aoilogo2014年5月藍生主宰句
初櫻
黒田杏子


草木界満月世界春雪界
春雪や旧き手紙の束を解き
春雪の重し深しと山廬守
 引越し片づけ
記憶谷追憶運河牡丹雪
黒髪の高浦銘子雛の間
有美銘子正子文子と雛の間
雛飾る瀬戸内寂聴九十二
らふそくの灯に白加賀と紅千鳥
本郷の木の芽草の芽こころの芽
牡丹の芽五株を置きて去る日なり
花を待つ句座の畳を拭きあげて
花を待つこころとなりて花を待つ
花を待つかなしき手紙読み了へて
引越してきて東京の花を待つ
 三月十九日 われらが出井孝子さんは
蒼穹をゆく引鶴の先頭に
ゆつくりとゆける場所まで春の闇
本郷の弓町の初櫻かな
花の闇人を憶ふといふことを
花びらの山姥の夢よぎりけり
花びらのくる月山の暁のいろ


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