八名信夫の うまいもん紀行


あったかいこころ
〜暖心(だんしん)〜 大阪 北新地

大阪と言うと、最近は暗い話題が聞こえて来る。
ヤレ金がない。無駄使いで借金だらけだ、とか。
でも、俺は、大阪が好きだな。
明るい! 元気だ。勢いがある。
大阪の新歌舞伎座に出ていた時なんか、大阪のおばちゃんたちが、毎朝黒山の行列で。
俺が通ると「八名さん、頑張って!」と、大騒ぎで応援してくれた。
毎日舞台は超満員。劇場中が笑いでいっぱいで。
あのおばちゃんパワーは、嬉しかった。あれは大阪にしかない。

大阪の食物屋に入ると、安いしうまい。しかも、店の人がお客さんに気を配っている。
ちゃんと席があるか? おいしく食べているか?
全国どこへ行っても、大阪くらいお客さんに気を使ってくれる所はない。
料金に値するだけのサービス、料理のうまさ。
これが足りないと、大阪のお客さんは黙っていないからだ。
そういうところが、俺は好きなんだ。

ちょっと前の北の新地も、面白かった。
お客も思いっきり楽しんでいたし、店も一生懸命サービスしていた。
毎晩毎晩お祭りみたいに賑やかだった。
クラブでも、女の子が楽しかった。会話が面白かった。
その日の二ュース、タイムリーな話題。
お客さんが興味を持ちそうな話をパッとつかんで、笑わせる笑わせる。
お笑いの連中でも叶わないような、面白い子が人気の店にはいた。
流石大阪だ、といつも感心していた。
客も洒落た遊び人が多かった。
バブルで景気の良い社長さんたちが沢山いたけれど、遊び方が粋だった。
みんなを楽しませて、金もきれいに払って、さっと次へ行く。
「政治も経済も、大阪からですよ。歴史も文化も大阪から」
そう言って、胸を張る大阪人が、羨ましかったし、見ていて、感じが良かった。

最近は、北の新地は気の合う仲間と、うまい物を食べに行く、位だな。
まあ、昔のように飲み歩く年令でもないし、
料理のうまい、良い店をみつけたので、もっぱらそこへ寄ることにしている。

和食の店『暖心(だんしん)』。
なにしろ、料理がうまい。
ああ、今頃行ったら、體(はも)かな?
それを、板さんはどんな風に料理して出してくれるんだろう?
そう思いながら行くと、やっぱりうまい。
ここの板前さんは、いつも勉強している。
出された皿一枚で、板さんの気持ちが伝わって来る。
素材がどうだ、何をどうした、など一切説明しない。
いつも黙々と仕事をしている。
北の新地で遊ぶ人の、目と舌を楽しませて、
『暖心』は、いつもお客で賑わっている。

それから、この店の内装も、気にいっている。
入った途端に、ああ感じ良いな、くつろげそうだなと思わせてくれる。
和食の店なのに、洋風の内装。それが、大人のお客には
ほっと出来る、ちょっと贅沢な雰囲気を楽しませてくれている。
仕事相手でも、恋人、友達、家族でも誘える店だ。

 

『暖心』に来て、季節を映した料理を味わってから、
「ああ、そうか、もうこんな季節なんだ」と、思うことも多い。
毎日駆け回ってばかりいると、自然の移りゆきにも気がつかない。
そういう“心”をも、暖かくしてくれる店なんだ。

  

暖心
〒530-0003 大阪府大阪市北区堂島1-4-26 玉家ビル1F
06-6347-0031


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