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第二十回 八月・東京の藍生だより 〜品川・青山墓地・新宿・大久保 24時間〜

写真・文:安達 潔
Adachi Kiyoshi:諸般の事情を経て現在に至る。


品川東口周辺
品川橋
青山墓地・夜中のゴミ捨て場
青山墓地
青山墓地交差点
青山墓地
大久保

 最近大開発されて、昔(といっても、この前の戦争の後)の名残ナゾすっかりなくなってしまった品川駅東口。けれど、そこから南へ2・3キロ下ると、北品川から鮫洲辺りまで、まだ旧東海道がそのまま商店街として残っていて、橋の袂には、釣宿・船宿が点在しています。
 この辺りは、震災で焼け出されて引っ越してきたらしいお寺が沢山あって、宗旨もさまざま。南品川の、国道をちょっと入った所には、いまどき珍しい時宗のお寺もあります。

品川やぽんぽん明くる蝉の穴

 国道の一本海よりの道路を、海岸通りというのですが、ここには、食肉市場、つまり堵殺場があります。荷台から鼻を覗かせたり舌なめずりしたりしながら、牛たちが、トラックに載せられて、時折門をくぐっていくのに出会ったりします。

 東京の中心に、ご先祖様の国への大きな入り口があって、青山墓地といいます。
 生前、各分野で活躍された方々とは、ここに隣接する青山斎場で最後のお別れをする仕組みになっています。その手前には、フツーの人たちのために、公営の「やすらぎの家」(だったかナー)もちゃんと用意されていて、心配するには及びません。
 墓地の中央に、信号付きの立派な交差点があるのですが、このあたりは、花見の季節になると、夜店と人出で、たいそう賑わいます。ただ、賑わうのはその時ぐらいで、お盆といっても、夜はいつも通り、いたって静かです。
 ここは、木陰が多いので、夏は、昼寝するためのタクシーで、場所争いになる所です。アイドリングは決してストップしません。薮蚊が多いので、生きるためには致し方ないのだそうです。

鈴生りや朝はめでたき蝉の殻

 新宿の隣に、大久保と新大久保の駅があります。この界隈は、日本一の繁華街「歌舞伎町」と背中合わせになっていて、そのせいか、アジア系外国人が沢山暮らしています。その昔、小泉八雲が晩年をすごしたので、裏通りに入ると、ギリシャ風の記念公園があったりするのですが、それ以外は、アジア地域。質屋さんの看板も、教会の礼拝案内も(教会が実に多い所です)、ハングルやアラビア語で書かれていて、中には「日本語の通訳付き」を売りにしている教会もあるくらいです。

大久保・例大祭
大久保・自動販売機
インターネットカフェ・ハングル
日本キリスト教・婦人矯風会
ラブホテルの前の百日紅
大久保・ラブホテル
打水

唖蝉のとんで木につく残暑かな

 大久保駅のそばには、昔ながらのラブホテルがあって、その前は毎朝きちんと水がまいてあります。大体、朝6時前ごろから町の人たちが起き出して、道路の掃除や水撒きをしています。その時分、町はすこぶる静かなたたずまい。夜明け後の一時、どの通りも、文字通り「鳴りをひそめ」ています。
 ホテルに沿って少し行くと、左手に、マリア様が合掌している様なお地蔵さんがあって、その路地の突き当りが「俳句文学館」!

風鐸のきこえる秋の灯かな

 東京も、中心を少し(この「少し」が肝腎)外れると、なにやら人肌恋しくなるような所が結構あります。そして、いろんな業界の方々が、この「少し」のおかげで一息ついているようなのです。

鳴くもののないて灯は夜の秋

品川 教会の看板 百人町 俳句文学館 百人町・ごみ収集日   百人町・ラブホテル大幅値下げ百人町・マリア地蔵

写真:(c)安達 潔
文:(c)安達 潔


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