“いとしのローラ” 
(60’sモデルカー・レーシング編)
●緑商会製 “ローラ70GT” 1966年4月頃発売 価格 900円(モーター別)
 当時の国産キットはなぜか車名が統一されておらず、本来“ローラT70”が正式名であるわけですが、緑商会キットでは、“ローラ70GT”と書かれておりました。なにぶん1966年当時の世界のモータースポーツ事情を日本がまだ十分に理解していなかったこともありこのようなミスが生まれたのではと思われます。
しかし、かの“カー・グラフィック”誌1965年8月号においてデビューしたてのローラT70のことを“ロ―ラ70”と紹介していることからして模型会社が間違ったとしても無理もないかな・・・などと思ってしまうわけであります。
 当時小学校6年生でありました私は、“モデルカー・レーシング”の魅力ある世界に圧倒されておりました。とくに、“LolaT70”や“ロータス30/40”、そして、“チャパラル”などは実車よりもモデルカーで先に知り、それらはモデルカー・キッズにとっての憧れのくるまたちでありました。
前置きはこの位して、当時の“モデルカー・レーシング”唯一の専門誌であった“モデル・スピードライフ”誌(科学教材社発行)1966年6月号に緑商会製“ローラ70GT”が紹介されておりましたので、引用させていただき紹介したいと思います。
 
 NEW MODEL RACING CAR
=組立紹介とハイスピード工作=
Lola 70GT ローラ70GT
“ジム・ホールのチャパラルと並んで、エリック・ブロードレーの設計になり、名手ジョン・サーティーズが乗って活躍するローラT70は、モデルカーでも人気を二分しています。
1)シャーシーにオイルレスメタルを外側から入れ、メタル止めのワッシャーをスパナ―を使って固定します。
2)後部モーターマウントブラケットを、3mmのビスで固定します。
3)モーターをタッピングビスで後部マウントブラケットに固定します。
4)フレーム金具をシャーシーに取り付けます。

ー規格ー

縮尺 1/24スケール
全長 165mm
全幅 75mm
全高 39mm
ホイールベース 98mm
ガイド スイングアーム式
シャーシー パイプフレーム
モーター FT36、FT36D
価格 モーター別900円
5)前部モーターマウントブラケットを取りつけます。
6)フロントフレームをメインフレームのパイプに差し込みます。
7)ボディーの取りつけ穴に、シャーシーの長さを合わせます。
8)2mmのビスナットで固定します。
9)シャフトにギヤを通し、5mmと1mmのスペーサーを両側に1枚ずつ取り付け、3mmのナットで幅の広い後ホイルを固定します。
10)シャフトはガタがなく、しかも軽く回転するようにします。
11)ピニオンギヤに軽く噛み合うように注意しながら、クラウンギヤのビスを締め付けます。

 緑商会 ローラ70GTを組み立てて見て
 この緑商会製のキットは、オール関東選手権をはじめとする幾多のレースで好成績を示した低重心のパイプフレームを使用、また定評のある入沢商店製(I.S.S)の30mmスポンジタイヤも入っているという高性能なキットです。
 特に他メーカーのタイヤをわざわざ余計に入れた点は、マニアの声を良く聞いた研究熱心なメーカーとして敬意を表します。
また、スイングアームのスプリングを廃して、ウエイト付にしてコーナーリングの際の浮き上がりを押さえるのに効果的で、マニアの要望を取り入れた点といえます。

 ボディー
 A.B.S樹脂製のボディーは、塗装に便利なクリーム色、軽量化に非常な苦心が払われ、非常に薄くエア―インテークなどは穴が開けられ、実感を出していますが、細部の表現や全体のプロポーションが略されている感じです。
 シャーシー
 このパイプと真鍮板を巧みに組み合わせたこのシャーシーは、FT−36用としては最も軽量なクラスに属し、しかも低重心でハイマニアにも多く使われ、オール関東はじめ数多くのレースで良い成績を上げています。
 ガイドシューはスイングアーム式で、スプリングを廃し、ガイドを取りつけるなど改良が加えられています。
 ホイル、シャフト
 アルミ製のホイルは、ステンレス製のシャフトと共に正確に仕上げられ、センターも良く出ています。
 ギヤ
 不評だったプレス製のダブルギヤを廃し、真鍮製32枚歯のクラウンギヤは、ピニオンギヤとの噛み合いも良好です。
 タイヤ
 従来使われてきた同社のタイヤのほかに、マニアが好んで使用する入沢商店製の30mmスポンジタイヤが入っています。このタイヤは慣らし運転をして、表面の溝が消えるころから高性能を発揮します。
 
12)前車軸のパイプにオイルを注入しておきます。
13)シャフトに4mmのスペーサーを両側に入れ、3mmナットでホイルを固定します。
14)ガイドはガイドウエイトで固定しますが、ガタがなく軽く動くようにします。
15)シャーシー完成
16)ボディーはナイフで、各部のバリを取っておき、接着剤をつけ過ぎないように注意し組み立てます。
17)メッキされたスイングアームストッパーをシャーシーと共にビスで取り付けます。
 =緑商会製 ローラ70GT ハイスピード工作=
 前輪のタイヤは細く硬く、出来れば直径の小さなものに取替え、入沢製のスポンジタイヤは、コンタクトなどの接着剤で接着します。
 ストレートの長いバンク付のコーナーがあるスピードコース向きには、スイングアームを5mmほど伸ばすと良い結果が得られます。また、巻き直したモーターを使用する場合は、ギヤを36枚歯以上にした方が良いでしょう。
上の写真の下側左上(1) キットに入っているスポンジタイヤに交換し、前輪も細く硬い前輪用のタイヤに取り替えます。
同上の右上(2) スポンジタイヤは、コンタクトなどの接着剤で接着しておくと高回転時に遠心力で膨れるのを防ぐことができます。
同上の左下(3)巻き直したモーターを使用した場合は、36枚歯以上のギヤに交換します。
同上の右下(4)入沢製(I.S.S)スポンジタイヤは、左のように減った状態で高性能を発揮します。
(1966年6月号モデル・スピードライフ誌より、剣持雄二氏のコメントを引用させていただきました。)”

 私が、記憶し得る範囲では、今回ご紹介した緑商会の“ローラ70GT”の走っている姿を見てはおりませんし、キットも実際には見ておりません。
しかし、解説にも書いてあったように、以前緑商会は、“ホンダF―1(実車名は、RA−272前期型だと思われます)”を出しておりまして、このキットについておりましたパイプフレームが高性能との評判となり、ばら売りをしておりませんでしたので、レースに出るために緑商会のキットを買うという現象が起こっていたようでありました。
この現象は、一時期ニチモのタイヤ欲しさにキットを買ったいうエピソードに似ておりますが・・・。
 私としてのローラT70は、やはり田宮模型製以外には考えられませんので、また次の機会にご紹介したいと思います。



御意見・御感想をお待ちしています。
 
GO TO TOP
GO TO HOME
E-MAIL