第九回 全国「藍生」のつどい・羽黒山大会 

羽黒山句会主宰選 

日時:平成14年6月8日
会場:斎館(羽黒三山神社参籠所)

前夜から宿泊していた者、山形駅近くを朝にバスで発って隋神門から表参道杉並木を登ってきた者、 140数名の連衆それぞれが昼前には句会場となる斎館に集まってきた。天気は晴れ、少し暑さを感じるほどであるが、開けはなれた会場からは時折筒鳥郭公時鳥の鳴き声も聞こえてくる。
定刻一時三十分より、山伏の法螺貝の合図で三句投句三句選の句会が始った。


主宰ご出句  

  筒鳥は母亡き父は時鳥
  ほとほととむささびのくるみなづきや
  すずしさの柱の数と人の数

主宰特選句

 月山の水張りつめる紅の花高橋龍馬
 花うばら女人結界とは何ぞ  
出井孝子
 うすものの紐いっぽんの定まらず       
石澤香苗
  生くるとは五月の闇に積む積木中村祐治
  月山や朴の花より白きとき 
渡部ひとみ
 夏山てふ大きな耳の中にをり
たかぎちようこ
 六月の星飛ぶ蜂子皇子かな
山口都茂女
 死者の句の立ち上がりこよ時鳥
名取里美
 蛇消えてゆく歳月のすきまへと 
今野志津子
 草刈ってありし夜明けの南谷    
柴田綾子
 風紋の大河に寄するほととぎす   
浜崎浜子

一重丸句

 稜線になほ一列の青棚田
われをまつコップの中のさくらんぼ
大矢内生氣
住田千恵
 木立よりひとの昏しよほととぎす
法螺貝の青嶺青嶺へ沁みとほり 
栗島弘
原田桂子
 

月山の雪引き寄する植田かな

森光梅子
 万緑にきて万緑を遊ぶなり後藤洋
 ほうほうと出羽は雲ゆく紅の花森田伊佐子
 一の坂二の坂三の坂暑し山崎巌
 筒鳥のこゑにはじまる行者宿荒巻信子
 月山の一本漬の夏蕨鳥井月清
 万緑を抜け万緑の羽黒山鈴木睦子
 ほととぎす大字手向字手向石澤香苗
 月山を水はしりけり時鳥栗島弘
 明けぎはの出羽の国なる時鳥栗島弘
  

 


並選句

 山中の朴の花なほ照りあへる
山寺の蝶の金色あらあらし
藤井正幸
吉田京子
 

暁やぎこちなく翔ぶ燕の子

原静子
 ほんたうの闇出羽にあり時鳥大貫瑞子
 気が付けば月山に居り雲の峰瀬戸内敬舟
 塔頭の二畝づつの瓜なすび水野浩子
 満行のかほの日焼けて痩せゐたり深津健司
 大瑠璃の風がいざなふ南谷
月山の峰しろじろと朴残花
原えい子
木村燿子
 法螺貝の欠けては継がれ風青し岡村遊
 ありがたきことのかずかず天の河名取里美
 汗の子のつひに泣きだし南谷
出羽郡羽黒山斎館涼し
暁の星残りたり遠青嶺
松川ふさ
古川富士雄
深津健司
 法螺の音に句会はじまる青嶺かな
奥なまりの一人を囲み緑陰に
月山の句座の青水無月のこゑ
長晴子
海野良子
今井わこ
 星飛んで杉の匂ひの南谷上村章子
 雲の峰千年の杉紅の花市川猛
 筒鳥のポポポポ呼べる夕日かな山口都茂女
 旅の荷の杖を拭ひて明易き 鈴木仁
 さくらんぼ背広の人の買うてゆく
尺蠖の旅を重ねてをりにけり
大谷弘至
藤井正幸
 暑き日を来て出羽の山出羽の川後藤洋
 今日の日の心清めて朝涼し
神寂びてあかしょうびんの声に満つ
谷井尚子
柴田綾子
 雪渓に真向かひ草木より静か森田伊佐子
 集ひ合ふ今が大事と紅の花
さくらんぼ酸っぱき口を噤みけり
佐藤道子
田邊閑雲
 噴水をのぼりつめ水こなごなに高田正子
 風の名を問ふて一段づつの夏半田真理


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