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黒田杏子
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日没後にひらく浜木綿。お招きを受けて会社より直行。いそ子奥様にお夕食も賜る。 遠い日の雑草園十句。先生九十三歳の頃。 浜木綿の香に鳴りいづる星の数 夕星や浜木綿と師とひきがへる 浜木綿に桐の庭下駄素手素足 浜木綿に金のまなぶたひきがへる 雑草園主人浜木綿とひきがへる 書屋まで浜木綿の香のあふるゝよ 星のひかりと浜木綿とひきがへる 先生は 4Bの鉛筆句帳星涼し 師弟競詠雑草園浜木綿 矍鑠と浜木綿の香に寿老人 二〇二一年五月十五日 嵯峨野僧伽寂庵 白寿出離者新樹して森深し 紅粉花の初花雑草園主人 ある年の母庭中に罌粟咲かせ ほほづきの初花樺美智子さん 父の植ゑたる二株の青芭蕉 夜の噴井広葉打ち合ふ青芭蕉 日帰りの有給休暇蓮見舟 聖観世音御胸に紅蓮 七月三十一日 ひらきつぐ山気につどふ山百合忌 昇る日に大山蓮華雲岩巌寺 |