(C) Photograph by Masayuki Yamada. |
私はどうしても“チャパラル”と言ってしまう人間である。昔のレースビデオなどを見てアメリカ人の発音を聞いていると、確かにシャパラルと発音しているようなので、シャパラルが正しいのであろう。しかし、ティレルは“タイレル”で、ロジャー・ペンスキーは“ロジャー・ペンスケ”、そして、ジョー・シェフェールは“ジョー・シファート”だった時代が私は好きだ。
そんなことに拘っている私を尻目に、なんと昨年11月、あの“シャパラル・ツァー”に参加し、シャパラルの生みの親である“ジム・ホール”氏に会いに行ってしまった知人がいる。拘りの1/43スケールモデルカーを中心としたHP「RATTLESNAKE
43(まさにジム・ホール氏自身が所有するテストコースの名前)」を主宰し、「くるま村の少年たち」では何回となく協力して頂いているモデラー“山田雅之”氏である。
ところで、テキサス・ミッドランドに本拠地を置くシャパラル・カーズを訪れた日本人はというと、手持ちの資料では、1970年に三栄書房AUTO SPORT誌編集部取材で1度、1989年に今回のシャパラル・ツァー主催のMr.Craftスタッフが1度、1996年にも1度、そして、今回のツァーで4度目というのが公式の訪問数なのではないだろうか。違っていたら申し訳ない。 さて、今回は、この感激のシャパラルツァーの模様を、モデラー山田氏の協力を得て紹介したいと思う。
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“憧れのシャパラルツァ〜” by
Masayuki Yamada
全国数千万の「くるま村の少年たち」のファンの皆様、こんにちは。ローラ・アストンやフォードMarkIVを制作した山田でございます。
このツアーは、恵比寿に有るの車関係のグッズ、雑誌、模型等を扱う「ミスタークラフト」と言う専門店で企画されたものでした。このミスタークラフトと言うお店、皆さんも良くご存知の写真集「シャパラル」の出版元としても知られます。当時からのジム・ホール氏との繋がりを元に今回のツアーは企画されたものと思われます。聞いた話ではツアーの話もかなり前から有ったようですが、博物館が出来るまでとのジムホール氏の要請が有り、博物館が出来た今になり漸く実現したようです。内容は博物館の見学、シャパラル・カーズのオフィス訪問、ホール氏との夕食会といったものです。 成田〜テキサス:トラブル大発生!! 11月7日、テキサスの白い怪鳥とその生みの親にどうしても会いたい御一行は成田空港へと集結しました。メンバーはミスタークラフトの社長にしてツアーコンダクターのM氏、私を含めた参加者5名、通訳のA氏(途中ダラス・フォートワースで合流)の計7名。仕様航空会社はアメリカン・エアラインで、成田よりダラス・フォートワースを経て、ミッドランド・テキサスへと向かいました。関西在住の私は伊丹空港から成田へと向かいましたが、ここで大トラブルが発生。霧のため、成田が閉鎖されたので、やむなく、羽田に着陸する羽目になりました。午前11時の集合に対し、羽田に降りたのは午前9時。まあ大丈夫でしょうと思いつつ、羽田から成田へとバスで移動しようと思うと、給油して飛び立つからとのアナウンス。しかし、9時30になっても、10時になっても一向に跳ぶ気配は無し。そして「エンジントラブルの為、飛べません」とのアナウンスが流れました。さすがにこれはマズイと思い、主催者に携帯電話で連絡。結局、飛行機からは降ろしてくれたものの、今度は手荷物が出てこない・・・。なんて飛行機(航空会社)だと思いつつ、良く墜落しなかったと気を取り直し、待つ事数十分。荷物が出てきたのは午前11時過ぎ。そこから大慌てでバスに乗り、成田へ。成田の第二ターミナルへ着いたのはまさに手続きギリギリの12時30分。余りの大混乱に何故か冷静な私は、主催者から「あと数分遅れたらダメでしたよ」との言葉を聞いて、現実に戻りました。今思い返してもゾッとしますが、アンラッキーが最初に全て吐き出されたと思えば、まあ許せるものでした。と同時に、どうにかなったのはシャパラル病である事に間違いなかった証明とも思えます。 機内は極めて快適で「世界の中心で愛を叫ぶ」が早くも放映されていました。アメリカ入国は噂どおり厳しいもので、少しでも書類に不備が有ると「最後尾に並べ」なんて言われる感じの悪いものでしたが、日本人スタッフも常駐しており、どうにかはなりました。
