aoilogo2014年11月藍生主宰句
加賀の月
黒田杏子

  九月八日 藍生事務所にて有志による月の句座 三句
喜々と日を送りてきしか月今宵
雨ながら月待つひとのいきいきと
雨月またよし江戸銀のすしの桶
  九月十日 真珠庵山田正宗師 還暦の賀 二句
座して独り華甲朗朗月の人
音楽と華甲のひとと月光と
  アビゲール フリードマン「月を待つ 黒田杏子の百句 英訳と鑑賞」上梓。
  ワシントンより見本届く 三句
俳号は不二百菊を奉る
露の玉寂かに汝を敬ひぬ
月を待つ百句一巻月を待つ
  九月二十四日山中温泉行「芭蕉の館」 館長平井義一氏に二句
芭蕉生誕三百七十年加賀の月
山中の野分の月に生きて逢ふ
  「硲 伊之助美術館」にて伊之助訳の岩波文庫に再会。硲 紘一・海部公子夫妻と歓談
加賀の月ゴッホの手紙上中下
  「かよう亭」上口昌徳氏に三句
野分去りゆく森深く湯のあふれ
鰰を焼いてくださる朝ごはん
炉を開く前のしづけさ歌仙の間
  俊和氏不在、橋本薫さんの曽宇窯にて 三句
そのひとの御霊に秋明菊剪りぬ
さめて夢花野をふたり彷徨ふも
北國の秋天の青観世音
  九月二十六日 「比良山荘」 三句
松茸にかんかんと炭熾りきし
鉦叩耳をすませば轡虫
蚯蚓鳴く螻蛄鳴くとただ書きしのみ


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