logo 藍生
logo AOI

第二十三回 十一月・和歌山の藍生だより

写真・ 文:道本知詩子
Tosiko Domoto:平成8年藍生入会。今年2名の新入会員をえて、美しい郷土を藍生きのくにとして詠んでゆきたいと思います。

 和歌山県は山が多く、北から南へ長い海岸線で囲まれています。今年は、紀伊山地の霊場と参詣道がユネスコの世界遺産に登録されたことでもあり、それを記念して県立博物館で「空海と高野山」の特別展がひらかれています。高野山に伝わる仏像や、曼荼羅、書画の類は質量ともに一見の価値があります。
 和歌山市にある和歌山城は今菊花展の最中です。台風で避難させた鉢をまた並べたりと大変な手間を惜しまず世話をしておられました。それでも菊つくりには、止められない楽しみがあるようです。

久闊の友に手をふる菊花展  知詩子

 美術館、博物館と並ぶ小高い丘は、母校の小学校のあったところです。久しぶりに行ってみて懐かしい思いがしました。いつも仰いだ城は戦後の再建ですが、なかなかいいお城だと誇りに思っています。

 早朝から、片男波でNHK主催の子供の投げ釣り大会があるとのことででかけました。
 子供とは言え大人顔負けのリールをあやつっています。大物はかかりそうにないので帰りましたが、朝の海は気分のよいものでした。
 このあたりは、万葉集に詠まれた名所旧跡が多く、山部赤人の有名な歌

和歌の浦に汐満ちくれば潟をなみ
              芦辺をさして田鶴なきわたる

の歌碑は玉津島神社に犬養孝先生の筆で新しくたてられました。また東の内海に面した所に芭蕉の句碑があります。


ゆく春を和歌の浦にて追ひつきにけり   芭蕉

 加太国民休暇村の一帯は戦時中は要塞地帯で民間人は足を踏み入れることは出来ませんでした。山が海に迫って晴れた日には、四国まで見渡せます。淡路島との間には友が島という小さな島があって、昔は野生の鹿や放し飼いの孔雀がいましたが今はどうでしょうか。東側の岩場は修験道の行場です。あたりは鯛のよく釣れる海面です。休暇村のテラスではアマチュアカメラマンが夕日の撮影に来て,観光客相手に自分の撮影したアルバムを見せています。今頃が太陽の位置が丁度正面になっていいのだそうです。しかしその日は雲がよくなかったようです。彼等はなおも、粘っていました。
 加太の町に入れば、雛流しで有名な淡島神社があります。

末枯れや潮騒ひびく要塞あと         知詩子
鳥わたる島に拾ひし鷹の翅

 まだまだお知らせしたいいい所はたくさんありますが、今は果無山脈をのぞむ熊野古道に惹かれます。皆様も機会があればお越しください。     

果無のはるかをのぞみ柿くらふ

 

*写真はクリックすると拡大表示されます。
写真・文:(c)道本知詩子


目次へ