政策と連携して、さらに規模を拡大しつつあり、これからも世界に通用する演奏家を次々と生み出すでしょう。これは、音楽が一人一人の人生を救うとともに、貧困をなくし社会を救う壮大な挑戦でもあります。
 クラシック音楽をしっかり聴かせて、しかもアンコールは楽しく、一緒に踊りだしたくなる、そんなSBYOVの演奏です。

音楽で貧困を救うベネズエラ社会政策を知るための一冊
 
「エル・システマ」山田真一著









(2009年3月4日発行 組合ニュース5103号より)
(2009年3月8日)

阪南中央病院労働組合 〒580-0023 大阪府松原市南新町3-3-28 TEL/FAX 072-331-1919
Copyright© 2007 Hannan-Chuuou-Hospital Worker's Union