山國にいくたび響く盆花火
七十の夏百日を病まず過ぐ
選句してけふもきのふも遠花火
遠花火去年のごとく選句して
余白なき夏百日の手帳果つ
　

朝顔を褒めて挨拶がはりとす

泣きたい人泣きやんだ人夕花野　　　　

スケッチのマリアの首を曝しけり　

みづうみに果つる花野を住処とす　　

外に出てひとり眺むる盆の月

紙灼けてゐるアトリエの五十年

くまんぜみ悼まねば崩れてしまふ

虫すだく誰の言葉もこばみつつ

かなかなのとどかぬ町に来て了ふ

淋しがるをとこに渡す補虫網

とめどなくこの身抜けゆく虫の声

八月や若き俳人誕生す

桃実る夢窓国師が夢の跡

虫籠のあしたになれば軽くなる

息数へひとり見送る盆の月

比叡山延暦寺より秋の声

一切を捨てゝ花野に狂ふまで

秋の蚊に心やうやく鎮まりぬ

蝉の翅いちまいありぬ雨あがり

中村　昭子

河辺　克美

曲子　治子

出井　孝子

向井ゆたか

曲子　治子

植田　珠實

洲埼　展子

太田　智子

植田　珠實

大澤　玄果

清水　憲一

橋本　榮治

梅田　昌孝

大澤　玄果

橋本　榮治

滝川　直広

中村　昭子

水谷　紀子