蝶が水わたりて秋となりにけり　　　

手を振つたやうにも見えて虫の闇

関東の芋の不味さを妻の言ふ

暁蜩真綿のいろの月残る　

教育勅語ふとそらんずる端居かな　　

大雨のあと秋草となりにけり　　

狭くるしき部屋を走りぬ走馬灯　

かみしむるごとくに鳴けり法師蝉

紐などを探してをりぬ野分前　　　　

スクーター降りて雲ある月夜かな　　

台風のあしたの暗さ灯しけり

南瓜煮る母の遺せし家に棲み　

八千草にひといろさしてふりやみぬ

帰りつく家の見えたりすがれ虫　　　

戸締りをして灯を点す野分かな　　

露けしやいつもの駅の乗車位置　

レントゲンの心臓おほいなる厄日　

墓洗ふまはり親しき人の中　　　　　

喪へば呑まれてしまふ秋の闇　

終点まで二百十日のバスに乗る　　　

夢の扉に暁ひぐらしの鳴き出づる

盆の月嘆きは等しからざるに

通夜すでに酒となりたるちちろ虫　　

真つ新な杖に菅笠秋遍路　　　

地蔵盆水の近江のきのうけふ　　

栗島　　弘

栗島　　弘

二宮　操一　

深津　健司

田邉　文子

寺澤　慶信

小池　啓子

石田　六甲

秋山　洋一

広本　勝世

河村　晶子

古橋　淑子

浅見　宏子

半田　真理

桑田津海坊

竹内　克也

山崎志夏生

植村やよひ

世古　一穂

増田眞理子

城下　洋二

城下　洋二

北村　照子

依田　百合

原田　桂子