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[記者が行く]阪南中央病院存続の危機 府の財政援助継続求め署名運動 

 ◇守れ「医の理想」 

 ◆累積赤字88億円、府は補助金打ち切り検討

 年間の外来患者30万人、延べ入院患者10万人を受け入れ、「医の理想」を追求してきた阪南中央病院(松原市南新町)が存続の危機に立っている。府が累積赤字を抱えた同病院に対し、同和対策事業としての補助金打ち切りを検討しているためだ。同病院は地域医療のほか、水俣病患者、ドメスティックバイオレンス(DV)被害女性、被ばく者らのケアなどで大きな役割を担ってきた。財政援助継続を求める請願署名は、昨年末で約2万5000人を超えた。 【大島秀利】

 ◇地域医療、小児救急、水俣病・DV被害・被ばくのケアで大きな役割

 同病院(312床)は73年、府の同和対策事業の一環で、貧しく衛生状態が悪かった同和地区の医療拠点としてスタート。具体的には(1)差額ベッド代を取らず、重症患者を優先(2)貧しい家族に負担がかからないための手厚い看護(3)利益につながりやすい各種の検査を極力抑制――などに取り組んだ。最近は、同和地区住民の利用は1割未満で、一般の地域病院として大きな役割を果たしてきた。

 また、関西在住の水俣病患者の診察・健康管理を早くから手がけてきた。死者2人が出た茨城県東海村のウラン燃料工場の臨界事故では、医師や看護婦ら約20人が自主活動で被ばく調査に参加。最近は受け入れ先が少ないDV被害者に、精神面などトータルなケアをしてきた実績がある。

 府によると、同和地区も経済状態や環境が改善された。従来の取り組みは、経営的にはマイナス要因となる。しかし、同病院は、もうからないが、必須の小児救急などに対応。地域医療でも欠かせない存在という。

 ◇経営は堅実

 同病院の累積赤字は88億円。だが、中身を検証すると、公的な病院の経営としてはそれほど悪くなかったことが分かる。

 病院によると、設立当初に約束されていた松原市の補助金が、当時の同和事業に対する見解の相違などから継続して出なくなった。この出発点のつまずきから、補助金が少なくなり、赤字として残った側面がある。医業収入に占める一般会計繰入金(補助金)の割合は府内の自治体病院平均で17・3%に対し、阪南中央病院は6・4%と少ない。同規模の自治体病院の単年度医業収支赤字(補助金除く)が平均約10億円に対し、同病院は7億円という。

 ◇リストラ策

 病院側は、04年度までに職員を約2割65人減らし、給与も約1割カットするリストラ策を提示。3年後に単年度黒字にする計画だ。府医務・福祉指導室は「院長らの報酬も低く、放漫経営してきたわけではない。病床の利用率も90%を超えており、はやっている病院の部類」と説明する。

 家庭養護促進協会理事でAPCC(思春期妊娠危機センター)スタッフの岩崎美枝子さんは「10代の妊娠に対し、医師も看護婦もとても丁寧に対応している。地域の診療病院としても誠意が伝わる病院」と補助金継続の署名に賛同する。

 こうした病院を否定することは、公的な病院の存在全体を否定することにつながらないだろうか。すでに病院側は単年度黒字に向けて「身を切る覚悟」を固めた。これからも、阪南中央病院が大阪府が全国に誇れる病院であり続けられるよう行政や関係者の理解を求めたい。

 署名についてはhttp://www2.osk.3web.ne.jp/〜hannanun

   ◇

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