こんにちは八名信夫です


という本が、夏の終わり、9月初めに出ることになった。
原稿と写真も全部出版社に渡して、
今、最後のチェックに入っているところ。

子供の頃のこと、野球のこと、映画の裏話、
色々書いたが、あんなんで大丈夫かな、
なんて、色々考えてしまうもんダナ。
写真も沢山入ってるから。
今まで俺を撮ってくれたカメラマン、雑誌、
局の人たちが親切でネ、
私のでよかったら、どうぞ使って下さいって
言って下さった。
俺の39年の役者人生、
こういう優しい気持ちの人達に支えられてきたんダ
と思うと、うれしくなるナ。
データハウスから新書サイズ位の大きさで出るから、
読んでみて下さい。
『こんにちは八名信夫です』っていうタイトルも、
俺らしくなくって、いいだろ?
どこかへ講演に行く電車の中で浮かんだんだ。

最近、文章うまいナアと思う人に出会ったよ。
高峰秀子さんの『にんげんのおへそ』
映画の大先輩。
味のある文章を書かれるんだナア。
映画100年記念日本映画批評家協会の授賞式で
一緒の舞台に立たせてもらったけど
(俺は特別賞)、
“日本映画をつくってきた女優さん”という
風格と魅力があって素敵だったよ。
各局のレポーターが来ていたので、
インタビューに行くのだと思っていたら、
そいつらが、スキャンダルを巻き起こしている
女優のところへむらがって、
1人も高峰さんの所へ行かないんだ。
腹が立ったよ。
男とくっついた、結婚するのかしないのか、
そんなスキャンダルの女優の所へ、みんなで行くんだゾ。
映画100年の記念の授賞式というのに。
で、そのうちの1チームが、俺の所へ来て、
「ちょっとお話を」と、10分も20分も待たせてナ、
「あの〜、あの女優さんと映画で一緒でしたよネ、
 結婚するって言ってませんでしたか」
だって。
マスコミ、ワイドショー、おかしくなってるナ。
芸能人とは何か。
芸ができて、初めて、芸・能力のある人じゃないかと
思うけどナア。
本業の芸を極めている映画やテレビや舞台はどうでもいいんだ。
くっついた、はなれた、子供ができた、
そういうスキャンダルさえあれば、取材に行く。
そういうのが芸能人・俳優だと、勘違いしてないか。

朝日新聞の、横澤彪さんの文章も上手だナ。
わかりやすいし、
読みやすく書いていて、結構厳しいこと言ってるしナ。

横澤さんのテレビの頃はよかった。
昭和58年〜60年頃。
大人のハートがあったナ。
『ひょうきん族』の“ベストテン”で、
俺達にチェッカーズとなって、
『神様ヘルプ』を唄ってくれって言うんだ。
大体『網走番外地』とか『唐獅子牡丹』の俺達にダゾ。
こっそり稽古をしてスタジオに入るんだが、
「あなたは誰ですか」って紳介君にきかれると、答えられないから、
みんな、てのひらにフミヤとかタカモクとか書いてナ。
「ヘルプヘルプ」ってくりかえすところも、
唄ってるうちに、何回唄ったかわからなくなる。
榎本兵衛さんなんか、指を折って数えながら唄うんだ。
俺達は真剣だったヨ。
しかし、その一生懸命やるけど、全然似合ってないところが
よかったのかな。
横澤さんは、毎回スタジオに降りてきて、
あったかい笑顔でみてくれてたしナ。
今、あれだけ視聴率を稼ぐ番組のプロデューサーなら、
あんなに腰を低く、礼儀正しくしていられるかな。
大阪の阪神百貨店に、コマーシャルのイベントで行った時なんか、
1階が超満員。階段から2階から玄関から、
身動きとれない位、お客様が集まって下さって。
『ひょうきん族』ってすごいナと思った。
マー、今でいうSMAPの気分を味わった訳だ。
ブロマイドなんか、男性アイドル部門8位になったりしてナ。
そんなことやってたら、悪役のイメージが崩れるって
反対した人もいるが、
俺は、悪役が本職なんだから、
こんなことで崩れるような悪役なら、仕様がないだろうと
笑っていた。

今は、大人の笑いをつくってくれる人が少なくなって、
テレビもつまらなくなったナ。

小林信彦さんの書いた、横山やすしさんの本も読んでいる。
小林さんの『唐獅子株式会社』、やってみたいナと
真剣に考えたことがあったが、
それを、やすしさんがやっていたとは。
今でも、あの発想は面白いと思う。
俺も『父さんの石鹸箱』という本が気に入っていて、
局や新聞社、著者(山口組の親分さんの娘さん)の
代理人に会って、ドラマにしたいと交渉していたが、
茶の間にやくざの話を流すことはできないと言われて、
駄目になった。
山口組の親分の、父親としての姿を描いた本で、
面白かったんだ。
高倉健さん主役でっていううわさもあったけど、
どうなったのかな。

やすしさんは、
「悪役商会はいいよ」と、西川さんと一緒に、
大阪で応援して下さった人で、
俺は、ずっと感謝している。
一度だけ、厳しいことを言われた。
週刊誌の対談で、会った途端に、
「八名さん、あんな人を一緒にテレビに出してはいけません。
あんな芸では、悪役商会のメンバーとして、
八名さんと一緒に、テレビに出られる資格はありません」
と、はっきり言われた。
俺はどうしても、仲間とか弟子とかいう気持ちで
情をかけてしまうので。
「みられてるんだ」と思って、やすしさんの“芸ある人”の
厳しさを感じた。


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