被曝線量・健康実態調査を始めるにあたって

「阪南中央病院 東海臨界被曝線量・健康実態調査委員会」代表
青木 茂 (歯科医師)

 昨年2月に行われた東北大学の長谷川公一さんらによるJCO臨界事故の影響調査で、放射線による心身の異常を訴える人が予想以上に多いことが報告されました。また将来の放射線の影響に対する不安感は極めて強いものでした。これの応えて行くには被曝した方たちの定期的な健康診査と追跡調査を行政が責任を持って実施していく必要があります。
 それにも関わらず、科学技術庁及び茨城県の「健康管理委員会」は放射線による健康への影響はあり得ないとする前提の上に立って、「健康相談」「健康診断」と称するものを実施しました。しかしそこには、客観的に被曝した方の実態を調査し、把握しようとする姿勢が全く見られず、周辺住民の不安をなだめるための当分の間、恩恵的に実施するというものでした。
 私たちは昨年7月に「臨界事故被害者の会」の協力の下に、被曝線量の推定と健康実態調査を実施しました。70名という限られた方を対象とした面接調査ではありましたが、科技庁の被曝線量の過小評価と健康への影響を無視する姿勢の誤りが明らかになりました。被曝線量の高い人ほど健康障害は強く出ています。
 被害の実態を少しでも明らかにすることにより、科技庁のごまかしを暴露し、被害者の要求である「健康管理の制度的な保障、被曝手帳の発行」と「行政の責任による線量調査のやり直しと健康への影響の追跡調査」の継続を実現するために役立ちうると考えています。
 火災爆発事故を起こして停止していた核燃料サイクル機構の再処理工場の運転再開やMOXというプルトニウム燃料を軽水炉で燃やすプルサーマルなど、原子力推進政策は次々と進められています。
 脱原発へと進みつつある世界の流れに逆らって進められている日本の原子力推進は、次々と犠牲者を生み出しています。原発労働者の被曝、さらに被曝は周辺住民にも広がりつつあります。
 私たちは医療従事者として被曝の問題は見過ごすことは出来ません。被害を受けた方々と協力して今後も活動に取り組んでいきたいと考えています。



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