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格差社会、ワーキングプアの現実を映す鏡としてよみがえる
小林多喜二「蟹工船」


 昨年火がついた「蟹工船」ブーム。1929年に発表されたこの小説に描かれた「蟹工船」の悲惨な労働現場とそれに抵抗して立ち向かうために団結していく労働者たちの姿が、80年の年月を超えて、非正規労働者の若者の心をつかんで、大ブームとなっています。
 「おい、地獄さ行ぐんだで!」の叫びから始まる小説「蟹工船」。オホーツク海で操業する蟹工船「博光丸」に全国各地から集まってきた出稼ぎ労働者たちが乗り込むところから始まります。この蟹工船を所有する会社は、海軍と結託してソ連領海に侵入、貧困層出身の労働者たちに奴隷のような過酷な労働を強い、暴利をむさぼっていました。特に、現場監督浅川の暴力は目に余るものがありました。労働者たちは、非人間的な労働や暴力に我慢できなくなり、団結してストライキに立ち上がっていきます…。
 この作品は、いわゆる「プロレタリア文学」の最高傑作として海外でも高い評価を受けました。しかし、作者の小林多喜二は、共産党支援者(のち党員)として治安維持法や不敬罪で特高警察に捕まり、拷問を受け、監獄に送られました。そして「蟹工船」発表から4年後の1933年2月20日に、またも特高警察につかまり、東京築地警察署で3時間以上の拷問を受け、殺されてしまいました。29歳でした。
 多喜二の死後75年、「蟹工船」は現代の格差社会、ワーキングプアの現実を映す鏡としてよみがえりました。そして私たちは、多喜二の文学の主人公たちから、貧困や戦争に反対し、労働者のために闘いに立ち上がる人々の、強い意志や勇気、そして希望を見出すことができると思います。
 2月20日は折りしも多喜二の命日。この機会に映画や本、まんがなどを通じて「蟹工船」に触れてみてください。



映画「蟹工船」       マンガ「蟹工船」

(2009年2月4日発行 組合ニュース5101号より)


2月20日に映画「蟹工船」上映会を開催

 2月20日、作家・小林多喜二が特高警察に拷問で虐殺されてから76年目のこの日に、昨年ブームとなった小説「蟹工船」の映画(1953年製作)の上映会を行いました。今から50年以上前の映画なので、少々セリフも聞きにくく、ストーリー展開も小説と全く同じというわけではありませんでしたが、「蟹工船」の大体のあらすじや具体的なイメージを持つにはいい映画だったと思います。鑑賞後、「これが今とまるで同じと言うけれどピンとこない」「こういう実態が今と同じと共感する今の状況はある意味こわい」「『蟹工船』が今なぜブームになのか、考えさせられた」との感想が出されました。 この大不況の中でますます増えていくであろう「ワーキングプア」層の生活と労働の厳しい実態を知ることを通じて、「蟹工船」がなぜブームになるのかより理解できるのではないか、と意見交換しました。

(2009年3月4日発行 組合ニュース5103号より)
(2009年2月20日)

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