第13回まちづくりソフトウェア最前線研究会「電子地域通貨LOVESが奏でる高度情報化地域振興」講師:小林 隆 神奈川県大和市情報政策課副主幹
   
第13回まちづくりソフトウェア最前線研究会

「電子地域通貨LOVESが奏でる高度情報化地域振興」
神奈川県大和市役所情報政策課副主幹 小林 隆 氏
電子自治体像の変化
ICカードは市民参加の道具、行政の効率化だけが目的ではない。今の多くの市役所のホームページは、一方的に発信するのみ、市民の意見を言うパイプはあっても細い。

大和市のインターネット普及率は51%(世帯)。
1996年、市民の意見を大々的に収集するホームページの構築にかかる。

従来のマスタープランの市民参加率は0.2%であったが、このホームページでは2〜5%の参加率を達成していた。

都市計画課のホームページ作成から、市全体のホームページに拡大していったが、基地問題の苦情などが殺到しはじめ、僅か21人のスタッフで21万人の市民に対応する困難さに直面する。潜在的苦情を喚起してしまうことから、研究会を閉じることも検討される。内部の議論を完全に公開しながら検討を進めることにより、市民の応援を得ることに成功し、状況の打開に成功する。
モデルにしていたシアトルで、担当者別のネット対応が行われており、それを目標に活動していく。
1998年、2.5億円の予算を国から得て、500台の端末を獲得し、その半分を市役所で使用する。消防も含め、全職員がホームページを作成、LANを構築するネットワークリーダーも育てる。それらの人材が、各課の情報化を分散的に対応していく形になる。現在、市役所全体で10000ページを越えるようになる。

「どこでもコミュニティ」年間3000程度の意見が寄せられ、それに対する応答がたいていの場合、市役所の職員が実名で返事をする。コメントに組織決済は不要となっている。職員の個人の意見を組織の意見として誤解する市民は幸いにいない。

発言登録する市民が1800人程度、対応する職員が1335人、発言はMLで全メンバーに流れる。今のところ誹謗中傷などのトラブルは起きていない。主な原因は職員の対応が極めて早いことによる。固定セクションが返答する仕組みを作るとかえって応答が行き詰まる。
コミュニケーションはオフライン・ミーティングを伴ってはじめて深まる。
電子会議室はあってもコミュニケーションが行われないのが、通例の自治体の実情であり、全国で700あまりある電子会議室の多くは不活発である。

市民のIT利用は、独自の動きでも進んでいき、学校には光ファイバーでLAN化したところもある。コミュニティセンターの自治会IT研究会も活発である。
端末数は1000台が市役所、2200台が小学校にある。
ネットは行政の内部だけでやらず、外部とのユーザーとの連絡が起きる形で行われることが発展性があるといえる。

電子通貨LOVESの導入
ICカード約9万枚配り、1100台のカードリーダーが導入されている。接触型のリーダーであれば3000円程度でできる。職員にカードを渡して、サービスを行っている。カード利用数81119枚、利用率40%の状態。60歳〜80歳代の申請が非常に多い。電子会議室の利用者に若年層が多いが、ICカードの利用者は高齢者層が多い。高齢者層に電子空間に参加させる契機となっている。サービスによっては使用者数が少なくても、使う人は頻度高く使う傾向があるものがあり、ICカードはそのニーズに応える必要がある。
LOVESは従来あった地域通貨を統合するインター地域通貨を目指している。2%〜5%の人々が利用希望をもっている。
LOVES運営委員会が管理に当たる予定。
市民ベンチャービジネスでの取引での利用の発案もある。

行政サービスメニュー
住民表発行、印鑑証明、国保証補助カード、避難者情報(避難場所、避難内容)、
LOVES系サービス
地域通貨となっている

電子自治体政策の望まれる方向
集中システムから分散システムへ(個別ユーザーが独自に発展していく姿が電子化には必要)
e-GovernmentからN-Community
PCからICへ

質疑:
地元市役所に市営バスの運営について意見を言ったところ、自動応答メールで受け付けの返事があったまま、対応がなかった。
ポリティック的な意味でコミュニケ−ショングループ間のヒエラルキーはあったほうがいいか?
メールに答えてばかりいて仕事になるか?
年3000件なら市役所全体として十分対応できる。
小林氏個人サイト
http://web.sfc.keio.ac.jp/~yamatotk/indexj.html