テキサス:何もかもが大きい町 テキサスと言うと、私の模型仲間が留学していた所でもあるのですが、いかにもアメリカ的な所で、道幅も、通っている車も、お店も、通行人も、何もかもが大きい所でした。空港を一歩出ると、砂漠地帯が広がり、所々にガソリンスタンドやレストランが有ると言った程度です。
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The
petroleum museum:テキサスの偉人を称える博物館
シャパラルが飾られているのはペトロリアム・ミュージアムと言う博物館です。ここは自動車専門の博物館ではなく、オイル・ビジネスを中心にテキサス出身の成功者の歴史を展示してある博物館です。シャパラルはその一角を占めており、恐らくはその知名度から博物館一のドル箱になっているのではないでしょうか。
では、模型マニアである私なりの各車のインプレッションをお届けしたいと思います。 2A 意外とコンパクトな車でした。もっと大きい車を想像していました。当然、ルーバーは全て抜けています。タイアは驚くほど太いですが、当時からこうだったかどうかは不明です。エッジが鋭く、造形美と言う観点からはどの車よりも強烈な印象が有ります。コクピットを良く見ると、ドライバー脇に丸くFRPを埋めた跡が有りました。この車はかつて2Fか2Dであったものと思われます。近年優れたミニカーが出て来ていますが、この彫りの深さと言うか、ダイナミックさを再現出来たモデルは未だ出てないと思います。 TOP : Chaparral 2A. (C) Photograph by Masayuki Yamada. 2D これまた意外と小さい車です。それでもって、繊細な曲線を持っています。当時のディノやP3なんかよりもずっと繊細に思えます。当たり前と言えば当たり前ですが、モデラーズのプラモデルが一番近い気がします。この車はカウルを外した姿も拝めましたが、カウル単体で見ると、思いのほか面白い切り方をしているのが分かります。 TOP : Chaparral 2D. (C) Photograph by Masayuki Yamada. 2E 総合的に見てホール氏が一番好きだと言っていた車。アルミニウムのシャーシが美しいです。写真集の頃から更にもう一度レストアされた感じで、非常に美しい状態でした。ちなみに似ていると思えるのは意外やIMCのプラでした。その魅力を模型にするのは中々難しい一台です。 TOP : 1/43 scale Chaparral 2E. (C) Photographs, modeling by Masayuki Yamada. 2F 想像とのギャップが一番小さかった車です。この車も綺麗な状態でした。ちなみにヘッドライトは内側と外側でサイズが違いました。ヘッドライト単体での展示も有りました。リアのメッシュ越しにエンジン周りが良く見えました。 TOP : Chaparral 2F. (C) Photograph by Masayuki Yamada. 2H はっきり言ってこの車を見られただけでもここまで来た価値があると思える程素晴らしくカッコ良かった一台。ありとあらゆるモデルカーはこの車の魅力を伝えきれていません。ナロートレッドで、シンプルなラインながらその美しさは何か異次元の領域であります。思い返しても何がそんなに違うのだろうと思いますが、とにかく信じられない位カッコ良かったです。是非“生”で見ていただきたい一台です。 TOP : Chaparral 2H. (C) Photographs by Masayuki Yamada. 2J あんまり好きでなかった2J。ところが、生で見ると、これがかっこいいです。大きさはまあ想像通りでした。1/43ではミニチャンプス、ミドランティック、プロライン、エスドと言うメーカーから出ていますが、一番ダメだと思っていたエスドのモデルが一番似ています。 軍用機の博物館を見学した後、主催者の粋な計らいで、当初は予定に無かった1日目からシャパラルを見ることができました。 夜はホール氏の出身地を知ろうということで、テキサスビーフを食べにいきました。かなりの量があったのですが、これが想像していたような大味なものではなく、いいお店に入ったと言うのもあるのでしょうが、相当美味しいものでした。
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(C) Photograph by Masayuki Yamada. |
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(C) Photographs, textreport by Masayuki Yamada.