aoilogo2004年1月藍生主宰句
年用意
黒田杏子

 これはかのむなしき冬の霧峠
 かりがねや窖窯に火の音あふれ
 蓮の實のとびたる細見綾子句碑
 火を焚いてくださる丹波木綿かな
 雨だれの生家に炉端十二月
 囲炉裏ありかまどあり冬苺かな
 思羽のいよいよ丹波しぐれかな
 篠山も奥のろあんの走りそば
 焼栗のほのあたたかき別れかな
 冬桜白し高野の翳るまゝ
 木枯一号湯の沸ける普賢院
 火の香して無量光院雪蛍
 祥月命日九度山の柿巨きかり
 星空の高野をゆけば冬桜
 年用意とて紙を剪る甲申


戻る