第九回全国「藍生」のつどい・羽黒山大会
湯殿山句会主宰選

日時:平成14年6月9日
会場:湯殿山参籠所

 朝六時三十分から山伏の法螺貝を先導に、(明け方まで続けられた深夜句会の参加者も勿論含めて、)全員で出羽三山神社三神合祭殿にて宮司さんから日供祭のお祓いを享け、お神酒を授かる。昨夜の猛烈な雷雨は嘘の様にあがり、囀りの其処ここから聞こえる清々しい山の朝であった。斎館での山菜尽くしの朝食後、すぐにバスに分乗し湯殿山に向かう。
 語る事の出来ないこのご神体にも、また全員がズボンの裾を濡らしながら参詣した。湯殿山神社の赤い大鳥居脇に建つ参籠所にて昼過ぎから二日目の句会が始まった。


主宰ご出句
  綾に綾に奇しく尊と雪解瀧
  残雪やこの世のごとく湯殿山

主宰特選句






 一心の祈り無心の水芭蕉鎌田ゑり
 法螺貝に先導さるる青嵐原田桂子
 雪渓に背中さびしき正座かな松川ふさ
 大瑠璃や深く短かき祈りして大貫瑞子
 蛇は眼を見せずに消ゆる羽黒山石川秀治
  ほととぎす闇に飲まれにゆく男 丹野麻衣子
 立金花形代夢に裏返り橋本薫
 駆けだして石澤香苗雲の峰山口恭徳
 厄年の人形流すほととぎす小野伸子
 三光鳥こいこい恋と言ひ暮し高橋由枝
 語るなかれ見つめるなかれ雲の峰半田真理
 月山の闇をひと声三光鳥今井わこ
 ひと雨に宿坊のこの涼しさよ二階堂光枝
 筒鳥や残されしこと悲しまず安居須美子
 みづの花木喰者の母へかな大矢内生氣
 百人の跣足百人の願ひ上村章子

一重丸句

 形代を濡らす願ふこと少し門奈明子
 雪渓を一寸溶かす法螺の音中村梨枝
 山垣に雲の影あり青田あり荒井栗山
 スノードロップ睫毛にかけるおまじないたかぎちようこ
 筒鳥や暁の木雫南谷水野浩子
 融けきれぬ雪よりも濡れ水芭蕉篠田くみ子
 夜の雷雨池の鏡を打ちにけり
短夜のところどころを寝返りて
木津川珠枝
栗島 弘

並選句

 みちのくの夜明けは早し青田風
打ち揃ひ湯殿詣でも昼の句座
谷井尚子
遠畑勝人
 水芭蕉花すぎてをり祓はるる柴田綾子
 初夏の光陰ふかき御山かな杉崎文子
 短夜を誰か覚めゐる坊泊まり加藤多美子
 句を行じたる斎館の明易し藤平寂信
 青時雨上がりて緋殿日供祭原田昇
 かたしろを浮べつみびと徒歩跣足仲山智子
 紅花の県花いただききバスに入る菅野允弘
 滴りの尊つとき雑魚寝とはなりぬ川崎柊花
 迦具土の神雪形は語らずに木津川珠枝
 仏にはなれぬ身と知る雷のあと篠田くみ子
 滴りの羽黒をたちて湯殿まで後藤洋
 雪しろの風のうぐひす湯殿山
禊して湯殿の山の夏の句座
三山の闇の絖りを青葉木菟
山口都茂女
立川久子
浅見宏子
 三山に雷神渉る雨あらし出井孝子
 赤翡翠夢をやぶりに来たりけり鳥井月清
 月山の東補陀落田水湧く
さくらんぼ老若男女おしゃべりで
御山の大地跣足で踏みにけり
夏掛を甍のごとく雑魚寝して
長からぬ足持て余す短夜や
時鳥庄内刺子藍木綿
湯の沸くや山伏と立つ夏の空

鈴木仁
大谷弘至
小久保顕
仲山智子
川崎柊花
宇高徳子
半田真理


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