第7回インターラクティブ都市最前線サロン 「今、なぜ、まちづくりはNPOか」東京大学工学部都市工学科助教授 小泉 秀樹氏
   
第7回インタラクティブ都市最前線研究会

平成14年6月19日

講師 東京大学都市工学科 小泉秀樹氏

「今、なぜまちづくりはNPOか」
公共性の次元
まちづくりに名分を与える、という意味での公共性。
共約可能な価値に限定し、国家が個人に強制。
ブルジョア的市民的公共性への批判
集団構成グループのそれぞれに公共性がある。
基本的潜在能力の保障としての公共性(セン)
行き方の幅があってこそ公共性は意味を持つ。
共約不能な領域を許してこその公共性(アーレント)

合意の変化、全員合意から多数決へ
公共性を担保する方法は困難、総合設計のチェックリストは公共性をまるで保障しない。
共約可能な基準はないから、討議、合議などの手続き論に帰着してしまう。

無数の市民グループの集合体としての公共性、どうやって「新」市民的公共性を生み出すかが重要。

コミュニティベースプランニング
組織を持ったコミュニティ、主体的条件が対話の前提に必要。
強制的連帯のシステム(国家の役割、権限をコミュニティ組織に委譲することに他ならない。
その一方、対極として契約的連携的システムがある。

日本の都市計画の特徴
行政の無謬性が意識にある。自治体が都市計画を決定する仕組み。住民からの発意、強制的連帯のシステムの民主化の工夫が必要。契約的連携・連帯・調整のシステムの構築が必要。


今後コミュニティベースドプランニングに必要な姿、技法
組織活動の相互支援、情報提供・共有、決定権限の委譲、

3分の2の合意要件
小泉説としては3分の2の必要性はケースバイケースではないか。

合意を目指した討議の場は幅の広い人選(フォーラム)、政治決定は限られた人選(アリーナ)、という仕切りも一案である。

協議に必要な情報提供、公開、共有技法、事後的に作る評価軸→総合アセス、ワークショップ、アウトリーチ、モニタリング、予測手法など

小さな発意を重視したとき、総合性、長期性、広域性が担保できないという心配に対して。
→多様な主体による発議と討議を通じて確保されるべき、それこそが真の総合性か、長期性についても柔軟な適応力こそが長期性に必要なので、その達成のためには市民発意型の都市計画のほうが可能性があるのではないか。

市民発意型の組織が広域性を担保することもないわけではない。ただし、ダムのような大規模土木インフラを市民組織がやることは考えにくい。

都市計画に関わる職能と専門性
専門家と市民の二分法は非現実的。役に立つ専門家は会計士と弁護士で十分か?
必要な専門とは多種多様な専門であり、それぞれの細かい知識のほうが必要。
環境、交通、福祉、土地利用、景観デザインなど、個別知識が必要。

それらの人々が活躍できるような経済的土台や仕組みが必要か。

質疑:
情報共有のためには役所側の積極的な情報提供が必要。求められるまで提供しないようでは不足である。
計画プロセスの開示も必要か。

NPO同士の対立調整が行われる仕組みは、相互協議が原則で、そこで解決できないときに政治決定の場に移る、というプロセスになる。政治決着の場に自治体が顔を出す形をイメージ。

東京駅周辺まちづくりのNPO、やや衰退傾向、丸の内との競合から危機感を持つ。

NPOに事業性を持たせるとするとそうなるか。アメリカの場合、理事無給、事務局有給、
NPO組織といったら普通事務局を指している。

まちづくり系NPOは福祉等と比べて規模が小さい。どうやって事業収支を持たせるか問題が多い。仕事を取ってくる力、信頼の力、ボランタリな協力を取り付ける力で決まってくる。マーケットに乗り難いビジネスをマーケットに乗せるまでの部分がビジネスになるか。

地域住民の構成に偏りがあるとき、ニュートラルな意思決定はどう確保されるか?インフォーマルな討議の場を作っておけばある程度は少数意見も拾われると思える。