一回目「上告を棄却する」(溝口訴訟)、二回目「原審を破棄し、差し戻す」(Fさん訴訟)。傍聴席は「よし!」と拍手。4月16日、一日に二回続けて勝利判決が出された水俣病認定訴訟の最高裁判決を傍聴しました。
最高裁判所は、水俣病認定を求める二つの訴訟(熊本の「溝口さん訴訟」と大阪の「Fさん訴訟」)のいずれも熊本県(背後に環境省)の主張を退け、患者側の勝利の判決を言い渡しました。「溝口さん訴訟」は福岡高裁の勝訴が確定。「Fさん訴訟」は、大阪高裁の敗訴判決を取り消し、高裁へ審理差し戻しです。
患者認定の根本的な見直しを迫る
判決では、「患者切捨て」と批判されてきた最大の争点「77年(52年)判断条件」(=2つ以上の症状の組み合わせが認定の条件)については「多くの申請に ついて、迅速かつ適切に判断するための基準として定めたという限度で合理性を有する」と、全否定はしませんでした。が、「77年基準が定める症状が認められない場合でも、経験則に照らして諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、水俣病と認定する余地を排除するものとはいえない」と断言。「77年判断条件」に適合するかどうかだけで決めるべきでないとして、「77年判断条件」を盾に、多数の患者を排除してきた認定行政を実質的に批判、これまでの認定のあり方に根本から見直しを迫っています。
この勝利には阪南中央病院も貢献
阪南中央病院は35年の間、関西に住む水俣病患者さんの診療や裁判支援を続け、2004年の「チッソ水俣病関西訴訟」以来9年ぶり、2度目の最高裁での勝利に貢献できました。この勝利を、職員のみなさんとともに喜びたいと思います。
「判断基準は見直さない」と居直る環境省
判決後、原告と支援者は報告集会を行い、午後9時から環境省との交渉に臨みました。環境省の担当者は、溝口さんの「まずは謝って欲しい」という思いを受け止めず「ご苦労はお察しします」とまるで当事者意識のない不誠実な対応。判決について「一読したが判断条件が否定されたわけでない」と、判決を正面から受け止めようとしませんでした。その後、石原環境大臣は判決を全く無視はできないと考えたのか「判断基準は見直さないが認定の運用の見直しは行う」と発言。
Fさん訴訟は、大阪高裁で続きます。環境省は今回の判決を受けてもなお「判断基準の見直しはしない」と居直っていますが、判決を真摯にうけとめ、根本的に見直すよう、運動を続けていきたいと思います。
(組合ニュース5207号 2013年4月23日より )
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