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「CMCC」の働きの展望
CMMC理事・久我山教会牧師

尾 崎 マリ子

 昨年3月中旬、まだ雪に覆われている札幌を訪ねました。それは、北海道の「臨床牧会の集い」にかかわっておられる牧師から、公の形ではなく友人として気楽にその集いの学習会に出席し、CMCCの活動について話してほしいという依頼を受けてのことでした。

 定例の学習会と公開の学習会があり、そこでCMCCの成り立ちと活動の特殊性、活動の実際について、二回にわたって話す機会を与えられました。公開学習会につきましては広範囲の人々に、すでに「心病む人々の友となろう―CMCCの活動をとおして」という案内が配られており、会場の札幌北光教会には50人近い人々が各地から集まっておられました。話の後、質問が矢継ぎ早に出て時間が超過してもなかなか立てないほどの聴衆の熱心さに驚いてしまいました。特に病む人を家族に持つ方々の質問は切実でした。「わたしたちがその会を利用させていただくにはどうすればよいのか」「そのような会を札幌にも創ってほしい」「大阪にも話に来てほしい」と次々に訴えられました。わたしはこの会を通してCMCCの働きが、この時代に、この社会の中で、いかに多くの人々に必要とされているかということを痛切に感じました。

 ところで、厚生白書によりますと、精神障害者の数は約204万人〔1999年調〕、自殺者の数は29,984人(内、子どもを含めた未成年者547人)〔2000調〕、身近な人の自殺行動によって心に深い傷を負う人は、年間100万人にのぼるといわれます。これらは表面に表れたた数であって、その水面下にはさらに多くの方々が病んでおられることでしょう。

 このような状態に至らないまでも、今日のような不安定な社会の中で、生きるための心の拠り所を失い、孤独の淵で心病む人々が年ごとに増えていることは、CMCCの相談件数が年々増加することからも明らかです。 心の病は今や特別なタイプの人たちの問題ではなく、家庭から職場まで拡がり、社会全体の大きな問題となっています。そこにCMCCの存在の大切さと、CMCCが今なすべき社会的責任の重さがあります。

 昨年CMCCが特定非営利活動法人(NPO)として認証を受けました。そのことは確かにCMCCが公に認められた団体として、外部から財政的な支援を受けやすくなり、活動の財政的基盤を強化していけるという利点があります。同時に、社会のニーズに応えるという責任がいっそう強く求められています。

 対応するひとりひとりのユーザーと真剣に向かい合うことの大切さはいうまでもありませんが、今やこの運動を一つのグループだけのものに止めておくのではなく、更に拡げて行くことが急務ではないかと思うのです。

 CMCCの理念には「CMCCは、主イエス・キリストの癒しの業に仕え、……ボランティア活動をとおして、メンタル・ケアの業に奉仕することを目的とする。」とあります。これは、CMCCの働きの根拠を明確に表しています。イエスは多くの病人を癒されました。(マタイ8:16−17、マルコ2:7)当時、病は罪の結果とされていた社会の中で、その癒しは罪のゆるしの行為でありました。主イエスはその業を通して、ご自分の内なる神の権威を明らかにされました。そこで、わたしたちが「キリストの癒しの業に仕える」ということは、わたしたちがイエスに代わって癒しの業をするのではありません。わたしたち罪赦されたものが、その感謝と喜びをもって、神の権威に従う行為であります。どのような奉仕の業も、わたしたちの誉れのためであってはなりません。CMCCの奉仕の業は、もっぱら、イエス・キリストその方を証することを目的としています。

 その権威ある主が、人間のすべての重荷を担って十字架に死なれて、復活された後、弟子たちに命じられました。「全世界に行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えなさい。」(マルコ 16:15)これは主イエスが私たちにお与えになった使命の最終的な目標であります。キリスト者の集まりであるCMCCのひとりひとりは、この使命を受け継いでいます。弟子たちは、主のお言葉どおり出かけて行って、至るところで喜びに満たされて福音の証を続けました。罪赦されて、この命令を聞いたわたしたちも目を高く上げましょう。広い視野に立って、全国各地で援助を求めておられる心病む人々のことをも含めて物事を考えましょう。CMCCの業を通して、今何が出来るかということに心を砕きたいと思います。 

 喜ばしいことに東京だけでなく、横浜地区でも養成講座を開くための計画がされています。訓練されたCMFが地域で心病む方々の要請に応えられるように、準備をしています。また、長い準備期間を経て、昨年9月三重CMCCが三重県津市に開設されました。新しくCMCCが開設されるためには、現実にはそれなりの資金が必要です。東京CMCCも11年前、有志の尊い献金によって発足に至り、今も支えられています。医療や福祉関係のネットワークだけでなく、資金面においても互いに支え合い、東京本部を中心として、更に新しい地域にCMCCの輪が広がっていくことを願います。 

 パウロは、コロサイの信徒への手紙の中で次のように言っています。
「あなたがたが聞いた福音の希望から離れてはなりません。この福音は、世界中至るところの人々に宣べ伝えられており、わたしパウロは、それに仕える者とされました。」(コロサイ1:23)

 福音の希望とは決して抽象的な希望ではありません。混乱した状況の先に現実に一条の光を見る希望です。心病む人々すべてが、立ち上がれる希望です。

 主の癒しによって用いられるキリスト者ひとりひとりにとって、心病む人々の内にも働いておられる主に仕えてゆくことは最大の喜びです。なぜならば、この希望は「決して失望に終わることはない」からです。