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 アメリカ「超格差社会」を告発、『ルポ貧困大国アメリカ』
  〜教育・医療・戦争まで民営化し、「弱者」を食いものに

           
 (堤未果著 2008年1月 岩波新書)
 
この本は、2008年の1月に発行されたルポである。アメリカで起こっている「超格差社会」の状況をリアルに捉えている本書は、すでに27万部の売り上げとなっている。今回は、その一部をみんなに是非伝えたい。
 サブプライムローンとは、2001年、アメリカで自己破産歴を持つ者やクレジットカードを作れない者、返済負担額が収入の50%以上になるといった信用度が低い貧困層を対象に、最初の2、3年は利子が低いがその期限を過ぎると急激に10〜15%に跳ね上がる住宅ローンのことである。
 金融機関の営業マンの「自分は弱者の味方だ、低所得者の移民にも家を持つ夢を叶える権利がある」「あなた方が国境を越えてやってきたアメリカという国は、不可能を可能にする場所です」「住宅価格は上がり続けますから」という巧みな言葉にだまされ、50万ドル(5,500万円)の融資で家を購入。しかし、月に3,100ドルのローン返済に追われ、生活は一変してほとんど返済のためだけに働くようになってしまう。支払いが苦しい月は利払いだけの返済でも大丈夫と言われていたのが、払いきれない分はそっくり元本に組み入れられ、返済額が雪だるま式に増えていく。2006年以降、住宅価格が下落し、マイホームを持つ夢は崩れ去り、家は失い後には膨大な借金だけが残こる。そして、苦しかった時代よりもさらに底辺に転がり落ち、そこからは二度と這い上がれない。
 アメリカの住宅ブームが勢いを失い始めた時、業者が新たに目を付けたターゲットは国内に増え続ける不法移民と低所得層だった。英語の出来ない移民は低所得者層の白人に比べても利率は3割から4割高く設定するという巧妙さである。それがサブプライムローンである。2007年1月〜6月までの半年間で差し押さえられた物件数は全米で約57万3400件、前年より58%も増加。サブプライム危機が表面化した。
 「サブプライムローン問題」は、単なる金融の話ではなく、過剰な市場原理が経済的「弱者」を食いものにした「貧困ビジネス」の一つだ。2005年のデータによると、国内でアフリカ系アメリカ人の55%、ヒスパニック系の46%がサブプライムローンを組んでいる。「時代が上昇気流の時はいいが、一度のその流れが変わって破綻した時に一番先に影響を受けるのはリスクに対するセイフティネットのない低所得層の人々だ。その結果、彼らは夢だけでなく人生も壊され、人間としての最低限の生活をすることすらできなくなってしまった。」
 アメリカの国内で貧しいために大学に行きたくても行けない、卒業しても学資ローンの返済に圧迫される若者たち、健康保険が無いために医者にかかれない人々、失業者、多重債務者、暴走した市場原理に引きずり込まれ、人間らしく生きる為の生存権を奪われた挙げ句、使い捨てにされる人々は増える一方。なんて酷い社会なのだろうか?
 以上は、この本のプロローグに書かれていたことです。今年秋からの金融危機で、状況はさらに悪化していることでしょう。機会があれば、是非、本の内容の続きを紹介したいと思います。(玉)
(2009年1月13日)

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