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第五回 五月・静岡の藍生だより

写真と文:岩上 明美さん
Iwakami Akemi: 静岡県天城湯ケ島町在住。山葵農家に嫁ぎ、吉奈川のほとりに暮す。日々真向かいの山々に季節の変化を見つけては楽しむことができるのは、俳句と出会えたおかげ。第一次反抗期を迎えた3歳の娘を抱えて、俳句を心の杖に奮闘中。

静岡県東部、伊豆半島天城の晩春から初夏にかけての様子をお伝えします。
ほとんどが自宅近辺で撮影したものです。
画面上ではお伝えできませんが、新緑の天城の森には、雉、小瑠璃、三光鳥などの野鳥の声が満ちています。

山葵沢
 俳句では「春」の季語として分類されています。普通食されるのは山葵の根の部分です。収穫期というのはとくになく、一年中いつでも採る事ができます。収穫までには1〜2年を要します。山葵にとっての命はなんといってもきれいな水です。沢が濁らぬよう、水の流れの管理をするのも山葵農家の仕事のひとつです。

山葵の花
 俳句では「夏」の季語として分類されていますが、伊豆地方では2月頃から咲き始める、早春を告げる花です。2月下旬から4月下旬頃まで次々と白い小さな花を咲かせます。咲き始めの蕾のころの花は、茎とともに酢漬けにして食します。山葵の一番辛い部分は「花」だといわれています。

 手に水の匂ひのうつる花山葵  明美

石楠花
 この写真は自宅の庭のものですが、畑一面に石楠花を植え、花を摘み、香水の原料として出荷する農家の方もいらっしゃいます。天城湯ケ島町の「昭和の森」では500種約13000本の石楠花を観ることができます

 
 石楠花を摘む雲ちぎる心地して  明美

浄蓮の滝
 高さ25メートル、幅7メートル天城山随一の滝です。滝の主は女郎蜘蛛だという伝説も残っています。

虹鱒
 浄蓮の滝の下流の川で釣りをしていた方に写真を撮らせていただきました。浄蓮の滝のほとりの土産物店で釣りざおを貸してくれます。

茶摘
 5月上旬、毎日茶の葉の伸び具合をチェックし、茶葉が一番伸びかつ柔らかい時期に摘みます。そのタイミングを一日でものばすと茶葉が固くなってしまいます。この辺りの民家ではたいてい茶畑を持っており、一年間自分の家で飲む分の緑茶は自分の家で栽培します。製茶は専門の製茶工場に依頼します。この時期、地元のホームセンターでは「新茶」と書かれた茶筒が売られるようになります。その缶へ自分の家でとれた新茶を詰めて、親しい方へ贈答するのも楽しみのひとつ。茶所静岡ならではの商品ではないでしょうか。


*写真はクリックすると拡大表示されます。
写真、文、俳句:(c)岩上明美



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