第十二回 十二月 加賀の藍生だより |
十二月に入り神社より御札と人形と車形が配られた。大祓の行事は年二回、六月と十二月に行われる。今年も家族が無事に暮らせたことに感謝。神社に御札を納めがてら散歩に出る。二三日見なかっただけで町の風景はがらりと変わっていた。家々の軒先には大根や柿などが干され、雪吊りも始まっている。この所毎日時雨模様が続き、一日の内にお天気マークのすべてが揃う。昨日まで美しかった紅葉も黄葉もすべて散り、いよいよ本格的な冬の始まりを感じる。
どちらを向いても季語がつまづくほどあるのに、なかなか句が成り立たない。歩きながらでも作句をこころがけてはいるけれど、その心掛けもしばらくすると頭の中は夕食の献立を考えている。そんな自分が少し悲しい。昼からの雨が霙に変わった。山祭りの日は必ず天気が荒れると言う。今夜あたり鰤起しが来そうな気配がする。(畳谷智代)
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芭蕉の句碑 * |
時雨の間も那谷寺の落ち葉を掻く作業をシジフォスのように黙々と続けている人たちがいる。 本堂の前の古木の雪吊りがちょうど進められているところだった。銘木巨木でなくともそれぞれに雪の備えは要る。参道の脇の刈り込みにも丁寧に小さな雪吊りがほどこされていた。
師走の閉門間近い時間なのに、訪れる人は途絶えない。仏教以前の巨岩信仰を偲ばせる石山の不変に比べれば今日そこを踏む私たちは影の影なる存在でしかないかもしれない。しかし岩もまたうつろう。岩穴に映るイデアの影もそれを認識する私たちの今ここがなければなんの意味があろう。(橋本薫)
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山代温泉の源泉公園にある足湯にてリラックス * |
黒田杏子先生と共に、畳谷智代さん、新田冨美さん、橋本薫さん、峯村弘子さん。北國新聞俳壇百周年記念講演に黒田先生が冬青空を連れてきてくださいました。石川県の会員全員が揃ったのも初めてです。(12月13日)
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