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黒田杏子
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桑名に友あればことしも 初競りの白魚のこの紅梅煮 早発ちの寒中遍路椿谷 一月十二日 木之下晃さん もう振り向かぬキャメラマン黒ジャケツ 寒垢離の母昂然と若かりし 大寒の月紫野真珠庵 一月二十八日 東中野 ポレポレ坐 息白く石牟礼道子語り合ふ 重ね着てまた兄のもの母のもの 一月三十日 「星野立子賞」に高田正子さん 受賞者を一人と決めて雪の熄む よきことの多き一月果てんとす 節分の満月なりし昇りきし のぼりくる朝日節分草嬉嬉と 宮尾さん正子さん春立ちにけり 木の芽雨石牟礼道子読み継げば けふよりの春潮の上の蒼き佐渡 佐渡小木の波の残せし櫻貝 誰も拾はぬ櫻貝煌煌と 花を待つ雨音のまた嬉しかり 遍路吟行を重ねし頃をなつかしみ 三句 乗り換へて焼はまぐりのお弁当 観潮船どつと傾く鈴の音 春潮の渦鈴の音の鎮まらず |