aoilogo2002年12月 藍生 主宰句
崩れ簗
黒田杏子


母のほとりに墨磨って月を待つ
榧の實をしぼって揚げよお命日
繚乱の木の香草の香むかごめし
良夜なりおとうとが剪る母の爪
月見豆とて長々と刈りて呉れ
菱喰も大菱喰も月の沼
仲秋の熱きあめ湯も弥谷寺
仲秋の蝉声人を惜しみけり
一万一千護摩木の炎すさまじや
編上の靴肩鞄火恋し
一心にすすきを分けてゆかれしか
雨後の白萩ちさき蝶つぎつぎと
逢うて別るる霜降ののちの午後
女書生われ流れ者崩れ簗
秋ひとり君が絶句を正しけり