今や伝説のドライバーとなった「風戸 裕」が、1972年に初めてヨーロッパF2に挑戦した時に使用したマシン「マーチ722(March 722 No.008)」が現在オーストラリアで余生を送っていることは前回お伝えしたとおりだ。そして、今回、現オーナーである Mr.Andrew Giffordよりレポートが届いたので現在のマーチ722のインプレッションをご紹介しようと思う。
この場を借りて貴重な画像とレポートを書いて頂いたアンドリュー氏に御礼を申し上げたい。
 

<ドライビングについて> 

 私が初めてレーシングカーをドライブしたのは2006年だった。このマシンは、1968年製のオーストラリア製のスペースフレームの
スペシャルマシンだった。
風戸 裕のマーチ722(#008)と巡り会うまでの5年間、私はこのマシンの最良のセッティングになるよう努力し続けた。

<マーチ722を購入した理由> 

 2010年末のことだった。アメリカでエンジン&ギアボックスなしの“マーチ722 シャーシNo.43”が売りに出ていることを広告で知った。そして、その事を私は弟に知らせ、弟は、このマーチを購入することとなる。彼は、エンジンとギアボックスも揃えて走行可能なマーチとした。
 弟のマシンは、フォーミュラB規格に合わせ、エンジンは、HART 416B LotusTwincam、ギアボックスはHewlandFT200だった。
私は、幸運にもこのマシンのシェイクダウンでドライブする事が出来た。
 このマシンは、私が乗っていた1968年のオーストラリア製スペシャルよりも強力なエンジンでとても速いことがわかり、この経験により、より速いマシンを求めて私は自分のマシンを新たに探すことにした。

 私は多くの車種を探し、やっと気に入ったマーチ722を見つけることが出来た。同じタイプのマシンを兄弟で所有しレースを戦うことはチームと私のファミリーにとっても良いことだと考えたからだ。
購入可能なマーチ722を探していると、アメリカで盛んだったフォーミュラBやフォーミュラ・アトランティックではない純粋なヨーロッパのフォーミュラ2が実に止まった。それが元 風戸 裕選手が乗っていた“マーチ722 シャーシNo.008”だったのだ。すぐに私は購入を決意し、アメリカで契約することとなる。
そして、このマシンがオーストラリアにやって来た。


The 1975cc Cosworth BDG packs quite a punch and can easily spin the rear tyres exiting a corner at 100mph.
Unlike some owners I do 95% of all the work on my cars. 
Be it a gearbox, engine or any other item that needs a rebuild or setting-up, I do it. 

<マーチ722のインプレッション> 

 精密、正確、軽快、速い!これが私の直感だ。
このマーチ722は、デザイナーであるロビン・ハートのマーチ・エンジニアリング製作した最初のマシンではない。(1970年のF1マシン“マーチ701”やカンナムカーの“マーチ707”などがマーチ社の処女作。)

 722の構造は非常に良く作られていて、カスタマーが即乗車可能なほど完成されている。ドライビングは寛容で運転しやすいが速く走るのにはあらゆることに集中することが不可欠だ。自分専用の樹脂製のシートを作ることも必要。乗り降りは非常にタイトだが快適。
プロフェッショナルドライバーであれば、初期のウイングとスリックタイヤを持つこのレーシングカーを駆ることは容易だろう。しかし、アマチュアドライバーにとっては想像以上に速く走ることは難しい。
 排気量1975ccのコスワースBDGエンジンは、凄まじいパンチ力を持ち、100mph回転でもコーナーの出口では簡単にリアタイヤがスピンしてしまうほどだ。フルパワーまでこのマシンをコントロールするには、必死にドライビングに専念しなければならない。
フェールインジェクションを付けたこのエンジンは、マキシマムリミット 9,100rpmまで可能だ。しかし、常に6,500rpm以上でエンジンを回す必要がある。エンジン音は、古き良き時代のスイートミュージックであり、ピットウォールにいても115デシベルぐらいの音量が心地よい。

<メンテナンスとセットアップ> 

 このマシンのメンテナンスの約95%は私自身が行なっている。ギアボックス、エンジン、その他のセットアップにしても私が行ない、幾つかのアイテムについてはスペシャリストより送ってもらうこともある。
 幸運にも私は、設備と優秀なメンテナンスを持ち合わせたPerth and Cliff Jennings of Steve Jennings Race Engineから常にアドバイスを受けている。実際、レースカーとしての準備をアシストしてもらっている。

<これからのこと> 

 将来何を抱く事が出来るのか、私は幾つかの事を期待している。
このマーチ722シャーシNo.008は将来日本に売却されるのではと思っている。付け加えればそれはとても良いことではないか。崇拝されている日本のレジェンド 故「風戸 裕」がドライビングしたマシンだからだ。

Driving the March 722
Precise, exact, fun, fast !!
 


The car is very forgiving to drive but could it bite if you let it get the better of you.
The construction is very well thought out and is exactly as a customer car of the day should be.
Andrew many thanks !! 

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(C)Textreport by Andrew Gifford.

(C) Photographs by Alan Giltrap.