aoilogo  2003年6月 藍生 主宰句
花びらの過客
黒田杏子



 お四国の道灯りたる田螺和
 土佐仁淀八十八夜新茶なる
 子遍路のなにかかなしむ鈴の音
 お四国に句座を重ねて年とって
 亀鳴くと宿毛につどふおのづから
 水指に散る裏山の朝ざくら
 花浴びて座す花の枝に藤右衛門
 九幹の古りておのおの山櫻
 花びらの過客あしたをかなしめば
 たそがるる花の主の素手素足
 はなびらのたたみを走る薄暮かな
 かはほりを月に放てり山櫻
 夜を彫る佛師の軒の山櫻
 山櫻虚空蔵菩薩彫りすすみ
 たとふれば天を覆へる山櫻


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